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高次脳機能障害での記憶障害。エピソード記憶、意味記憶の障害

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記憶障害とは

記憶障害とは物の置き場所を忘れたり、新しいできごとを覚えていられなくなったりすることです。そのために何度でも同じことを繰り返して質問したりします。

【このページの目次】

1.記憶の分類

記憶とは
記銘(一旦見たり聞いたりしたことを覚え)、
保持
(大事なことは貯めておき)、
想起
(必要なときにまた思い出す)
という一連の現象です

記憶にはいくつかの種類があり、以下のように分けられます。

陳述記憶

  • 陳述記憶は、記憶を具体的に言語やイメージで表現できる記憶で、自分が時間的、空間的に経験した出来事の記憶であるエピソード記憶と、学習することで獲得した知識である意味記憶に分けられます。

非陳述記憶

  • 非陳述記憶は手続き記憶のことであり、作業や技能の工程を体を使って覚えた知識です。手続き記憶は、比較的脳損傷の影響を受けにくいと言われています。


(時間経過での分類は)
即時記憶
近時記憶
遠隔記憶

があります。

電話番号などを復唱させるのは即時記憶の評価です。
三宅式記銘力検査など、すこし間に別のことをしてから再生させるのは近似記憶の評価です。
若いころの学校や生活史を聞くのは遠隔記憶の評価です。


2.記憶障害とは

日常生活で記憶障害として問題になるのは、陳述記憶であるエピソード記憶と意味記憶の障害です。これを健忘といいます。

その人が行ったことや、経験したことを忘れてしまうことです。

外傷などの脳損傷では、しばしば健忘が目立ちます。
健忘がどの期間に生じているかで、前向性健忘、逆向性健忘などの言葉を使って分けています。

前向性健忘は発症、受傷以後の出来事が思い出せなくなる場合で、最近のこと、症状が重い場合は数十秒前のことでも思い出せなくなります。

逆向性健忘は発症、受傷以前の出来事を思い出せなくなる場合で、その数分、数時間前、数年前に渡ることもあります。

脳損傷によって両方同時に起こることも多いのですが、記憶障害の患者には前向性健忘が最も多くみられる症状です。


3.作話

記憶障害が重度のときには、実際に体験していない出来事などを作ってしまう「作話」を起こすことがあります。周りの人の話や見たことなどの外的な刺激に影響され、過去に体験した自分の記憶の断片を修復して、話が作り出されます

作話は内容がよく変動し、
長引くことは無く、いわゆる精神疾患の妄想とは異なります

対応のポイントは、「その話は違う」などと真っ向から否定すると逆効果ですから、軽く話を受けて「はい。そうですね。ところで・・・」と、話をそらし、作話について問いかけたり付き合ったりしないことです。自分の家族が作話をするようであれば、比較的親しい周りの人たちにも、作話をするということを伝えておくことも、場合によっては必要です。


4.作動記憶(ワーキングメモリ)の障害

話しているうちにどんどん話が横道にそれていき「何の話をしていたんだっけ?」ということが多いばあい、作動記憶の障害の可能性があります。

たとえば「今日の夕飯は何にしようか」という話をしていたとしましょう。

Aさんが「今日はシチューが食べたい」と言ったとして、それを聞いたBさんはそのことをいったん記憶したうえで
「それよりも今日は外食したい」というでしょう。

それに対してAさんは
「じゃあシチューもパスタも食べられるお店に行こうか」などと言い、お互い相手の話を理解しながらコミュニケーションをとっていきます。

このように一時的に会話の内容を記憶して、それを更新し続けることを
作動記憶と呼んでいます。この作動記憶に障害があると、話が横道にそれやすくなったり、行為の途中で何をしていたかが分からなくなるということが起こります。

対応のポイントは、話が横道にそれていることに周囲の人が気づいたら「何の話をしていたんだっけ?」などと話を本筋に戻してあげるとよいでしょう。

また、何かの作業や行為の途中で休憩などを取るときは、「次はここからスタート」などと作業工程や行動をメモに残すとよいと思います。

確認の検査などは、こちらをご覧ください → 「記憶障害の検査

5.記憶障害の支援とリハビリテーション

記憶というのは、人間が日常生活、社会生活をおくる上で欠かせないことです。低下した場合は何らかの代替手段を含めて、その能力低下を補う方法を新たに習得させ、場合によっては他者の介入などを手配することが必要となります。

ですから記憶障害のリハビリテーションの目標は、低下した記憶力の改善に加え、今後の生活において混乱なくうまく適応していく手段を獲得させることといえます。

訓練方法としては、PQRST法誤りをさせない学習法間隔伸張法、などがよく使われます。

PQRST法

P(Previwe):ざっと全体を見る、あるいは読む
Q(Question):自分で話題への質問を作る
R(Read):細かくしっかり読む
S(State):質問に答える
T(Test):答え合わせをしてチェックする
この5つの過程を通して内容の理解・把握をより強固にしようとする方法です。

誤りをさせない学習法

周囲の人は本人によく思い出させようとして「がんばって思い出して」とがんばらせます。しかしこのような場合は、ある程度がんばらせても思い出せないときは、正しい答えを教える方が良いと考えられています。

記憶障害がある人は、誤って「思い出した」事実でないことを、新たに記憶として定着する場合もあるので、誤りを正して覚えてもらうようにする学習が大切です。

間隔伸張法

覚えてもらいたことを、徐々に時間間隔を伸ばしていき、繰り返し思い出させる練習方法です。

例えば「家に帰ったら下駄箱の上に鍵を置く」などの習慣を覚えてもらい、2分後、4分後、6分後などと徐々に覚えたことを思い出す間隔を伸ばしていきます。

心理面での配慮

記憶障害のある方の中には、自分が覚えられないということに困惑し、自信をなくしたり不安を覚えている人もいます。

記憶障害は完治することは難しいといっても、一定の生活環境で顔見知りになった人は覚えることができたり、色々な手順は繰り返すうちにできるようになることはたくさんあります。

できていることをちゃんと挙げて、安心させるなど心理的な面への配慮をしていくことも大切です。


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