私たちが目指す透析医療とポリシー
私たちは、患者さん、スタッフがともに笑顔でいられる居心地が良い病院づくりを心がけています。
そのためには、患者さんに満足いただけるようなプロ意識の高い病院を目指していきたいと考えています。
この二つの両立はとても難しいことかもしれませんが、そのような病院づくりを心がけることで少しでもqualityの高い病院を目指していければと思っています。
私たちの透析室では「よく食べて、よく透析をする」をモットーに透析医療を勧めています。
一般的に透析患者さんはリンやカリウムが上昇してはいけないために、ある程度の食事制限が必要とされています。
塩分やたんぱく質についても同様です。
しかし近年、透析患者さんの栄養状態が予後(死亡リスク)に大いに関係があることがわかってきました。
また一方で、血清リン値が高いと予後が悪くなることは明らかであることから、栄養状態が良く、かつリンが低い状態が理想的になります。
したがって、大事なことは、良好な検査値を保つことより、患者さん自身が元気でいられることです。
よい透析をするために、われわれの研究室で長年提唱してきました長時間透析を行うことを基本として、
血液流量、ダイアライザーの選択、Online HDF(オンライン血液ろ過透析)、IHDF(間欠補充型血液ろ過透析)など
患者さんそれぞれの状態に適した治療法を選択しています。
チーム医療としての取り組み
当たり前のことですが、医師の力だけでは十分な医療を達成できることはなく、
看護師、臨床工学技士、管理栄養士、薬剤師そして事務方スタッフの協力があってこそ成り立っています。
当院では看護師は個々の患者さんについて、詳細なプロブレムリストを作成し、看護師からみた患者さんの問題点について掘り下げています。
それに加えて、個々の患者さんのフットケアを毎月行い、閉塞性動脈硬化症の早期発見や糖尿病に伴う壊疽を防止しています。
臨床工学技士は従来の透析機器の管理に加え、透析液清浄化のための取り組み、シャント穿刺に加えて、シャントケアのためのエコー検査の技術を習得して、より良い透析に寄与しています。
管理栄養士は詳細な栄養状態の管理表を作成し、「よく食べているか」を詳細に把握し、またやせがある場合には過剰透析になっていないかがよくわかるようにしてくれています。
薬剤師は医師が処方した薬について、薬剤師の目から適切なアドバイスを患者さんにしてくれます。
このような取り組みを定期的な回診で、医師およびスタッフでディスカッションしながら個々の患者さんについて、最適かつ最新の透析療法を提供しています。
一人一人の患者さんに対して、医師、看護師、臨床工学技士、管理栄養士、薬剤師と、多方面からの意見を集約することで、個々の患者さんが最適かつ快適な透析医療を受けられることを目指しています。
われわれが行っている新しい試み ~骨粗鬆症対策~
私の専門分野は腎臓内科、透析ですが、中でも「慢性腎臓病における骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)」を専門としています。
簡単に言うと、リン、カルシウム、副甲状腺ホルモン(PTH)といったミネラルの異常は、透析患者さんの骨のみでなく生命予後に直接的に関与してくるのです。
さらに言うと、透析患者さんの骨の状態を良好に保つことが、健康寿命を延ばすことにつながるわけです。
これまで、透析患者さんの骨についてはPTHが上昇する二次性副甲状腺機能亢進症を中心に考えられることが多く、
「骨粗鬆症」についてはなかなか有効な治療法がないのが日本のみならず世界的にも問題点でした。
われわれはこの骨粗鬆症の問題に対して適正なPTHコントロールを行うとともに、エルデカルシトールや抗RANKL抗体を用いて非常に良好な成績を得られつつあります。
これらの成績をまとめ、全国の透析患者さんにも骨粗鬆症の治療が十分可能だということを広く認められるよう現在、鋭意努力しています。
このような治療をはじめ、少しでも透析患者さんがより良い透析医療を受けられるよう、今後もみんなで力を合わせてがんばっていきたいと思います。