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. | 2006.11 | . | ||
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イラストレーション:火取ユーゴ |
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空月耳日 テロか進学かで高校生が迷っているとテレビで言っている。これはすげえなと思ったら、プロか進学かで野球のことでしたね。ますますひどくなる空耳状態だ。 相月撲日 動植物、食物、文化など外国産の襲来が続いているが、相撲も例外ではない。カミツキガメの大暴れとはちがって、こちらは同じルールで戦うスポーツだから強いものが勝つのは当然だ。外人勢の上位独占に文句を言うつもりはないが、でもひとつだけ、あの寄り切りや押し出しの時に相手を土俵の外に出してそのまま自分もどたどたと出ていくのはやめてもらいたい。土俵の円は境界線でその外は異界だ。相手を異界に送り込んだら自分はこちら側に残って、どっしりと腰を落とし、残身の美を現してびしりと見得を切っていただきたい。これが分からないメンタリティだからジンガイどもは駄目だというのだ。なんて相撲に関してはいきなり右翼になることを発見。 介助月犬日 敦賀の古い友人でコンサート主催者の吉田慧さんが脳梗塞をやり体が不自由になった。しかし絵の才能を発見し画家として色々なコンクールで賞を取るようになった。その吉田さんが介助犬候補の黒いラブラドルレトリバー「関空号」と出会い、さまざまな手続き上の困難を乗り越えて、ようやく認定試験を受けることができた。その試験の内容を聞いてびっくり。外に出てご主人と一緒にデパートで買い物をしてくる課題がある。途中、角を曲がったところにパンを持った人がいて急に差し出す。お、美味そうだってんで反応したら減点。急にコップを割ったり空き缶を投げて音を出しておどかしたりもするが反応したら減点。「可愛いワンちゃんですね。触っていいですか?」「どうぞ」これも駄目。それらを二人で乗り越えたのだからえらい。バンドマンだったら絶対無理じゃないかなあ。酒とハッパとオンナを見せられたら、すぐ尻尾振ってそっちに行っちゃうよね。犬にも劣るバンドマンだ。え、昨今はそんなことはない?失礼しました。ともかくも、試験をパスした「関空号」は晴れてご主人と一緒に食べ物屋に入れる。電車にも飛行機にも乗れる。家では、新聞を取り、電灯を消灯し、かかってきた電話を取り次ぎ、頼まれたものはなんでも持ってくる。日本で三十頭目の介助犬になった。そのお祝いのコンサートに、ニュー・カルテット(米田裕也(as)、柳原旭(b)、小笠原拓海(ds))で参加。満員の敦賀市民会館で吉田さんと関空号が挨拶し大拍手を浴びる。 パン月ジャ日 前立腺ガンの早期発見治療を啓蒙するブルークローバー・キャンペーンの一環で、PANJAスイング・オーケストラが文京シビックホールで演奏。ゲストに日野皓正(tp)、渡辺香津美(g)、坂田明(sx)、大貫妙子(vo)。メンバーは、松島啓之(tp)、藤本忍(tp)、吉田哲治(tp)、中路英明(tb)、藤陵雅裕(as)、梅津和時(as)、片山広明(ts)、石兼武美(bs)、杉本喜代志(g)、吉野弘志(b)、村上'ポンタ'秀一(ds)。二十余年前の創立時メンバーがほとんどだ。最後は「シング・シング・シング」でゲストとポンタが一騎打ち。アンコールに日野ー山下で「星に願いを」をやると、ステージには満天の星空が出現する。これを見て「あ、演出は高平哲郎だ」と分かればあなたも業界のツウです。 絵月本日 NHK教育テレビで絵本の特集をやるというので、椎名誠さんから絵本作家としてインタビューを受ける。おれには「もけらもけら」「ドオン!」「つきよのおんがくかい」の三冊の絵本がある。「もけらもけら」は元永定正さんの抽象画がどんどん行進するのでそれに合わせて「しゃばどび」とか「ぐがんぐがん」などと擬音を連ねた。最後は回転する物体が「だば!」といってページを破って背表紙に出てくる。これは絵本にっぽん賞をもらい「ロバの音楽座」が音楽劇にして公演多数が実現している。「ドオン!」は鬼の子のドンちゃんと人間の子のコーちゃんが出会い、ケンカのかわりに太鼓を叩き合う。両方の世界から動物も含めた無数の応援団が押し寄せて全員で太鼓を叩きまくる。やがて皆の音が「ドオン!」と合う。ケンカを忘れて皆は笑う。理想のジャズの姿なんですね。長新太さんに絵をいただいたが「ドオン!」前後の見開きでの大集団セッション場面がすごい。「つきよのおんがくかい」は、妖精が集まって歌を歌い、終われなくなって困っているのを人間が助けて感謝されるというアイルランドの話がヒント。月夜の晩に山のてっぺんで動物カルテットがシャバドバにスイングして終われない。人間の子供のコーちゃんが飛び出して終わらせる。聴いていた野うさぎたちが大拍手。絵は柚木沙弥郎さん。柚木さんはこの絵の為にわざわざピットインまでジャズの演奏を見に来てくださった。すごい絵描きさんたちに出会えて、すごい体験ができたのは、ひとえに発案者の福音館の編集者黒住恵子さんのおかげだ。というような話をし出して止まらない楽しいインタビューでありました。 「CDジャーナル」2006年11月号掲載 |
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