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関節可動域制限・測定と後遺障害等級

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橋本行政書士事務所(交通事故サポートセンター)

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関節可動域(可動域制限)について

こちらでは後遺障害と関節可動域の関係などについて説明しています。

【このページの目次】

1.関節の機能障害と可動域

関節可動域関節の機能障害(運動障害)での後遺障害等級はは、関節可動域制限(関節があまり曲がらなくなっている)の程度によって、決められます

例えば上肢の3大関節(肩、腕、手首)や下肢の3大関節(股関節、膝、足首)の機能障害が後遺障害の対象となる場合、その関節の可動域を測定して、

左右で障害が残っていない方の関節の可動域に比べて、障害が残っている方の関節の可動域がどの程度制限されているか可動域制限=あまり曲がらなくなること)
によって、以下のように等級が決まってきます。

(左右の)怪我をした方の関節の可動域が怪我をしていない方に比べて

1/2以下なら『著しい機能障害』として10級

3/4以下なら『(単なる)機能障害』として12級
などです。

→ 左右とも障害が残っている場合は!?(参考可動域について)

ただし前提として「事故により関節の動きが制限される原因となる器質的損傷(
関節部分の骨折後の癒合不良、関節周辺組織の変性による関節拘縮、神経の損傷など)が生じている」ことが必要です。

関節可動域制限(関節が曲がりにくくなること)があったとしても、それだけで後遺障害として認められるわけではありません

その可動域制限が後遺障害として認められるためには、曲がりにくくなったその関節自体の破壊や強直、関節外の軟部組織の変化や神経麻痺といった可動域制限の医学的原因を、画像診断や検査結果で明らかにする必要があります。

事故での傷害が関節付近の骨折で、症状固定時にも画像でゆ合不全や軟部組織の変化などが確認できれば可動域制限の原因とみなされますが、そう簡単ではない場合もあります。

可動域制限の医学的原因が明らかとならない場合には、可動域制限自体は後遺障害として評価されず、痛みや痺れといった神経症状についてのみが後遺障害とされることにより、賠償額がかなり低くなるということもあり得ます。

→ 【関連項目】12級7号(機能障害)と12級13号(神経症状)で賠償に差が出るのか?

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2.関節可動域が制限される原因

交通事故外傷後の可動域制限の原因は、

①骨組織(関節部の骨棘や軟骨障害、異所性骨化など)や軟部組織(筋肉の損傷、靭帯損傷、関節包の損傷)などの器質的変化が原因となるもの

②神経麻痺が原因となるもの
があります。

神経麻痺は、上肢では
腕神経叢麻痺(わんしんけいそうまひ)
尺骨神経麻痺(しゃっこつへんけいまひ)
橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)
正中神経麻痺(せいちゅうしんけいまひ)

下肢では
腓骨神経麻痺

などが考えられます。

いずれも関節可動域の測定は、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会により決定された「関節可動域表示ならびに測定法」に基づいて、「角度計」を使用して5度刻みで測定することになっています。

ですが現実的には、角度計を使わずに目測や感覚で測定して角度を記載されるということも結構ありますし、他動の測定では本人(患者)が痛がっているにもかかわらず関節を強く曲げられるとがあります。

関節可動域は、痛くても無理矢理曲げれば「曲がる」というわけではありませんし、目測で5度違っていたら賠償額で1千万円以上違ってくるということも珍しいことではありません。

ですから関節可動域の測定については、可能であればそのようなお話を医師とできるぐらい、信頼関係を築いておきたいところです。

上肢の外傷の種類や後遺障害について、こちらで詳しく説明しています。

 → 【関連項目】
   上肢の外傷・種類と後遺障害


ーーーーーーもっと詳しくーーーーーー

関節拘縮で機能障害は取れるのか(関節の強直、拘縮、器質的損傷とは)

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→ こちらからメールか電話で相談する (相談方法の選択)

3.主要運動と参考運動の意義

可動域とは、何の角度か?ということですが、これは「主要運動」と「参考運動」を測ることになっています。場合によっては主要運動だけでも構いません。

上肢・下肢(手指・足指を除く)の主要運動と参考運動は、以下のとおりです。

部位 主要運動 参考運動
肩関節 ・屈曲
・外転-内転
・伸展
肘関節 ・屈曲-伸展
手関節 ・屈曲-伸展 橈屈-尺屈
前腕 ・回内-回外
股関節 ・屈曲-伸展
・外転-内転
・外旋-内旋
膝関節 ・屈曲-伸展
足関節 ・屈曲-伸展

→ 上肢の機能障害のチェックポイント

→ 下肢の機能障害のチェックポイント

主要運動とは、「各関節における日常の動作にとって最も重要なものをいう」とされています。
例えば肩関節なら

屈曲
(前方拳上。気を付けの状態から肘と手首を伸ばしたまま腕を前方に上げ、そのまま天井まで180度上げていく)
外転
(側方拳上。気を付けの状態から肘と手首を伸ばしたまま腕を真横に向かって上げ、そのまま天井まで180度上げていく)

の二つです。
そして
参考運動とは、日常の動作で主要運動ほど重要でない(と考えられている)運動です。
肩関節で言うと

伸展
(後方拳上。気を付けの状態から、腕を後方に上げる)

です。

現在の取り扱いでは、後遺障害等級が認定される要件としては、例えば

  • 「著しい機能障害」の場合は主要運動二つのうちどちらかが1/2以下に制限されていればよい
  • 「(単なる)機能障害」の場合は主要運動のうちどちらかが3/4以下に制限されていればよい


ということになっています。
つまり
後遺障害等級は、主要運動の可動域で決まる、ということなのです。
ではなぜ参考運動があるのか。

参考運動は、以下のような場合に参考にされます。

「等級認定は原則として主要運動により判断されるが、主要運動の制限が等級評価の対象とされる数値(1/2とか3/4のことです)をわずかに上回る場合は、参考運動の1つについて可動域角度が1/2または3/4以下に制限されていれば等級認定をする」

ということです。 「わずかに上回る」のわずかとは、原則として5度ですが、肩関節、手関節(手首)、股関節の屈曲・伸展は10度ということになっています。

ですから「無意味だ」なんて思わずに、是非とも参考運動も測ってもらうようにしましょう。

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4.参考可動域について

上では、上肢、下肢の関節の機能障害の程度を確認する方法は、左右のうち健側(障害が残っていない方)の関節可動域と患側(障害が残っている方)の関節可動域を比較する、という説明をしていますが、それでは両上肢(または両下肢)ともに障害が残った場合や、そもそも左右が無い脊柱に可動域に障害が残っている場合、どのように可動域を評価するのでしょうか。

健側と患側の比較ができないような場合は、参考可動域と比較します。参考可動域とは、正常な人の関節可動域の、平均値だと思ってください。

両上肢、両下肢ともに障害が残った場合や脊柱の障害が残った場合の可動域の評価は、参考可動域と比較して、「1/2以下なら10級」とか「1/2を超えて3/4以下なら12級」などと評価されることになります。

各部位、運動についての参考可動域は、以下のとおりです。


1.脊柱

部位名 運動方向 参考可動域角度
頚部 屈曲(前屈) 60
伸展(後屈) 50
回旋(右) 60
回旋(左) 60
側屈(右) 50
側屈(左) 50
胸腰部 屈曲(前屈) 45
伸展(後屈) 30
右回旋 40
左回旋 40
右側屈 50
左側屈 50

2.上肢
部位名 運動方向 参考可動域角度
屈曲(前方挙上) 180
伸展(後方挙上) 50
外転(側方挙上) 180
内転 0
外旋 60
内旋 80
屈曲 145
伸展 5
前腕 回内 90
回外 90
屈曲(掌屈) 90
伸展(背屈) 70
橈屈 25
尺屈 55

3.手指
部位名 運動方向 参考可動域角度
母指 橈側外転 60
掌側外転 90
屈曲(MP) 60
伸展(MP) 10
屈曲(IP) 80
伸展(IP) 10
屈曲(MCP) 90
伸展(MCP) 45
屈曲(PIP) 100
伸展(PIP) 0
屈曲(DIP) 80
伸展(DIP) 0
※MCP:中手指節間関節、PIP:近位指節間関節
 IP:指節間関節、DIP:遠位指節間関節


3.下肢
部位名 運動方向 参考可動域角度
屈曲 125
伸展 15
外転 45
内転 20
外旋 45
内旋 45
屈曲 130
伸展 0
屈曲(底屈) 45
伸展(背屈) 20

4.足指
部位名 運動方向 参考可動域角度
母指 屈曲(MTP) 35
伸展(MTP) 60
屈曲(IP) 60
伸展(IP) 0
足指 屈曲(MTP) 35
伸展(MTP) 40
屈曲(PIP) 35
伸展(PIP) 0
屈曲(DIP) 50
伸展(DIP) 0
※MTP:中足指節関節

関連項目

~コラム~

可動域制限があるのに等級が認められない?

後遺障害診断書に記載された関節可動域の他動値が障害認定の基準を満たしているにもかかわらず(例えばひざ関節の「屈曲/伸展」の他動角度が健側に比べて患側が3/4以下に制限されているのに)、自賠責保険(自賠責損害調査事務所)が非該当と認定することがあります

これは医師による可動域測定値の信用性を認めない、と判断されたことになります。
調査事務所がそう考える理由は、以下の二点だと思われます。

①測定方法が認定基準(測定要領)に従ってなされているかどうかが問題とされる場合
②器質的損傷の内容と可動域制限の内容とに整合性が認められるかどうか(測定結果自体が信用できるか)が問題とされる場合


測定方法についてですが、当然ながら後遺障害等級認定は測定方法が適正であることが前提です。
ですが自賠責保険(自賠責損害調査事務所)では大量の案件を処理する中、検査を行った個々の医師の力量を判断しがたいため、記載された数値を直ちに信用できないと考えている、と思われます。

例えば他動は医師が上肢や下肢を動かすわけですが、患者は痛みを訴えますので、それをどの程度我慢させて曲げるかは医師の判断によります。

あまり無理をして身体に損傷を与えてはいけませんので、適当なところでそれ以上力を加えて間接を動かすことをやめるでしょうが、その程度があまりにも甘ければ、検査結果としては悪い値になります。

そのために自賠責損害調査事務所としては、実際に記載された他動値を無条件に検査結果として受け入れにくいと考えている、と思われます。

そこで測定された他動域の信用性を検証するため、そのことを裏付ける器質損傷などの所見を確認し、可動域が制限されていることとの整合性のチェックを行います。

後遺障害診断書に記載された他動値が等級認定の基準を満たしているにもかかわらず、機能障害が否認された場合、異議申し立てではこの部分、つまり可動域制限を合理的に説明できる器質損傷などの所見を徹底的に探す、ということになります。

また、症状固定時の測定結果の信憑性としては、その時ただ1回の検査結果ではなく、これまでの治療経過の中で何回か可動域測定の検査がなされていることも重要です。

毎回(あるいは医師が替わるたびに)数値がばらついているようでは信用性が疑われることにもなりかねませんが、これまできちんと改善がみられるようなら症状固定時の測定値にも信憑性があると考えられるでしょう。

ただ経年変化や症状によっては(例えばRSDなど)、当初より悪化することもあり得ないことではないので、それらを総合的に考慮して判断されることになるでしょう。

<関節機能障害のポイント>
患側の三大関節(例えば肩関節)の可動域が、他動値で健側の2分の1以下に制限されていても、それだけを根拠にして10級10号(機能障害)が認定されることはありません。

可動域制限が生じている原因を徹底的に立証しなければなりません。骨折であれば骨折の部位と形状、周辺靭帯、軟骨、筋肉の損傷状況、固定術の内容、そして骨折後の骨癒合の状況と変形の有無、軟部組織の回復の度合いなどが検証されて、等級が審査されます。

②上記の総合的な所見を前提として、可動域が2分の1以下に制限されていることが矛盾しなければ、やっと10級10号が認定されるのです。


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