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muji . 2008.01 .
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イラストレーション:火取ユーゴ
  山下洋輔の"文字化け日記"
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11月8日  セシル・マクビー(b)、フェローン・アクラフ(ds)が来日し、明日からニューヨーク・トリオのツアー。88年の結成以来、来年で20周年になる。今までで一番長く続いたグループになった。スタジオ・ピットインで新曲のリハーサルの後、鍼の竹村文近先生主催で薬膳中華料理店「歓」で会食。

11月9日 モーション・ブルー・ヨコハマでツアー初日。今日明日の2日間で4ステージ。モーション・ブルーは初めてだが、ベイサイドの赤レンガ倉庫の中にあるお洒落なクラブだ。新コンチェルトのオーケストレーションを頼んでいる挾間美帆も、大好きなクラブだと言って応援に来てくれた。この日演奏した新曲「E-H Theme」は、第三楽章のヒントになる曲なので、終演後意見を聞く。

11月11日  名古屋ブルーノート。去年に続き2度目。終わった後、「ラブリー」の隣の串揚げ屋「久富」で打ち上げ。この日が誕生日のフェローンの友人の歌手ドロシー(と言っても名古屋出身のレッキとした日本人、略してドロちゃんと呼ぶたびにおかしい)が仲間のミュージシャンを連れて駆けつけてくれる。

11月12日  ビルボード・ライブ福岡。ここも初出演のクラブ。この数年、テキストを片時も離さず日本語を勉強し続けているセシルの日本語上達が目覚ましい。ステージで日本語で挨拶してもらうと、客席は大ウケ。九州大学大学院教授の荒木先生から、例によって花束代わりの焼酎それも「伊佐美」の一升瓶を手渡される。九州だなあ。

11月13日 大分ブリック・ブロック。大分港旧フェリー乗り場脇の赤レンガ倉庫の中の店。たまたま同名のオリジナル曲があり、久しぶりにニューヨーク・トリオで演奏する。終演後は、マスターの大津さん、昔のトリオ時代から聞いてくれている松浦夫妻を囲んで、店で打ち上げ。この日で五連チャンが一区切り。さすがにほっとする。

11月15日 舞鶴市政記念館。13年ぶりのニューヨーク・トリオ舞鶴公演。館長の馬場英男さんは、「赤煉瓦倶楽部舞鶴」というグループを主宰する赤レンガ・マニアでもある。13年前に訪れた時は、トリオで赤レンガ・ミュージアムを見学し、馬場さんに「ブリックマン」というニックネームを献上した。最近館内にジャズ・ミュージアムをオープンし、おれのコーナーもある。国立音大作曲科卒業作品の自筆楽譜もあって冷汗ものだ。また時期を合わせて、隣接する市役所のロビーでおれの祖父の山下啓次郎展を開催してくれていた。祖父も明治時代に日本中に巨大な赤レンガ建造物をいくつも建てたが、全部監獄だったので子孫は悩まざるを得ない。当然ここでも「ブリック・ブロック」を演奏。

11月17日  京都RAGで2日間。トリオ結成当初から毎年呼んでもらっており、オーナーの須田夫妻をはじめ、セシル、フェローンにも親しくなった友人が大勢いる。毎年年末に大阪で佐渡裕さんが指揮をしている「一万人の第九」が20周年を迎えるとのことで、開演前に毎日放送特別番組用のインタビューを受ける。数年前にゲストで「ラプソディ」と「カエルの歌」を演奏したことがある。佐渡さんには、最初のコンチェルト「エンカウンター」に引き続き、新コンチェルトの指揮もしてもらうことになっている。終演後の打ち上げには、井上章一、細川周平、マイク・モラスキーという学者連合集結。井上さんとマイクにピアノを弾いてもらった。「おねえさまにもてたい」という動機の井上さんは充分目的を達している。マイクはプロ級だ。

11月18日  奈良県王寺町やわらぎ会館。一昨年来た時に立ち寄ったファミレス「ロイヤル・ホスト」で、フェローンがアルバイトのウェイトレスに親切にしてもらい、「ロイヤル・ホステス」と呼んでコンサートに招待するという典型的バンドマン行為があったのだが、既に辞めてしまっていて今回は招待できなかった。残念。この日から川嶋哲郎(ts)がツアーに合流する予定だったが、直前に大阪で交通事故に遭い、参加ができなくなった。一昨年この会館に頼まれて作曲した「やわらぎ」を川嶋のフルート入りでご披露したかったが、トリオのみで演奏。幸いケガはヒザ骨折のみで、近いうちに現場復帰できると思う。川嶋ファンの皆さん、ご安心下さい。館長の福島さんも参加しているアマチュア吹奏楽団「セント・シンディ・オーケストラ」の皆と打ち上げ。何年か前に、「クルディッシュ・ダンス」や「大きな古時計」をこの吹奏楽団と共演したことがあり、それ以来団員の皆とは友達付き合いだ。

11月20日  東京・草月ホールでツアー・ファイナル。大勢詰めかけてくれ、大いに盛り上がる。会場入り前に、八芳園の中の茶室でアルバムジャケット用の撮影。明日から2日間でレコーディングし、来春20周年記念アルバムとして発表する。乞うご期待。



「CDジャーナル」2008年1月号掲載
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