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橋本行政書士事務所(交通事故サポートセンター)
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交通事故の後遺障害を考える場合、「加重」という認定方法があります。これは、教科書的には
「既に身体障害を有していた者が新たな災害により、同一部位に身体障害の程度を加重したもの」
であり、その場合の損害額は
「当該後遺障害に該当する金額から、既にあった後遺障害の該当する金額に応じた金額を控除した金額」
ということになっています。
例えば、既に片方の下肢を足関節(足首のことです)から失っていた人(5級)が、その後事故で同じ方の足をひざ関節から失ってしまった(4級)場合、「この人の後遺障害は4級ですが、もともと5級の障害があったので、その分は差し引いて考えます」というものです。
自賠責の限度額で言うと、4級は1,889万円ですが、ここから5級の1,574万円を差し引いた「315万円」が支払額ということになります。
この場合、「加重4級5号」「既存障害5級5号」などと記載されます。
ひざ関節から切断されてしまうような事故に遭った場合、もともと足関節から先を失っていようがいまいが「ひざ関節から切断」されるという結果は変わらないような気がしますよね。
ちょっと腑に落ちません。
私が以前お手伝いさせていただいた案件で、頭部外傷による頭蓋骨骨折、外傷性くも膜下出血、などの重傷を負い、高次脳機能障害と診断された方がいらっしゃいました。
その方の高次脳機能障害は交通事故による頭部外傷が原因なのですが、実は事故に遭う前から障害をお持ちで、知的障害、運動発達障害、てんかん、など、比較的重い症状があり、言葉も話せない状態でした。
つまり「痛い」とも言えないのです。事故に遭った後も、ある程度怪我が回復してからも。
この方の後遺障害の申請はなかなか困難が伴いましたが、ご家族と協力しながらなんとか検査結果や日常生活状況報告などの書類をそろえ、申請した結果は
「加重2級1号」「既存障害3級3号」
となりました。
認定結果としては、ご家族も私も、妥当だろうなと納得できる範囲でした。
現在の状態が2級程度、事故前の状態もまあだいたい3級程度とされても仕方ないかな、ということです。
この結果は、「既に足首から先を失っている人が、事故でひざから先を失った」場合に比べても腑に落ちました。
ところで歯牙障害(歯の後遺障害)の場合は、少し趣(おもむき)が違います。
歯牙障害の内容は、「現実に喪失し、または歯冠部の大部分(見える部分の4分の3以上)を欠損して補綴(ほてつ)した歯牙」が、「3本以上なら14級2号」とか「5本以上なら13級5号」、「7本以上なら12級3号」などと決められています。
喪失や大部分の欠損が確認できれば、実際に補綴をしていなくても認定の対象となります。
そして上記の下肢の欠損や高次脳機能障害の場合のように、歯牙障害の場合も既存障害という考え方があり、
「喪失又は大部分が欠損していて補綴された歯牙(補綴はしていなくてもよい)が事故前に既にあった」場合、それは既存障害とされます。
歯の場合、代表的な既存障害は「う蝕症(むし歯)」です。う蝕第4度(C4)の段階(つまりとてもひどいむし歯)は、歯冠部の大部分を欠損していた歯、とみなされるのです。
具体的に言うと、ひどいむし歯が3本あった人が事故でさらに4本失った場合、合計7本となり
「加重12級3号」「既存障害14級2号」と認定されます。
自賠責では
224万円-75万円=149万円
が認定額です。
さらには、ひどいむし歯が2本あった人が事故でさらに1本失った場合、合計3本なので、加重で14級ですが既存障害は非該当(後遺障害に達していない)ですから、純粋な「14級2号」です。
既存障害分は控除されません。
むし歯って、ちょっと自分のせいのような気もします・・・。
そして、事故で歯を1本失ったことはとっても気の毒ですが、でも普通なら「後遺障害ナシ」なのにたまたまむし歯が2本あったことで後遺障害が認定されるのって、言葉は悪いけどちょっとお得な気がしませんか?。
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