注意障害があると、ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりします。二つのことを同時にしようとすると混乱します。
注意障害は文字通り「注意力が低下すること」ですが、注意力とは集中力のみならず、いくつかのことに同時に注意を向けたり、多くの情報から自分に必要な情報を選択し利用し、処理するなどの能力ということになります。
注意障害には以下のような種類があります。
種類 | 症状 | 対応のポイント |
持続的注意の障害 | 注意力や集中力を持続させて一つのことを続ける、ということができなくなる。疲れやすいために途中で投げ出し、周りからは飽きっぽいという印象を持たれます。 |
こまめに休憩が取れるようなスケジュールを組むようにする。 |
選択的注意の障害 | 多くの情報の中から、今必要な情報だけを選ぶ、という能力が低下し、いろいろなものに反応する。隣の人の作業が気になって、自分のことをせずに隣の人に口出しする、などもこの障害。 |
隣の人と仕切りを作って見えないようにするなど、気が散る原因を取り除く。 |
配分的注意の障害 | いくつかのことに同時に注意を向けながら行動する、という能力が低下する。3人以上で会話をするとか、助手席の人と会話をしながら運転する、ということが難しくなる。 |
なるべく一つずつやるようにする。 |
注意の転換の障害 | ひとつのことに注意を向けているときに、他の別のことに気付いて注意を切り替える、という能力が低下する。パソコンを操作しているときに電話が鳴っても気づかないとか、電話が終わった後も電話のことに注意が行ったままで、なかなかパソコン作業に戻れない。 |
周囲の協力で、注意の転換が必要ない環境を作る。 |
脳を損傷すると、ちょっとしたことでも疲れやすくなってしまうことがあります。
このことを「易疲労性」といいます。
易疲労性は貧血などでも起こることがありますが、高次脳機能障害の場合は脳損傷により脳に原因があって疲れやすくなるものです。
脳は活発に働いて新しいことを学習し、その後一旦学習したことは省エネモードで働いて行動を起こすことができるようになります。それが脳損傷があると、損傷した部分をおぎなうために脳は常に全力で処理をし続けなければならなくなり、疲れやすくなるのです。
周りから見るとサボっているように見えるし、疲れやすさを検査する方法がないので非常に難しい部分です。
注意障害の検査は、視覚性の検査と聴覚性の検査があります。
以下は視覚性の検査です。
注意機能の簡易スクリーニング検査です。ランダムに並んだ数字の中からある数字を抹消します。1文字、2文字、3文字の末梢を3回行って各回の作業量、見落とし率、各回での作業の変化率、間違いの数について検討します。
5分くらいで実施できます。
かなひろいテストは、かなで書かれた単文を読みながら「あ、い、う、え、お」が出てきたら印を付け、同時に文章の意味を理解しているか問うテストで、一度に二つのことを処理する能力を検査します。
次のかな文の意味を読み取りながら、同時に「あ・い・う・え・お」を見つけたら拾いあげて、○をつけて下さい。(制限時間は2分間です) |
用紙にランダムに描かれた1〜25の数字やひらがなを順番に線で結んでいくテストで、Part AとPart Bがあります。
Part Aでは、1から25までの数字を順に結んでいきます。これは選択的注意の評価となります。
Part Bでは、1から25までの数字と、「あ」から「し」までのひらがなを交互に結んでいくもので、これは分配的注意の評価となります。
正常な人はPart AとPart Bにあまり差はありませんが、前頭葉機能障害では大きな差が生じるとされています。
Part T、U、Vがあり、Tは赤、緑、黄、青の4種類の丸の色を答える課題、Uは漢字で書かれた色を答える(漢字を読む)課題、Vは色名の漢字が実際と違う色で書かれていて、色名を言う、という課題です。
かかった時間と間違いの数で評価します。
色に集中して、無関係な文字情報を排除する必要があり、選択的注意の評価として用いられることもあります。
以下に、聴覚性検査を説明します。
ト、ド、ポ、コ、ゴの5種類の似ている音を毎秒1音の速度で5分間聞いてもらいます。例えば「ト」を基準とすると、「ト」のときに合図をしてもらい、正答率で評価します。
各音はランダムに配列されていて、基準の音は1分間で10回、合計50回出現します。
part Tは1秒間隔、Part Uは2秒間隔で1ケタの数字61個を、前の数字と新しく表れた数字を順に足していきます。
注意力のテストとして優れているとされていますが、知能や計算能力の影響を受けます。
注意障害が重度の場合は、周囲の人や物に反応してしまうこともあり、周りに来た人にやたらと声をかけたり、行動を中断してしまったりします。このような時は本人を隔離し、周囲からの刺激の少ない静かな環境で行う必要があるときもあります。
訓練としては一般的に机上の課題訓練が行われます。
例えば持続性注意障害であれば、決まった数字を見つけて消していく末梢課題といった単調な課題を、決まった時間実行してもらいます。
課題の設定として、最初は簡単で短時間でできるものから行い、次第にだんだん複雑で時間がかかるものへと移行していきます。
課題を実行するときは「ゆっくりよく見て」とか「よく見直して」などの声掛けを行ったり、本人による声出しや指差しなどで作業を確認させながら課題を実行させたりします。
関連項目 |
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