本文へスキップ

頚椎・腰椎周辺の疾患について(椎間板ヘルニア、神経根症、脊柱管狭窄症など)

TEL.03-5393-5133

〒177-0042 東京都練馬区下石神井1-8-27-305
橋本行政書士事務所(交通事故サポートセンター)

トップページ > 後遺障害等級を取ろう > 脊椎と脊髄の疾患について

頚椎・腰椎(脊椎)と脊髄の疾患について

頚椎・腰椎の捻挫や脊柱、脊髄の疾患と後遺障害について、説明していきます。


頚椎症性神経根症

車に乗っていて後から追突されると、前を向いて座っている人は初めは後方に、次いで前方に運動を強制されます。このとき首(頚椎)は、初めは過伸展され、次に過屈曲されて元に戻ります

頚椎頚椎は椎骨と呼ぶ骨が7つ、間に椎間板を挟んで縦に並んで構成され、その前後を靭帯が縦に走って覆い、骨をつなげています。

その頚椎の中が筒状になっており、その筒の中をとおっている脊髄から「
神経根」がそれぞれの椎骨の隙間から左右に1対ずつ出て、身体の末梢に伸びています

追突を受けたときの過伸展、過屈曲によって
椎間が非常に狭くなり、そこから出ている神経根が挟まれたようになることで、損傷します。


症状

損傷した神経根が伸びている上肢の「支配領域」に疼痛やしびれ、筋力低下、腱反射の低下などの症状が現れます。

スパーリング・ジャクソンテスト例えば
C6/C7の神経根(=C7の神経根)が損傷していれば上腕三頭筋に筋力低下や筋萎縮がみられ、中指あたりにしびれが生じます。

確認の検査

神経根が圧迫されて神経根症状となっているかどうかについては、誘発テスト(スパーリングテスト、ジャクソンテスト)を行って確認します。

その他に腱反射、徒手筋力テスト、知覚テスト等によって、責任高位(圧迫を受けている神経根の位置)を推察し、MRIの画像所見と整合させて確認します。

損傷されている神経根と支配領域、検査結果の関係はこちら↓で説明しています。


↑このページの先頭へ

頚椎椎間板ヘルニア

ヘルニアとは

椎間板

頚椎は7つの椎骨という骨が、それぞれ間にクッションである椎間板を挟んで積み上げられて形成されています。

この椎間板は、髄核というゲル状の柔らかい物質を線維輪という殻が囲っている状態ですが、この線維輪の一部が断裂して髄核が外に飛び出してしまった(突出した)状態が「ヘルニア」です。
一般的には加齢現象ですが、強い外傷が加わることで起こることもあります。

C5/C6(5番目と6番目の頚椎骨の間)とC6/C7によく発生し、突出の方向は後方か斜め後方ですが、突出の仕方で症状が変わってきます。


症状

神経根症状

  • ヘルニア斜め後方に突出した場合は、神経根症状となります。神経根は脊髄から枝分かれした部分で、これが圧迫された状態となり、支配領域の上肢の部分に痛みやしびれなどの症状が現れます。

    例えば
    C5/C6の突出なら、肘から先の親指側にしびれが生じたり、上腕二頭筋の筋委縮や反射が低下したり痛みが出たりします。

脊髄症状

  • ヘルニアが正中(真後ろ)に突出して脊髄を圧迫すると、脊髄症状を発症します。この場合は両上肢や両下肢に知覚障害などの症状が現れ、場合によっては歩行障害、筋委縮、膀胱・直腸障害など、深刻な状態となります。

    このどちらかではなく両者の合併が起こることもあるので、神経学的検査を慎重に行って画像所見と照らし合わせて確認していきます。


確認の検査

神経根が圧迫されて神経根症状となっているかどうかについては、誘発テスト(スパーリングテスト、ジャクソンテスト)を行って確認します。

その他に腱反射、徒手筋力テスト、知覚テスト等によって、責任高位(圧迫を受けている神経根の位置)を推察し、MRIの画像所見と整合させて確認します。
このあたりは頚椎症性神経根性と同様です。

例えば画像で圧迫がみられる位置での神経根症状の場合、
「上肢の支配領域に深部腱反射で減弱が見られ、」
「徒手筋力テストでも同様の支配領域に低下がみられ、」
「なおかつその検査所見や疼痛などの自覚症状が左右どちらかにかたよっている(左右差がある)」

といった結果が見られます。

脊髄本体が圧迫されている脊髄症状であれば、先ほどの深部腱反射では減弱ではなく亢進となり、ホフマン反射、トレムナー反射などの病的反射が表れ、疼痛やしびれなどは両方の上肢に表れてきます。

→ 必要な検査や支配領域などの説明はこちら(脊髄損傷について)


画像検査

  • 単純X線写真は、ヘルニアの確認はできませんが、頚椎のアライメント(配列の状態)異常、骨棘の有無、脊柱管狭窄、後縦靭帯骨化症の存在などを調べます。

    MRIは最も重要な検査で、脊髄の変形や、T1,T2強調画像での信号変化から組織の変化などが確認でき、神経学的検査所見の高位(位置)と一致することで、ほぼ診断が確定されます。

↑このページの先頭へ

脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症とは

脊椎(脊柱)を構成する各椎骨は、錐体の後方に椎孔があり、椎骨が連なって(重なって)一本の脊柱を構成すると、椎孔はトンネル状の脊柱管となります。
脊柱管には脊髄がとおっていますが、この脊柱管が狭くなって神経を圧迫した状態が脊柱管狭窄症です。

脊柱管狭窄症は老化現象の一つと考えられていますが、その原因は、椎骨がすり減って棘のような突起(骨棘)ができて脊髄を圧迫したり、脊柱管を脊髄と並んで通っている靭帯が厚くなったり(肥厚(ひこう)といいます)、椎間板が薄くなったために脊柱管が変形して狭くなるなど、様々です。

ですから脊柱管狭窄症自体は交通事故(外傷)が原因でなるものではありませんが、脊柱管狭窄症であってもそれまで症状が無かった人が、事故の怪我をきっかけに神経症状を発症すれば、これは神経症状として後遺障害の対象となります。


症状

主な症状は、神経のどの部分が圧迫されているかで変わってきます。
神経の束である
脊髄や馬尾が圧迫されている場合は脊髄症神経根が圧迫されている場合は神経根症を呈しますが、その両方が合併することもあります。

脊髄症の場合はしびれや痛みのほか、腰椎の脊柱管狭窄症の場合は間欠跛行や排尿障害などに表れます。間欠跛行とは、下肢のしびれや痛みなどのため数分しか歩けず、前かがみになって休憩すると歩けるけどまた数分で休憩が必要になる、といった症状です。

そして脊髄症の場合は、多くのケースで左右とも症状が表れます。
脊柱管狭窄症の
原因が靭帯の肥厚である場合は、脊髄症になることが多いです。

神経根症の場合は、神経根が圧迫されているため、支配領域にしびれなどが表れます。多くのケースで左右どちらかにかたよって起こります。
脊柱管狭窄症の原因が
骨棘や椎間板の変性(ヘルニアなど)の場合は神経根症が多いです。


確認の検査

脊柱管が狭窄していることは、レントゲンの画像検査で分かります。

また、MRIは骨組織だけでなく椎間板、黄色靭帯など軟部組織像や硬膜管、神経根などの神経組織も明瞭に映し出されますので、大変有効です。
それと神経学的検査を合わせて行うことで、高位(位置)が特定されます。

認定される後遺障害等級は、実質的には12級13号か14級9号のどちらかです。


↑このページの先頭へ

中心性頚髄損傷

中心性頚髄損傷とは

もともと脊柱管(脊髄の通り道)が狭い人が、外から強い力を受けて頚部を過伸展、つまり後ろ側に強く伸ばされると、「中心性頚髄損傷」を発症することがあります。

中心性頚髄損傷の特徴は、
X線上明らかな脱臼や骨折が無いのに脊髄損傷の症状を呈し、特に下肢よりも上肢に強い運動麻痺が起こることです。

そして回復する時も、下肢から先に、その後上肢が回復していきます。歩行機能は回復しても、指先のしびれとか動かしにくい、という症状は最後まで残ることがあります。


症状

脳から脊柱管をとおって伸びている脊髄は、中身が詰まったホースのようなものですが、これを輪切りにした断面で考えます。そうすると脊髄の中では、上肢に行く神経線維は中心よりに存在し、下肢に行く神経線維は外側よりに配置されている、と考えられています。

そして脊髄は中心の方が弱くて痛みやすいとされていて、骨折や脱臼を伴わない「非骨傷性頚髄損傷」の場合は外側より中心よりに損傷が大きい中心性頚髄損傷となることが多く、その結果下肢よりも上肢に強く麻痺の症状が現れます。

治療は、主に安静臥床や頚椎カラー固定をした保存療法です。

頚椎症やOPLL(後縦靭帯骨化症)などによって脊髄が圧迫されている場合には除圧のための手術をすることもあります。


確認の検査

脊髄損傷なので、上肢の麻痺の具合によって1級から12級まで認定される可能性があります。

画像検査は、他の傷病の確認のため単純X線画像を撮ります。中心性頚髄損傷はX線画像では異常はありませんが、麻痺の症状が強い場合はMRI診断において、
T1強調で低信号(低輝度)、T2強調で高信号(高輝度)が確認できます。

MRI画像には組織の違いを見るため、T1強調画像とT2強調画像があります。
T1強調画像とは体内の脂肪分を強調して撮影する方法で、脂肪分が白く(高輝度・高信号)見えます。水や液性成分は黒く見えます。体の解剖学的な構造が見やすく、椎間板の突出などの確認に有意です。

T2強調画像とは体内の水分を強調して撮影する方法で、水分や液性成分で白く(高輝度・高信号)見えます。脳梗塞や浮腫など、病変は水分を多く含みますので、病変の存在を確認するのに有意と言われています。


↑このページの先頭へ

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは

椎間板

人の体は、椎骨という骨がいくつも重なって脊柱(背骨)を形成していますが、その椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板は、円盤のような形をしています。

中心には弾力性のあるゲル状の髄核があり、その周りをコラーゲンでできた固い線維が「線維輪」として取り囲んでいます。これは
再生できない臓器す。

加齢などにより髄核が硬くなると、周りの線維輪にひびが入り始め、このヒビから髄核の一部や線維輪が飛び出して
神経根や脊髄(馬尾)を圧迫した状態が椎間板ヘルニアです。

椎間板ヘルニアは脊柱のどこでも起こる可能性がありますが、特に腰椎椎間板ヘルニアとしてL4/L5(腰椎の4番目と5番目の間)とL5/S1(腰椎5番目と仙椎の間)で起こることが非常に多くなっています。この部分で神経根や馬尾を圧迫すると、坐骨神経痛(下肢痛)が出現します。


症状

腰椎椎間板ヘルニアの症状は、腰痛と下肢痛が表れますが、腰痛を伴わない場合もあります。

椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症が合併していることも少なくなく、そのような場合は間欠跛行や膀胱・直腸障害が表れることもあります。

間欠跛行とは、下肢のしびれや痛みなどのため数分しか歩けず、前かがみになって休憩すると歩けるけどまた数分で休憩が必要になる、といった症状です。


確認の検査

ラセーグ神経学的所見

  • どの椎間板にヘルニアが発生したかによって圧迫される神経根が異なりますので、筋力の検査や腱反射を行うことが診断に有効です。

    まずはSLRテストとFNSテストを行います。中下位腰椎のヘルニアではSLRテストが、上位腰椎ではFNSテストが陽性となります。

    筋力や反射については、例えば最も多いL4/L5ヘルニアではL5神経根障害により下腿外側から足背の知覚障害と前脛骨筋や長母指伸筋などの筋力低下が生じます。

    L5/S1ヘルニアではS1神経根障害により足背外側から足底の知覚障害、長母趾屈筋の筋力低下が生じますので、それらを筋力テストで確認します。

    → 必要な検査や支配領域などの説明はこちら

画像検査

  • 単純X線では椎間板は映らないのですが、他の病気でないことを確認するために行います。

    髄核がどのように飛び出しているか、また椎間板がどのように変形しているか、詳細に調べるには、CT検査やMRI検査が有効です。

    MRIでは、T1,T2強調画像で、矢状面と水平面で撮影します。
    特にT2強調画像は椎間板の水分量を反映しますので、椎間板が変性していると他の椎間板に比べて低信号として暗く映り 、突出している様子がよく分かります。

    MRIでヘルニアの突出が明らかで、神経学的所見と一致すれば12級13号が認定されますが、それ以外は14級9号となります。

↑このページの先頭へ

腰椎脱臼骨折と腰椎分離すべり症

腰椎脱臼骨折は事故受傷を原因とした傷病名ですが、腰椎分離症、腰椎分離すべり症は交通事故外傷の傷病名ではありません。


腰椎分離症・分離すべり症

腰椎分離症とは、脊椎骨の後方にある椎弓という、上下の脊椎をつないでいる部分が分離しているものです。

分離症になると、脊椎が不安定になって椎間板が痛みやすくなり、椎骨がずれて「すべり」が生じることがあります。これが腰椎分離すべり症です。

分離症、分離すべり症は第5腰椎に好発します。
分離症患者の10~20%が分離すべり症に移行します。

腰椎分離症の原因は、学童期、思春期のスポーツ活動による疲労骨折と考えられています。分離すべり症は怪我ではないので、交通事故によって発生したものとは考えにくく、事故前からあった疾病だと考えられます。


腰椎脱臼骨折

それに対して、同じように椎骨がずれている状態でも、交通事故の外傷による衝撃で椎間関節が外れて、あるいは関節突起間部を骨折して、ずれてしまったものを腰椎脱臼、腰椎脱臼骨折といいます。

もともと持っていた疾患である「腰椎分離すべり症」か、交通事故が原因の「腰椎脱臼骨折」なのかは、医師は画像を見ればわかりますので、傷病名として「腰椎分離すべり症」と書かれた場合は、現在の症状はすべり症に起因すると医師が考えている、ということになります。

ただ、分離症やすべり症は、
潜在的に存在していて症状が出てこないこともあり、このような人が、事故をきっかけに症状が発症することもあります

その様な場合には、後遺障害等級14級9号や12級13号、場合によっては11級7号が認定されますが、すべり症が「もともと持っていた疾患」として、損害賠償では素因減額されています。


↑このページの先頭へ

胸腰椎の圧迫骨折・破裂骨折

胸腰椎の圧迫骨折と破裂骨折とは

事故の衝撃で転倒したりしりもちをついたり、あるいは車体が体にぶつかったりして、脊椎(背骨)に衝撃を受けることがあります。

脊椎の骨折は、椎体(脊柱を構成するそれぞれの骨)が上下の衝撃や過屈曲による圧迫を受けて骨折した状態で、骨折の仕方で圧迫骨折や破裂骨折となります。

圧迫骨折は、脊椎の前部(体の前の方)の損傷で、脊椎の過屈曲により、椎体がクサビ状につぶれる状態です。脊椎の中部(脊柱管付近)が損傷されないため、深刻な麻痺症状は起こりませんが、軽度の神経症状を伴います。

破裂骨折は、脊椎に垂直方向の力(軸圧)がかかって、脊柱の前部(体の前の方)と中部(脊柱管付近)に損傷が生じるタイプです。破裂した骨片は脊柱管内に入り込むので脊髄を圧迫し、深刻な神経症状が起こることがあります。

どちらも、胸腰椎移行部(Th11~L2)に好発します。


病状

被害者(患者)の症状としては
①受傷部位における局所症状 と
②神経症状
が見られます。

局所症状は、脊椎損傷を受けるほどの衝撃ですから、受傷部位に叩打痛(こうだつう)や圧痛、場合によっては血腫や変形などの症状が認められます。

神経症状は、損傷高位(脊椎の場所)によって神経症状が異なりますが、胸腰椎移行部の破裂骨折では、下肢に麻痺を生じることがあります。


確認の検査

単純X線

  • 単純X線写真で、椎骨の圧迫骨折、破裂骨折が確認できます。2方向撮影を行い、側方へのすべりや前後方向へのずれなども確認します。

CT

  • CTは脊柱管内のみならず、脊椎の前、中、後部の損傷状態を詳細に抽出できます。

    破裂骨折で脊柱管内に骨片が入った場合、その状態の把握や、椎弓など椎体後方部分の骨折の判定にもきわめて有用で、脊椎外傷の診断には決め手となる検査です。

治療

脊椎損傷の治療の目的は、脊柱支持性の獲得や、圧迫された神経組織の除圧、脱臼・変形の整復および固定です。
保存療法か手術療法かは損傷の仕方や脊椎不安定性の有無、神経障害の程度などを考慮して決めていきます。

圧迫骨折や、安定性の(神経症状を伴わない)破裂骨折の一部は、保存療法の適応となります。
外固定が必要で、体幹ギプス固定など、胸腰椎装具が使われます。

脊髄や神経根が圧迫された、不安定性の破裂骨折の場合は、手術の適応となり、前方除圧兼固定術、後方除圧兼固定術、前後合併手術のいずれかの方法で行うことになります。


後遺障害について

脊柱損傷に基づく後遺障害は、脊柱の運動障害(可動域制限)や脊柱変形などが考えられます。

判定基準はこちら

→ 脊柱の変形障害、運動障害の後遺障害等級認定基準

6級と8級と11級のいずれかですが、脊柱の圧迫骨折、破裂骨折は多くの場合で椎体1個の骨折のため、ほとんどは11級7号となっています。

8級は2個以上の椎体が損傷したことが必要条件になっていますので、2個以上の骨折があった場合には、その他の条件を満たすことで8級2号に該当する可能性もあります。


↑このページの先頭へ

関連項目

問合せフォーム


このページの先頭へ