イラストレーション:火取ユーゴ
第103回 2010.9月
前にも何度も書いたと思うが、テレビのミステリというやつ、見ていらいらしたり爆笑したりに事かかない。もみあって、弾みで倒れて簡単に相手が死ぬ。そのあと大抵の奴が慌てて逃げる。すぐに警察に知らせれば、それ以上ややこしくならないのに。ま、そこで話が終わっては番組にならないからだろうが。また、死体を見つけた奴が、必ず驚きながら近よっていってゆすったり余計なことをする。意味ないでしょ。人が倒れていたらすぐに110番、119番をしましょう。容疑者の写真を見せて「見覚えは?」「あります」「名前は?」「えーと」「***だろ!」と言ってしまう。誘導したら駄目です。思い出すまで一時間でも待ちなさい。「殺したのはあなたですね」のバックは高瀬川。続く告白シーンは山のお寺の釣鐘堂。何故行くのか。しかもどうやって行くか。その間何の話をしているのか。電車で行くのか。タクシーで行くのか。不可解だ。あと同僚女刑事が撃たれたのに、すぐに救急車を呼ばずによろよろ近寄って血だらけになって抱きしめる奴もいる。止血処置もしない。馬鹿ですよ。主人公が車を平気で何処にでも乗り捨てて、人を追っかけたり訪ねたりする。駐車場所が一番大変だという事を無視するな。最後の場面の定番で、崖の上や浜辺に皆が集まるが、どうやって来たのか。タクシーか電車か自家用車か、駐車場はどうする。皆正装しているが何故今日がその日だと分かったのか。犯人が崖から飛び降りようとすると、いきなり現れて「やめなさい!」と叫ぶ刑事はどこから出現するのか。そのあと説得して、自首にしてやるからと、犯人、刑事、関係者たちが皆で歩きだす。遠景の田舎風景になるが、車は何処にも見えない。このあと皆で何時間歩くのか。やれやれ見ているだけで疲れるよ。何? お前そういうものを見ている時間がよくあるな? その暇があったらちゃんとCDジャーナルの原稿を遅れないように書け? ごもっとも。すみません。
サントリーホールでの「スタニスラフ・ブーニン・チャリティ・ガラ・コンサート」に出演。池辺晋一郎氏、八塩圭子さんの司会者陣が登場する前に、まず2台ピアノでバッハ「チェンバロ協奏曲第四番第1楽章」でオープンする。それから司会者登場で開始。リオール・シャンバダール指揮のベルリン交響楽団でエルガーの「威風堂々」、山形由美(fl)と早川りさこ(harp)でビゼーの「アルルの女」第一組曲及びオーケストラと共に「メヌエット」と「ファランドール」。その後に天満敦子(vn)ソロでポルムべスク「望郷のバラード」をやって休憩となった。
休憩後はサプライズその1。ブーニンさんが弾いているイタリアの名器ファツィオリの日本総代理店社長のアレック・ワイル氏はシカゴ生まれのテナー・サックス奏者でもある。山下と出会い頭の即興ブルースをやって満場を驚かせた。そのあと山下ソロで「仙波山」。これは21年前のブーニン・チャリティ・コンサートでも弾き、ご本人と母上がとても喜んでいた曲なので再演した。続いて二台ピアノで山下曲の「エコー・オブ・グレイ」。そのあとに、ブーニンさんの息子の甲斐・セバスチャン君が登場した。カプースティン「二十四の前奏曲作品53から4と5」そして光栄なことに山下のソロ曲「アフター・ブルー」も弾いてくれた。これは以前にブーニン家から依頼されて、挾間美帆に聴音・編曲してもらって渡してあったものだ。このあとはサプライズ2でなんとブーニン親子が2台ピアノでバッハ「主よ、人の望みの喜びよ」を弾いた。この光景と音は場内に深くしみ渡った。そして最後にブーニンさんがショパンのピアノ協奏曲第一番の2楽章、3楽章をオーケストラとやって終演。楽屋でシャンパンを解禁し持ち込みの芋焼酎の水割り共々ワイル氏、甲斐君と飲む。甲斐君のミドルネームのセバスチャンはスタニスラフのヨーロッパ読みだという。二人を支える奥方の栄子さん共々成功を喜びあった。
国立音大のジャズコースで設けている「山下洋輔賞」の第一回受賞者の赤塚謙一がビッグバンドで全てジブリ曲を演奏したCD「ビッグバンド★ジブリ」を出した。バンド名は頭文字をとってAKBBだって。今どき結構な偶然だ。メンバーは全員二十代で、赤塚謙一(leader, tp, arr)、米田裕也、吉田誠次(as)、鈴木悟、山本修平(ts)、宮崎達也(bs)、小澤篤士、田中一徳、田村嘉専、石村奈穂(tp)、大田垣"OTG"正信、半田信英、島田直道、高木絋行(tb)、堤博明(g)、挾間美帆(p)、内田義範(b)、山内陽一朗(ds)。ゲスト・プレイヤーは、安川亜紀(vo)、熊本比呂志(perc)、ルドゥウィグ・ヌニェス(timb)。編曲には羽毛田耕士、野口茜も一曲ずつ加わっている。ほとんどのメンバーと国立音大の学内で会っている。とても良い音なので、是非、皆様にも聴いていただきたいと、半ば強引身内宣伝でございました!