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. | 2005.07 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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居月眠日。午後中央線に乗って帰宅途中、隣の座席の小学生男子が、眠りこけて寄りかかってくる。金モールの入った帽子や制服を着たまま口は半開き、頭はこちらの肩にあずけっぱなしだ。三鷹あたりで心配になって起こした。「きみきみ、起きなさい。どこまで帰るの。降りる駅はどこ?」少年はハッとして目を覚まし「あ、あの、あの、あの、タチカワ!」「じゃあ同じ駅だ。おじさんが起こしてあげるからまだ寝ててもいいよ」返事もせずにまた寝こける。国立を過ぎたところで起こすと「あ、はい、はい、はい」などと言って起きたので安心していたら、電車が立川駅の構内に入る頃にまた寝こけた。「ほらほら、立川だよ。起きなさい。どうやって帰るの? 乗り換え? バス? 行き方は分かっているの?」「はい、はい、歩いて行きます」と言いながら、筒の入った袋など持ち物三個をずるずる引きずって降りていった。どういう教材か、お稽古グッズか定かでないが、結構子供も大変だ。慌ただしいのかのんびりしているのか分からない初夏の電車内遭遇。 溝月上日。「言葉を愛した作曲家溝上日出夫とその弟子たちの歌曲の会」というコンサートに参加。三年前に他界された溝上先生の親友で陶芸家の原田隆峰氏の詞「埋み火」に曲を書いた。故人を追悼する内容で、それを歌うソプラノ歌手の桑原英子さんは溝上夫人だ。特別なシチュエーションを任されて光栄だったが大変だった。一年前から準備を始めた。 東京文化会館小ホールでの当日のプログラムは、
猫月失踪日。以前に紹介した新参小猫のピロの声はすれども姿は見えず。異次元空間から助けを呼ぶ声に、二階や外や部屋と走り回るがそのたびに声は遠ざかる。階段の裏からも聞こえる。困惑混乱冷や汗の後、この家の設計図を知る人間に連絡。「床下以外にありえない」との言葉に台所の床をあけてのぞいたら、いたいた。さっき貯蔵庫を開けた瞬間に飛び込んだらしい。助けを呼んでいたのにこうなるとななかなか寄ってこない。鰹節とじゃらし器具でおびき寄せて掴みあげるとススだらけ。貯蔵庫から重いものを慌てて取り出していた女房は軽いギックリ腰。「馬鹿者」と洗濯袋に入れてぬるま湯をぶっかけてやった。ピロの母親は巣鴨のノラで林栄一(as)家の外猫だが、この間避妊手術に連れていこうとした栄一さんの左手に噛み付いて手術入院に至らしめたという事件を起こしている。母子そろってとんでもない奴らだ。 「CDジャーナル」2005年7月号掲載 |
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