レゾナンス&スパークス(1)
第一夜、ソロ・ピアノ後直撃インタビュー
以下は、10月5日に赤坂、草月ホールで行われたライブ、「レゾナンス&スパークス、山下洋輔ソロ・ピアノ」のプレイ後のインタビューです。
[インタビュアー]── 今回はコンサートシリーズの第1夜、ソロ・ピアノ
による演奏でした。
1人で聴衆に向き合う時の気持ちはいかがですか?
成果も、失敗も、自分1人のものだからね。
喜びとつらさと両方あって、これはもうピアニスト冥利につきるというか、ソロ楽器のピアノ弾きにしか
味わえない特権でしょうね。
──準備は、トリオと較べ、より周到にするのでしょうか。それとも、1人だからより自由な気持ちで取り組むのでしょうか?
その兼ね合いも楽しみのうちになっているかな。
たしかにトリオだと、相棒に助けてもらえるっていう気持と同時に、迷惑もかけられないっていう、常にチームプレイの感覚があるよね。
ところが、ソロはどうなっても自分一人のものだから、考え方によってどうにでもなるのね。たとえば、二日酔いでベロベロのまま演奏して、勝手に自分で結果
オーライって言ってもいいわけよ。でも最近はそういう度胸があまりなくて(笑)、ツアーだとなるべく前乗りしてコンディションを整えるっていう風にしているね。
前の日から食事の時間も決めて、体調をコントロールしたり、オリンピック選手じゃないっていうの(笑)。
──今日のコンサートは、15年ぶりのソロ・ピアノ・アルバムの発売記念ですが、アルバムを作る方法は、どのようなものですか? 全体のコンセプトを決めて演奏曲を選ぶのか、気に入った曲を演奏していくと全体がまとまっていくのか、どちらですか?
えーと、それは普通は後の方なんだけど、今回は、コンサートでレパートリーになった曲をその通りの曲順でやるという構想があったわけだから、前者でもあるね。
そのなかに、ずっと弾いてみたかった曲を入れたりしている。例えば、今度のアルバムでは、ライナーノーツにも
書いたけど、昔、ベースのチャールズ・ミンガスが、ミュンヘンのライブハウスで、さっと弾いたメロディーがずっと耳に残っていた。メロディは覚えているんだけど、曲名がわか
らない。あるとき、大阪のジャズスポット「ハチ」のマスターと話して「If You Could See Me
Now」っていう曲だと分かった。それで譜面を探して、今回演奏できた。
──では、アルバムを作るとレパートリーが増えます ね。 ところで、この後、11月7日(火)・8日(水)、
第2夜・第3夜のコンサートと続くわけですが、準備の方はいかがですか。
7日がトリオ、8日はビックバンドで、 このアレンジメントで来年5月にはニューヨークのミュージシャンを使って「スイートベイジル」でビッグバンドで公演する予定にしています。
今ちょうど、8日用のアレンジ譜面があがってきつつあるところです。
松本治、納浩一、道下和彦、香取良彦、栗山和樹さんたち、実力抜群の日本人アレンジャーに頼んであるので、どれも楽しみですよ。
「ファースト・ブリッジ」や、「クルディッシュ・ダンス」に加えて、今年の正月のニューイヤー・コンサートで発表したピアノ協奏曲第一番の中からのモチーフも取り上げるつもりです。7日のトリオは、このビックバンドの曲目も含めたレパートリーをニューヨーク・トリオでやります。どうかお楽しみに。
──両日、続けて聴いた方がお得ですね。
それは絶対お得です!(笑)。なんというか、今、自分の中にある音楽の神髄を全部聴いていただけると確信しております。
どうぞよろしく!
2000年10月5日
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