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. | 2003.01 | . | ||
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. | イラストレーション:火取ユーゴ |
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新幹線に乗ると、自分の座席番号に飛び込みらしい人が座って居る。けれど、まわりは空席だらけ。距離は名古屋−東京。こういう時に皆さまはどうされますか。あたしゃあ、黙って他所に座りますよ。でもこれがアベック(古い!)で、ルイヴィトンのバッグの偽もの(そうに決まっている!)なんか周りに散らかして、いちゃいちゃしていたとすると、一応、「そこ私の席なんですけど、分かってます?」と言いたくなる。しかし、そのうち、そいつらが車内で記念撮影なんか始めるので、ああ、イナカモノか、と納得して、無知蒙昧無邪気無教養を捨て置くということになる。捨て置くと、こういうのはますます増殖して日本国は滅亡するが、もうそんなことは、わしゃ知らんのよね。 というわけで、名古屋その1。愛知芸術文化センター野外特設リングで、仏国籍の踊り手・ミエ・コッカンポー vs 電子ドローイング・日比野克彦 vs ドラムス・植村昌弘 vs ピアノ・山下によるバトルロイヤル一本勝負。何でもありのライブ絵巻で、途中で渡された電子ドローイング機械に楽士も絵を描きそれがスクリーンに写るという越境行為あり。黙々とドローイングを続ける日比野氏の存在感に対抗して、ときには楽士にからみつき、さらにはドラマーを二人羽織手法で後方から操ったりという技を連発しつつ踊りまくったミエ嬢は、最後は「ハッピー・バースデイ」を歌って締めくくるという大技を出した。出だしのバラードで「Every Time We Say Good Bye」をリクエストされていた山下は、うろ覚えだったので、第一部に出演のケイコ・リーとそのバンドの控室に行って教えてもらった。坂井紅介(b)や野力奏一(p)が頭をひねっていると、ケイコがやってきて、さらさらとコードを書いたのには驚いた。おいおい、そういう奴だったのかよ。それを見ながらのリハの途中でミエ嬢が「♪Major to Minor〜〜」と歌う。親切にコードを教えてくれているのかと思ったら、元々そういう歌詞で、その箇所でコードがシンクロしてメジャーからマイナーになるのだ。いやあそうだったのか、格好いいなあ!って、今まで知らないのが大恥だろうが! 名古屋その2は、翌日、同じく屋内特設リング。香港生まれの踊り手・ユーリ・ン vs DJ・アーチ vs 客 vs FMラジオ vs 山下。客が一人一個ずつラジオを持っていてそこにCMが入ったり、時にはホワイトノイズを一斉に出したりという趣向。ン氏とは以前に芝浦のスタジオで半日サシでやりあって何でもオーケーの感触があるので安心。DJ氏がパフォーマンスを実況中継するなどの摩訶不思議空間が出現。ある場面でバップの「Hot House」がリクエストされていたので、練習した。いやあ名曲だなあ、って、今まで知らないのが無知大恥だろうが! アンコールは、まったく打ちあわせ無しでユーリと即興パフォーマンス。汗だらけの顔がピアノごしにきっとこちらを向いた瞬間に、最後の音を叩いて終わった。 八ケ月岳日。リヒテルやブーニンなどずらずら出演の由緒あるコンサートを続けている八ケ岳高原ロッジの音楽堂でソロピアノ。客も泊まり込みがほとんどという隔絶された高原の贅沢環境にしばし浸る。前日入りして、練習。当日の昼に、そばを食べたくなって車で山を下ろうとしたのが大失敗。日陰の雪溜まりで車がスリップして、対向車線に飛び出した。対向車は来てはいないのだが、反射的にブレーキを踏んでハンドルを左に切った。これが最悪の対処法らしい。車はスケートをしているように左周りに滑り、側溝を越えて枯れ草の中にあたまを突っ込んで反対向きになった。いやあ、簡単に回るものですねえ。 気を取り直したおれは、素早くサイドブレーキを踏むと、右手の軽いスナップでイグニッションキーをひねり、メルセデスC-240の112M26型エンジンを切る。外に出て前部を点検するが、幸い損傷はない。その時、薮の中から一トンはあろうかという巨大な熊が飛び出してきた。襲ってきたその熊を素手で倒す。ガーバーのハンティングナイフで解体して生の肝臓をむさぼり食う。その皮で作った弓で三百メータ先に現れた鹿も倒す。切り取った鹿肉を盛大な焚き火であぶってむさぼり食い、一ガロンのウイスキーをラッパ飲みにしながらオレンジを五十六個むさぼり食う。って、こんなところで大藪春彦ごっこやるんじゃないっての。。 清水月ミチ子日。ホストをやっているBSラジオたんぱの番組の公開収録。ゲストは清水ミチコ。1994年の「筒井康隆断筆祭」にも来てくれて、数々の至芸を披露してくれた。その時の歌真似で、ドリカムをやりながら「♪いつも突然の転調〜〜〜」などと、音楽の内容を解説しつつやってしまったのには驚愕。今日もミチコ・コーナーが炸裂して、ユーミン、桃井かおり、三輪明宏、田中真紀子、デビ夫人、サッチー、浅香光代、元ちとせ、などなどが総出演した。一瞬にしてその人が憑依し、その口から、あっと驚く言葉が語られる。超常現象としか言い様がない至福の時間に笑い転げる。 「CDジャーナル」2003年1月号掲載 |
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