もうひとこと:2022年4月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ネクスタム 今回訪れたネクスタムでは、社員同士がファーストネームで呼び合っている。社長も例外ではなく、皆から「里司さん」と呼ばれているという。役職名ではなく「○○さん」と呼ぶ「さん付け」を行う会社は多いが、苗字ではなく下の名前で呼び合うのは、日本の会社ではかなり珍しいだろう。考えてみると、家族や特に親しい人以外からファーストネームで呼ばれたことはほとんどない。そういえば、学生のころ、バイト先のチーフに「まこっちゃん」と呼ばれていたが、人見知りな私にしては短期間で仲良くなることができた。「ファーストネームで呼び合う」というのは、本当にちょっとしたことだが、関係性の構築に大きな効果があるのではないだろうか。 もうひとこと:2021年10月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 PR TIMES 「インターンシップで学生に何をさせるか」というのは、各社の創意工夫が現れるところだろう。企業によってプログラムの内容は様々だ。PR TIMESの「内定直結ハッカソンインターン」も、そんなユニークなインターンシップの1つ。チームを組んで新サービスや新機能を開発する「ハッカソン」を行うなかで、学生たちは、主体的に楽しみながら、開発の面白さ、仲間とともにつくり上げる喜び、会社の雰囲気などを体感する。運営する会社側も「学生に開発の面白さを感じてほしい」という気持ちが大きく、採用活動として行う"内定直結"のイベントではあるが、自社の採用につなげること以上に、「チャレンジする学生を応援したい」という思いで実施している。 もうひとこと:2021年8月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ビジョナリーホールディングス ビジョナリーホールディングスは、今の所属部署の仕事を続けながら、別の部署の仕事にも挑戦できる「マルチファンクション」や「ジョブローテーション制度」という仕組みを設けている。これによってより多くのチャレンジが生まれることが期待できる一方で、制度がまだ明確でなく混とんとしていた時代に自分から手を挙げてチャレンジしてきた人と比べると、意識に違いがあるという悩みもある。制度が整い、「自由にエントリーできますよ」となったことで、気楽に応募できる分、心のハードルが下がり、覚悟が緩くなる場合があるのだ。主体的にチャレンジする文化を築き、チャレンジを促す制度を整えてきた多くの企業に共通する悩みかもしれない。 もうひとこと:2021年3月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 三井不動産 「『法律で定められている最低限のことだけはする』という考え方では、お互いにとって幸福な結果にならないのではないでしょうか」----三井不動産は、2019年度より、定年を60歳から65歳に引き上げた。現行の高年齢者雇用安定法において、定年自体を65歳にする義務はない。しかし、65歳まで正社員のまま働けることは、本人のやる気に大きく影響するはずだ。従業員一人ひとりに向き合い、活躍を後押しする同社の姿勢がよく表れているのが、人事部による「個別ミーティング」だ。毎年、人事部員総出で1600人を超える従業員全員と面談をするという。「そこまでするとは!」と驚くが、手間を惜しまないその姿勢が、従業員の信頼につながっているのだろう。 もうひとこと:2021年2月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ボールド 先日、別件でボールドにお邪魔した際に、「専任コーチ」の1人にお会いした。「専任コーチ」とは、業界経験、マネジメント経験のあるシニアと業務委託契約を結び、社員の成長をマン・ツー・マンでサポートしてもらう仕組み。「学生の間、勉強やスポーツを頑張れたのは、テストや試合など期限付きの目標があったから。では、だれがそこから逆算して1日の勉強量や練習量を決めていたかというと、自分で決められる人は少ない。それを考えてくれていたのは、教師や監督、コーチです」と澤田社長は言う。一人ひとりの悩み相談に乗りながら伴走する大変な仕事だが、やりがいも大きいようで、「私はおせっかいなんです」と話す笑顔が印象的だった。 もうひとこと:2021年1月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ハッピースマイル 改善提案制度がなくても、多くの従業員は、自分の業務や身の回りの作業環境を自ら改善し、必要があれば上長に提案するだろう。より効率的に、よりミスが起こりにくいように、安全性を高めるために……と工夫することで自分や仲間が助かるし、創意工夫をすること自体も楽しいからだ。上司がそうした部下の行動に気を配っていれば、制度がなくても、日常のコミュニケーションや定期的な評価の機会に承認・賞賛してあげることはできる。しかし、制度を設けると、より承認しやすくなり、ほかの人に刺激を受ける人も増え、組織全体の活性化も期待できる。ハッピースマイルの「業務改善提案の買取制度」は、この制度をうまく活用している好例といえる。 もうひとこと:2020年11月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 なすび 飲食業界は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、かつてないほど大変な状況に陥った。しかしそんな中にあっても、多くの店・会社が、新しい時代に適した形を模索しながら、おいしい食事を提供してくれている。今回取り上げたなすびは、惣菜や弁当のテイクアウトを始めただけでなく、小中学校の休校中には、店のテラス席を子どもたちの自習室として開放し、食事の無料提供も行った。また、農家や卸業者が苦境に立たされていると知ると、休業中の店舗を期間限定で業務用食材の小売店にして支援した。従業員の雇用維持・健康維持はもちろん、こうした地域貢献にも積極的な姿勢は、同社が地域にも従業員にも愛され続ける大きな理由の1つだろう。 もうひとこと:2020年10月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 日清食品ホールディングス チキンラーメンやカップヌードルといった、世の中を変える商品を生み出してきた日清食品グループ。「同社のような会社であれば、チャレンジ精神にあふれた人が大勢いるだろうし、自ら挑戦する風土もあるだろうから、制度を設けなくても、皆が勝手にチャレンジし、成長していくのでは」という気もするが、同社の人事部は、積極的に社員の挑戦と成長を促し、それに報いていこうとしている。こうした姿勢が組織の持続的な成長に結び付いているのだろう。社内公募制度を取り入れている企業は多いが、会社ごとの考え方によって、実施規模や応募要件、選考方法などの制度設計に違いがあり、興味深い。日清食品の制度にも、日清食品らしさが感じられる。 もうひとこと:2020年9月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 さくらインターネット 在宅勤務は、以前から働き方改革の一環として取り入れる企業はあったものの、なかなか広まらない状況が続いていた。しかし、新型コロナウイルス感染症への対応として、一気に導入や対象の拡大が進み、さらには、一時的な緊急時対応で終わらせるのではなく、リモートワークを前提とした新しい働き方を定着させていこうという動きも見られる。とはいえ、当初は、なかなかリモートへの移行が進まなかったり、思わぬ不都合が生じたりした会社も少なくないだろう。今回取材したさくらインターネットは、早期にうまく移行できた要因として、「多様性を受け入れる文化ができていたことが大きい」と指摘する。見落とされがちだが、大事なポイントといえる。 もうひとこと:2020年8月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ユニバーサルスペース 「この機会に大掃除でもしようか」と思い立ってから、はや数ヵ月。いまだに本や雑誌やいろいろなものが積みあがった状態が改善していない。一時期は割と時間のゆとりがあったはずなのに……。ユニバーサルスペースの遠藤社長は、「夢や目標はなかなか達成できないと思っている人が多いのですが、私は結構、達成してきました。それはなぜかというと、口に出して言っているからなんです」という。同社のオフィスには、社員一人ひとりの目標が掲げられている。仕事の目標だけでなく、プライベートの目標でもよいそうだ。言葉にすると、達成意欲も高まるし、周りもサポートしてくれる。それを社員にも経験してもらいたいという。確かにその通りだ。 もうひとこと:2020年7月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 島田電機製作所 「ボトムアップの組織に変えたいと思っています。私中心に回るのではなく、皆から自発的に意見が出て、皆が考えて進む会社にしたい。組織のための人ではなく、人のための組織をつくりたいと取り組んでいます」「考えなければならないのは、若い世代が活躍できる組織をつくること。今の20代、30代が5年後、10年後には中心になるわけですから、今の価値観に合わせて変わっていかないと会社は先に進めません。逆にいうと、それを40代、50代が受け入れられるかが重要です。若い人が入ってくると経験者が教育をしますが、本当の問題は、その人たちがどう変われるかです」----今回の取材を終えて、組織を変えていくにはやはりトップが大事だと感じた。 もうひとこと:2020年5月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ゴルフダイジェスト・オンライン 働き方改革や労働時間の削減に取り組む際には、「月の残業時間を○時間以下に減らす」とか、「現状より○%削減する」といった目標・方針を定め、各部署や個人に徹底させようとする企業も多いだろう。「○時間以下」や「○%削減」と決めて“強制”することで、これまでのやり方に捉われない発想が生まれることも多いが、一方で、「じゃあ、仕事はしなくていいのか」という不満が生まれやすい。残業を減らそうとするのではなく、何時間になるかを予想して当てるゴルフダイジェスト・オンラインの「オネストジョン」は、ゲーム感覚で楽しみながら参加でき、結果として、社員の主体的な改善を促す効果がある。面白いことを考える企業があるものだ。 もうひとこと:2020年4月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 タニタ タニタの「日本活性化プロジェクト」には、一部に、「労働法逃れではないか」といった批判があるという。基本的に社員時代にやっていた仕事を業務委託し、労働時間管理などの対象から外れることを考えると、確かに、いわゆるブラック企業がこの仕組みを悪用すれば、そうした使い方もできそうだ。しかし、同社にそうした考えは一切なく、個人事業主に移行したメンバーは、収入も大幅にアップし、いきいきと働いている。自身の成長への投資にも積極的になり、よい効果が出ているようだ。「日本活性化」という名称には大仰な印象を受けるもしれないが、この取り組みが広がれば、個人の働き方が変わり、本当に日本全体が活性化するかもしれない。 もうひとこと:2020年1月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ジュピターテレコム(J:COM) 「J:COM UNIVERSITY」のキャリアデザイン学部長を務める岩本氏は、入社以来、事業の第一線で活躍してきたが、定年を迎えてから人事に移り、ダイバーシティ研修などの講師を担当することになった。ユニバーシティ設立に伴って学部長に就任し、今も後進の育成に邁進している。「後輩たちに生き生きと働いてほしい」「成長させたい」という意欲が強いだけでなく、自らも積極的に学び続けている。60歳を過ぎてからキャリアコンサルタントの資格を取得したという。「楽しんでいるんですよ。同じことをしていると飽きてしまいますので。今年のユニバーシティのプログラムも、ほとんど全部中身を入れ替えました」と笑う岩本氏。憧れる社員が多いというのもうなずける。 もうひとこと:2019年12月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ダイワコーポレーション ダイワコーポレーションの「和く和くプロジェクト」は、若手社員が新卒採用活動の企画・運営を行うプロジェクト。新卒採用という会社の重要事項を経験の浅い若手に任せるのは勇気のいることに思えるが、「うまくいくはずがない」「失敗するかもしれないからやめておこう」と捉えるのではなく、信じて任せる姿勢が素敵だ。また、採用の成功だけでなく、プロジェクトに参加した若手の成長にも結び付くなど大きな効果が表れているが、現状に満足するのではなく、「同じことをしていても面白くありませんから」と、新たな展開を検討している。積極的に挑戦し、よりよいものを目指して変わり続ける姿勢は、社員の意識によい刺激を与えることだろう。 もうひとこと:2019年11月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 太陽ホールディングス 太陽ホールディングスの「レクリエーション制度」は、部署ごとに開催する食事会やイベントに対して会社が費用補助を行うというもので、仕組み自体は珍しいものではない。しかし、補助額を飲み会の補助にしてはかなり高額に設定し、「非日常体験をしてほしい」と伝えただけで、単なる飲み会補助とは異なる効果が生まれた。1人当たり2万円の予算を使い切ろうと思ったら「何をしよう?」と頭を働かせるだろうし、自分でお金を出してやるのは二の足を踏むことにも挑戦しやすい。他部署の社員が「こんなことをした」と楽しげに語っていたら、「うちも面白いことをしたい」と思うだろう。皆さんが自分の部署で実施するとしたら、何をしたいだろうか。 もうひとこと:2019年10月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 流機エンジニアリング 所属部署の異なるメンバーが集まり、全社的な課題の解決に向けて力を合わせる----部署横断の委員会やプロジェクトは、多くの場合、やりがいのある仕事といえるだろう。所属部署の担当業務にまい進するのもよいが、こうした活動に参加することは、本人の意欲にも結び付くし、視座を高め、視野を広げる効果も期待できる。ただ、やり方を間違えると、「面倒を押し付けられた」という不満を生みかねない。そうならないためには、社員が意見を言いやすい風土、その意見を積極的に受け入れる経営層の度量、プロジェクトメンバー以外の社員も協力し合う体制などが欠かせない。流機エンジニアリングにはそれらがあるから、この活動がうまく機能している。 もうひとこと:2019年9月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 図書印刷 変形労働時間制については、「忙しい時期の所定労働時間を長くし、その分、忙しくない時期の所定労働時間を短くする仕組み」というくらいの認識だったので、「所定労働時間を短くするのではなく、個人ごとに取得できる休日を設ける」という図書印刷の制度には、「そういうやり方もあるんだ!」と感心させられた。時差出勤との併用も可能であり、時間単位年休なども使えるので、従業員も働きやすいだろう。多様な制度・選択肢があるので人事部門はかなり大変だと思うが、現場の実態を踏まえて制度の見直しを行うなど、一人ひとりがより働きやすく、ワーク・ライフ・バランスの充実も図れるように取り組み続ける同社の姿勢には、学ぶべき点が多い。 もうひとこと:2019年8月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ノースサンド ノースサンドの取材で、社内業務を請け負った人への報酬を尋ねると、「自社でつくっているグッズがもらえるのと、ぼくが飯をおごります。鍋を食べたければ鍋を」とのこと。新規事業のアイデアが採用された場合については、「インセンティブがあるからやっているわけではなく、『楽しいから皆でやろうぜ!』という感じ」だそうだ。どちらも「会社貢献」として評価には反映されるし、前者は金銭報酬の導入も検討しているが、お金のためではなく、楽しいから取り組む風土ができているのは素敵なことだ。社員がそう思えるのは、理念浸透や風土づくりに力を入れる経営陣も、社員とのかかわりを楽しみ、会社づくりにやりがいを感じているからだろう。 もうひとこと:2019年7月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 メイプルシステムズ 「離職率100%」を目指していると言われると、一体、どんなブラック企業かと驚いてしまうが、メイプルシステムズの狙いは、社員をさっさと辞めさせることではない。エンジニアのキャリアを第一に考え、「退職後のキャリアも応援するので、転職の相談も含め、何でもオープンに話してほしい」という思いが込められている。ただ、普通の会社では、そう言われても、社員がどれだけ正直に話すかは疑問だ。同社の場合、事業の特性もあるが、それ以上に、社長や人事が会社の損得にとらわれず、本気で社員や応募者のキャリア形成を応援していることが大きいだろう。まさに、「大事なのは、実際の中身と一致していること」という鴛海氏の発言の通りだ。 もうひとこと:2019年6月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 クリスティ 今年の新入社員タイプは、「呼びかけ次第のAIスピーカータイプ」。多機能だが、機能を十分に発揮させるには細かい設定(丁寧な育成)や補助装置(環境整備)が必要で、最初の呼びかけが気恥ずかしいが、それなしには何も始まらないのだとか(産労総合研究所発表資料より)。もちろん安易な決めつけはよくないが、物にたとえると、特徴を説明しやすく、伝わりやすい。自分を何かの商品にたとえて、商品紹介の形で自分自身についてアピールするクリスティの社内プレゼンアワードは、そのメリットを生かしたユニークなイベントだ。ちなみに、私が新卒のときの新入社員タイプは、理解に時間がかからず、安く調達できる「四コママンガ型」----納得。 もうひとこと:2019年5月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 Arinos Arinosの取材で印象深かったのが、「働きたい職業ランキングを意識している」という話。ユーチューバーやサッカー選手がランキングの上位だが、回答した子供たちの父親の多くは、ビジネスマン。お父さんをかっこいいと思えれば、ビジネスマンが上位にランクインするはずというのだ。「父親が『仕事をしていて楽しい』と家で言えば、子供はかっこいいと思い、ビジネスマンになりたいと思うでしょう。当社のメンバーには、『仕事が楽しい』と心から言えてほしい。それを世の中全体に拡大できれば、なりたい職業ランキングでユーチューバーにも勝てます」と語る古家氏。同社の「新規事業創出のチャレンジ制度」は、古家氏の情熱に支えられている。 もうひとこと:2019年4月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 三越伊勢丹ホールディングス 始業前の朝の時間を勉強や趣味などの活動に当てる「朝活」。知識やスキルを身に付けたり、趣味を楽しんだり、体を動かしたり。新たな出会いも得られ、体のリズムも整う。この10年ほどの間に広まり、すっかり一般的になった。働き方改革で生まれた時間を有効活用しようと、終業後の「夜活」に取り組む人も増えているようだ。これらの活動は、一度でもそのよさを体感すれば前向きに取り組む気持ちになるが、一歩踏み出すまでのハードルが意外に高い。かといって、会社が強制してしまっては意味がない。運営側が仕事チックになりすぎず、面白がりながら長く続けていこうとする三越伊勢丹ホールディングスのやり方は、多くの企業にとって参考になる。 もうひとこと:2019年3月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 スープストックトーキョー 「働き方改革」ではなく「働き方"開拓"」。「副業」ではなく「複業」。「自社の仕事に軸足を置いたうえで、さまざまなことにチャレンジできる」という意味を込めた「ピボットワーク」。こうした言葉の使い方にも、社員の「働き方・生き方の質」を本気で向上させていこうとする同社の思いが感じられる。飲食業やサービス業の労働時間・働き方に対しては昔からネガティブなイメージがあるが、それが悔しいと語る江澤氏。江澤氏の言うように、飲食業やサービス業は、人を笑顔にする、価値のある仕事だ。そうであれば、そこで働く人たちにも、心から笑顔でいられる働き方をしていてほしい。世の中に、生き生きと笑顔で働く人が増えますように。 もうひとこと:2019年2月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ユナイテッド ユナイテッドでは、近年、新規事業がやりたくて入社してくる学生が増えているという。同社では、これまでにも、新規事業にチャレンジできる制度をいくつも用意して、社員の挑戦を促してきた。過去には、内定者が事業を立ち上げた例もある。そうしたカルチャーを築いてきたからこそ、新しいことに前向きな若者が集まるのだろう。自ら上位グレードへの昇格意思を表明する「グレードアップ宣言」にも、毎年、多くの社員が手を挙げる。「最近の若手は、チャレンジ精神がない」などと決めつけるのではなく、1人ひとりの成長を後押しし、挑戦を促す組織風土をつくり、手を挙げた人を認め、サポートしていけば、組織は変わることができる、と感じた。 もうひとこと:2018年10月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 大和ライフネクスト 今の住まいに越してきて約3年。管理人さん(なのか、実は大家さんなのか)のまじめで丁寧な仕事ぶりには、いつも感心させられる。ゴミ捨て場も階段も常に清潔に保たれており、大雪の後も、すぐに階段の雪かきをされていた。「手伝いましょうか?」と言っても、毎回、丁重に断られてしまうので、感謝の気持ちを伝える機会は、ゴミ出しのときにお会いした際などに、「いつもありがとうございます」と言うくらいしかない。今回の取材を通して、評価される機会の少ない人を認めることの大切さを改めて感じた。また、60代、70代になっても、自ら工夫し、チャレンジする人が多いことを伺い、「ぼくも頑張らないと」という気分になっている。 もうひとこと:2018年9月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 キヤノン キヤノンの「研修型キャリアマッチング制度」は、社内公募と専門研修を合体させたもので、未経験の仕事にチャレンジしたい社員にとって魅力的な制度だ。ただし、研修に入る際には所属部署を離れ、スキルの習得が不十分だと、希望の部門に行けない可能性もある。その一方で、キャリアカウンセラーが継続的に寄り添うとともに、当初の希望どおりでなくても、なるべく本人が納得のいく進路を考える。覚悟を求める厳しさと、安心して挑戦できるセーフティネットを兼ね備えている。こうした制度が生まれ、うまく運用できているのは、「三自の精神」や「実力終身雇用」といった同社独自の考え方が社内に深く浸透しているためであることがよく分かった。 もうひとこと:2018年8月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 NEC 日本企業における「終身雇用」意識は、確実に弱まってきている。新卒で入社して定年まで勤め上げることを、会社側もそこまで強くは期待していないだろうし、従業員のキャリア観も様々だ。とはいえ、日々の忙しさに紛れ、なかなか将来に目が向かない人が多いのが現実ではないだろうか。今回取り上げたNECのように、早い時期から定期的に自分のキャリアを意識させると、有能な人が退職してしまうおそれはあるものの、それ以上に、各人が目指すキャリアに向けてモチベーションを高め、成長していく効果が得られる。「セカンドキャリア支援制度」も、自分に何ができるかを真剣に考えるきっかけとなり、制度を利用しない人にもよい刺激となりうる。 もうひとこと:2018年7月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 コストコ ホールセール ジャパン 正社員もパートタイムと同じ時給制としていたり、マネジャー以下のポジションへの登用をすべて「ジョブポスティング(社内公募制度)」で決めるなど、コストコの人事マネジメントには、他社にないユニークな特徴がある。しかし、こうした仕組みは、同社にとっては当たり前のことであり、運用上の問題は一切ないようだ。だからといって、他社がいきなりこうした制度に転換するのはハードルが高いが、一度、自社の常識を疑ってみると、よりよいやり方を生み出せるかもしれない。そして、自社のそれまでの常識と異なる仕組みを定着させるためには、同社が指摘しているように、管理職の評価に反映し、上の立場の人の行動変革を促すことが重要だろう。 もうひとこと:2018年6月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ソニー ソニーの「FA制度」は、他社の制度のように、社員が自分の行きたい部署に異動希望を出す仕組みではない。社員が「FA宣言」をして、自分に興味を持ってくれた部署からのオファーを待つというユニークなものだ。まさに、プロ野球のFAと同じ形といえる。自分の行きたい部署に応募できる他社の制度も、もちろん、本人にとってよい制度だが、「考えてもいなかった部署からオファーがあり、自分の新たなキャリアの可能性に気づく」「複数の部署からオファーを受けることで、モチベーションが高まる」といった効果が得られる同社の制度も、メリットが大きい。こうした独自の制度を生み出したところにも、新しいことにチャレンジする同社のDNAを感じた。 もうひとこと:2018年5月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ディー・エヌ・エー ディー・エヌ・エーの人事プロジェクト「フルスイング」は、文字通り、社員の「フルスイング」を応援する取り組み。「フルスイング」、「シェイクハンズ制度」、「クロスジョブ制度」といったわくわく感を与える名称も同社らしいが、制度の内容にも、同社らしさが表れている。例えば、シェイクハンズ制度では、異動したい人は、異動したい事業部の事業部長に自分で直接アポイントを取って話をしに行き、「ここで働きたい!」と訴える。360度フィードバックを記名式で行うのも、他社でやるといろいろ弊害が起こりそうだが、名前を名乗って発言するのが同社には似合っている。自社の風土、自社の社員に“刺さる”仕組みにすることが大切と感じた。 もうひとこと:2018年4月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ライオン 現在の歯ブラシの形を日本に広めたライオン。ペースト状でチューブ入りのハミガキを発売したのも、同社が日本初だという。ほかにも、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア、薬品など、同社の製品は、便利、清潔、快適といった人々の生活の質の向上に結び付くものであり、今まで世の中になかったものがいくつもある。そうした新しいものを生み出すチャレンジを人事制度の面から支えてきたのが、今回取り上げた「LION Challenge Cup-Innovation」。前身となる制度は1966年の導入だというから驚きだ。しかも、その制度をただ続けるのではなく、改善しながら運用している。行動・プロセスをたたえる「L-Compass Award」も開始するなど、社員の意欲を引き出す努力を惜しまない姿勢を強く感じた。 もうひとこと:2018年3月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 スマイルズ 「やりたいことができる環境をつくり、人を集めるのではなく、人が自然に集まる会社をつくる。その結果、世の中の体温を上げるビジネスの“作品”を生み出していく」「社員を束縛するのではなく、兼業・副業をしても当社で働きたいと思えるよう、自社の仕事の魅力を高めていくべき」「他社を差し置いて一番になりたいという考えはない。人を取り合うのではなく、魅力的な方をシェアできればよい」「制度をつくったから新しいものが生まれるのではなく、やりたいことに挑戦するのを歓迎する機運や、主体的なチャレンジを容認し後押しする価値観が重要」……今回のスマイルズの取材では、気づきにつながる素敵な言葉をいくつもいただくことができた。 もうひとこと:2018年2月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 シーエーセールススタッフ 「気分で出勤」制度----なんとも素敵な制度名だ。「風がふいたら遅刻して 雨がふったらお休みで〜」という『南の島のハメハメハ大王』の歌詞を思い出す。そこまで“気分次第”ではないにしても、週2日の休日とは別に、出社してもしなくても出勤扱いとする日を設けるというのは、面白いアイデアだ。「やらなければならない仕事があっても、休んでしまう人がいないか」と少し不安になるが、社員の側からすると、“信頼されている感”があるので、「自分の責任を全うしたうえで、休めたら休もう」という気持ちになるのだろう。試行錯誤を重ね、トライアルを繰り返して、自社に適した制度をつくりあげた点も参考になる。 もうひとこと:2018年1月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 サトーホールディングス 他社に先駆けて65歳定年を実現したサトーホールディングスは、65歳以降も、雇用年齢の上限を定めずに再雇用する仕組みを設けており、「高年齢者に優しい会社」といえる。年齢を理由に解雇・雇止めされることがないのは、社員にとってありがたいことだ。しかし、お話を伺うと、これらの制度は、ただ社員に長くいてもらうためのものではないことが分かる。51歳以降を定年退職扱いとし、再雇用の上限年齢も定めないことで、「いつまでこの会社で働くか」「そのために、どう組織に貢献するか」を主体的に考えることが求められる。兼業・副業制度も検討する同社の姿勢は、社員の自立・自律を促す厳しさもあり、これからの雇用の在り方として参考になる。 もうひとこと:2017年12月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 日本航空 本シリーズを2ヵ月ほどお休みさせていただいた。バカンスを取っていたわけではなく、心身ともにリフレッシュできていないものの、久しぶりに本誌の取材で企業を訪れると、新鮮な気持ちになる(久しぶりのせいか、カメラを忘れ、ご迷惑をおかけしてしまいましたが……)。日本航空の「ワーケーション」は、年休取得を促進するための施策だが、何か新しい仕組みを入れたということではなく、導入済みのテレワークでできることを、「こんな使い方もありますよ」と社員に提示したものだ。しかし、これによって気づきを得て、予定していた旅行をキャンセルせずに済んだ社員もおり、年休の取得促進に貢献している。アピールの仕方の重要性を感じた。 もうひとこと:2017年9月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ソフトバンク 今回取り上げたソフトバンクの2つの施策は、いずれも、「自分の知識を共有したい」「だれかに教えたい」と社員が自ら手を挙げ、ボランティアで活動しているものだ。「仕事が忙しいなか、そんな人がどれだけいるだろうか」と思われるかもしれないが、どこの会社にも貢献意識の高い人はいるはずだし、やってみると、教えることによって気づくことがあったり、組織を超えたネットワークができるなど、得られるものも多い。そのためには、手を挙げることのできる場を用意してあげること、そして、遠慮したり躊躇している人に対して、「やってみませんか」と背中を押してあげることが大切だ。読者の皆さんの会社でも、取り組んでみてはいかがだろうか。 もうひとこと:2017年8月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ポーラ 「雇用関係によらない働き方」が、企業・働き手の双方に注目されている。働く側からすると、やりたい仕事ができる、時間や場所を選ばない、起業家として成功する夢が持てるといったメリットがあり、企業にとっても、単純な人材確保の手法にとどまらず、オープンイノベーションの観点からも必要性が指摘されている。とはいえ、そのような働き方には、収入が途絶・減少するリスクもあるし、自ら能力・スキルを継続的に高めていくのも容易ではない。その点、ポーラのビューティーディレクターは、個人事業主でありながら、スタート時の収入や教育の面で手厚いサポートある。もちろん、必ず成功するとは限らないが、魅力ある働き方の1つといえよう。 もうひとこと:2017年7月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 サッポロホールディングス サッポロビールは、人財開発グループのビジョンとして、「自燃型で成果を出せる人財」の早期育成で「人財力ナンバーワン企業」となることを掲げている。「自燃型」というのは、情熱という心の火を、周りの人から付けてもらうのではなく、自らつけて燃えるチャレンジングなマインドを持った人のこと。(1)自燃型(自ら火をつけて燃えている)、(2)可燃型(人がそばに来て火をつけてくれると燃える)、(3)不燃型(自ら燃えないし、人がマッチを擦っても燃えない)、(4)消火型(せっかくついた火を消して回る)のうち、(3)や(4)はもちろん、(2)を減らし、(1)を増やしたいものだ。読者の皆さんの会社には、(1)〜(4)の社員がどのような割合でいるだろうか。 もうひとこと:2017年6月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 リンガーハット 今回取材をするなかで、「全員を同じに考えないほうがいい」「いろいろなルートがあってよいと思う」「何でも全員に求めるべきではない」など、個々人の希望や事情に配慮する発言がたびたびあった。杉本氏も指摘しているように、人事としては、統一的な運用をしたほうがやりやすい。しかし、こうした多様性を認めるスタンスで設計・運用していることが、働く1人ひとりの意欲に結びついているのだろう。また、社員がアルバイトを紹介した際に、(紹介者ではなく)入社した人にボーナスを支給する制度を設けたというお話も興味深かった。パート店長制度もそうだが、自社に合ったよりよい仕組みを工夫し、改善していこうとする姿勢を強く感じた。 もうひとこと:2017年5月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ディアーズ・ブレイン ディアーズ・ブレインの「弾丸トラベラー研修制度」は、抽選で選ばれた社員の海外渡航費用を会社が負担するもので、行き先も目的も自由。何でも好きなことに挑戦できる、なんともうらやましい“研修”だ。「こんな研修があったらいいよね」という社員の思いを人事が吸い上げ、制度化したものだという。社員がこんな制度を提案したら怒られる会社も多いだろうし、そもそも社員は、こんな制度を導入してもらえるとは思わないだろう。こうした声が人事に届くのは、社員が何でも言いやすい雰囲気と関係性を人事担当者が築いているからだ。そして、社員の思いを受け止めて制度化した人事も素敵だし、人事の提案に喜んでOKを出した経営トップも素敵だ。 もうひとこと:2017年4月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 東京急行鉄道 自社の社員について「保守的な面がある」という東急電鉄だが、220社8法人でグループを構成し、多彩な事業を展開する同社に、「保守的」なイメージはない。近年も、渋谷駅周辺開発プロジェクト、仙台空港運営事業、電力小売り事業など、注目度の高い取り組みを進めている。しかし、基幹事業の性格もあって、「全員が野心あふれる起業家人材というわけではない」というのは、その通りかもしれない。そうした、全員が起業家人材ではない大多数の企業にとって、新規事業を生み出す仕組みを形骸化させないことは、簡単ではないだろう。だからこそ同社は、単なる新規事業の「提案」制度ではなく、社内起業家の「育成」制度としたのではないだろうか。 もうひとこと:2017年3月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 アフラック 今回の取材で特に印象に残ったのは、「人事異動は会社にとって投資」という言葉。どんな仕事も、慣れた人がやるほうが効率がいい。定期異動を行って人を動かすと、多くの部署で引き継ぎの手間や混乱が生じ、戦力ダウンになる。しかし、当初はパフォーマンスが低下しても、1年も経つ頃には皆が成長し、それを繰り返すことで組織力が上がっていく。もう1つ印象的だったのが、一時転勤経験者の活躍を紹介した社員向け資料を見た人事の方々が、「〇〇さん? ああ、彼女も活躍していますよね。○○のツールを作ったり、○○もして……」と、その後の活躍をよくご存じだったこと。社員1人ひとりに目を向け、見守っている様子が感じられた。 もうひとこと:2017年2月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ネットプロテクションズ 今回取材に応じていただいた草間氏は、マーケティング部門の1メンバーだった当時、新卒採用ワーキンググループへの参画を打診された。この制度が導入された初年度のことだ。できたばかりの制度なので、引き受けた場合にどの程度負荷が増えるかも、周囲の協力を十分に得られるかも分からない。自分の担当業務を行いながら、全社的なプロジェクトに取り組むのだから、不安もあったのではないだろうか。そう思いながら、「お願いされてどう感じましたか?」とうかがうと、「私は、お願いされると、『いいですよ』と言ってすぐやるんです」と笑顔で答えてくださった。始めにこういう方にプロジェクトを任せたことも、制度が定着した要因の1つだろう。 もうひとこと:2017年1月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 アイエスエイプラン 「チャンドラーは『組織は戦略に従う』と言いましたが、そうではなく、組織をつくるところから会社を作っていきたいと考えています。戦略ややりたいことがあってそこに人が集まる形より、『この人と働きたい』というところから新しいものが生まれてくる組織のあり方が理想です。そのために組織をもっとよくしていきたいし、その輪が広がっていけばいいですね」――こう語る糸川社長は、組織づくりに対する手間を惜しまない。特に印象的だったのが、「ぼくたちはフォロワーのためにいる」という信念を持ち、社員と共に成長していこうとする、謙虚でありながら情熱的な姿勢。同社が目指す「進んで従う部下がいるリーダー」のお手本といえるだろう。 もうひとこと:2016年12月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ローソン 取材の際に、「他社へのアドバイスをいただけますか?」とお願いすると、お答えいただける場合といただけない場合がある。企業ごとに置かれた環境も考え方も異なるのだから、むしろ、お答えいただけなくて当然かもしれない。とはいえ、直接的なアドバイスはいただけなくても、その会社がどのような状況の下、どういう考えでどういう制度を設けたのか、その結果、どういう変化があったのかという具体的事例は、他社にとって大いに参考になる。なかでも、「やってみたがうまくいかなかった」という失敗事例からは、学ぶ点が多い。社員のチャレンジを促すとともに、失敗すら褒め、共有する風土を目指すローソン。今後、どう進化していくか楽しみだ。 もうひとこと:2016年11月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 カルビー 過去に別件でお会いした方を含め、私がお世話になったカルビーの皆さんは、皆、明るく優しく前向きな方ばかりだ。たまたま運がよかったというわけではなく、社風というものがあるのだろう。外から見るとそんな素敵な同社だが、人事部門の自己評価は厳しい。受け身の体質があると捉え、それを改善するために、今回取り上げた「キャリアチャレンジ制度」を導入している。同社は、このほかにも、本社をフリーアドレス制にしたり、女性活躍推進に積極的に取り組んだりと、あの手この手で組織風土改革を進めている。こうした施策の効果により、同社がどう進化していくのか、今後も目が離せない。 もうひとこと:2016年10月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 トラスコ中山 一般に、多面評価(360度評価)に対しては、「評価の目線が身に付いていない社員がかかわるので、評価結果の妥当性を担保できない」「人間関係の悪化や社員同士のなれ合いを生む」「実施するのに手間がかかる」など、否定的な意見が少なくない。実施する場合も、処遇には影響させず、管理職研修などの中で、本人の気づきを促すためだけに行う企業が多い。しかし、トラスコ中山の取り組みを見ていると、「どうしてこんなに有益な制度を導入する企業が少ないのだろう?」と感じてしまう。もちろんうまくいくのには秘訣があり、経営トップの意思、長年培ってきた組織文化、評価者を教育し続けるたゆまぬ努力があってこそ、この制度が機能している。 もうひとこと:2016年9月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 クックパッド クックパッドの本社を訪れると、まず目に入るのが、受付エントランスからガラス越しに広がる開放的なキッチン&ラウンジ。会社が新鮮な食材を常備しており、社員はいつでも自由に料理をすることができる。試作やランチ作りが行われるほか、イベントや食事会も頻繁に開催され、コミュニケーションの活性化に役立っている。以前の本社にもキッチンを設けていたが、2014年に現在のオフィスに移転した際、ラウンジとの一体感を高めるなど、「人が集まるキッチン」としての機能を強化した。本文で触れた自主勉強会も、ここで開催されることが多い。キッチンの明るい雰囲気は、勉強にもコミュニケーションにもうってつけ。環境づくりの大切さを感じた。 もうひとこと:2016年8月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 キープウィル・ダイニング キープウィル・ダイニングの本社にうかがうには、本社ビル1階にあるカフェ、「CAFE KATSUO」の店内を通り抜ける必要がある。居心地の良さそうなお店で、スタッフの皆さんの「こんにちは!」という明るい声が心地よい。同店は、今回紹介した「キープウィル・アワード」の発表において、自社の理念を「ハートフル・ホスピタリティー」という1つの言葉で体現しているとプレゼンしたそうだ。皆さんの笑顔は、まさにハートフル。取材後、写真撮影を忘れたことに気づいて慌てて引き返したときも、ハートフルな温かい笑顔で迎え入れていただいた。 もうひとこと:2016年7月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 ベイクルーズ 取材に訪れた渋谷区の本社は活気にあふれ、ミーティングなどで活発に議論する声があちらこちらから聞こえた。「これからの時代は、多様性がますます重要視されます。どんな働き方、どんな価値観の人であっても、会社の中で役割を果たせる環境を作る必要があります。そのために、この新ビジネス提案制度だけでなく、さまざまな仕組みを作っていきたい。個の強みを生かして伸ばしていくこと、個のキャリアを実現していくことに力を入れていきます」と語る櫛谷氏。多様な人材にチャンスを与え、個人のチャレンジを応援していこうとする姿勢が、従業員のやる気を高め、1人ひとりが輝ける組織を築いている。 もうひとこと:2016年6月号「チャレンジ制度運用シリーズ」取材後記 エストコーポレーション 「お茶出し、1回につき100円」――エストコーポレーションでは、社員が来客にお茶出しをすると、100円分の報酬が支給される。1回の来客対応に要する時間や労力は、それほど大きなものではない。しかし、そのために自分の仕事を中断しなければならないことを考えると、ちょっとしたことだからと馬鹿にできない。皆が平等に担当するのであればよいが、こういうことは、えてして特定の人に集中するもの。そこで、森脇氏が関係者を説得し、「お茶出しスタンプカード」を作ってこの制度を立ち上げたそうだ。社員にとって、金額の多い、少ないは関係ないだろう。「自分の頑張りを認めてくれている。見ていてくれる」と思えることが、やる気を促すのだ。 |