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上肢の外傷の種類と後遺障害について(鎖骨骨折・肩関節脱臼・腱板損傷)

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橋本行政書士事務所(交通事故サポートセンター)

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上肢の外傷の種類と後遺障害

こちらでは上肢の主な外傷に関して症状や後遺障害について、説明していきます。


鎖骨骨折

鎖骨骨折とは

鎖骨は皮膚から近いところにあるため、非常に骨折しやすく、骨折全体の10~15%を占めると言われています。
鎖骨
鎖骨は体幹の一番上の方にあり、近位端(体の中心に近い方)は胸鎖関節で胸骨に、遠位端(体の中心から遠く、肩に近い方)は肩鎖関節で肩甲骨の肩峰という部分につながっています。

鎖骨が折れると、近位側(体の中心に近い方)は胸鎖乳突筋の力で上方に引き上げられ、遠位側(肩に近い方)は腕や肩の重さによって下方に引っ張られるため、転位(折れた部分で骨がずれること)が起こります。


症状

  • 鎖骨骨折は、骨に直接力がかかる「直達外力よりも、転倒で肩を強打したなどの「介達外力で起こることが多いです。

    骨折箇所の変形や圧痛(腫れとひどい痛み)があります。患者は、強い痛みのために前かがみになり、肩関節を動かさないような体制になります。

確認の検査

  • 2方向からの肩関節の単純X線検査で確認できます。

治療と後遺障害

  • 治療は、多くの場合は保存療法(手術をしない治療)で、鎖骨バンドで固定します。

    鎖骨の機能は肩幅を維持する支柱としてのみであり、多少の転位があっても保存療法で骨癒合が得られやすく、肩関節の運動機能に支障をきたさないためです。

    鎖骨バンドは、通常6週間程度の装着とされています。

    ですが整復(元の位置に戻すこと)後もうまく骨折箇所が接触せず時間がかかりそうな場合や、粉砕した骨片が邪魔をしてうまく整復できずに疼痛が生じるなど、保存療法が困難な場合は手術療法が選択されることがあります。

    手術療法は、大きく分けると「髄内固定法」と「プレート固定法」に分けられます。

    髄内固定法とは、骨の中心部に長いロッド(棒)を挿入し、骨の内部から固定する方法です。
    プレート固定法とは、骨の外側にプレートを当て、骨の外部から固定する方法です。

    後遺障害は、完治(症状固定)した時点で、裸になったときに鎖骨が変形していることが目で見てわかる場合に「鎖骨の変形」として12級5号が認定されます。

    鎖骨の遠位端(肩に近い方)で骨折をして、肩関節に可動域制限が残った場合、骨の癒合の仕方によっては、可動域制限有りとして運動機能障害(可動域の角度により12級6号や10級10号)が認定されることもあります。


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肩関節脱臼

肩関節脱臼とは

関節とは骨と骨の連結部分ですが、外力などによって骨と骨が向かい合っている面がずれて元に戻らなくなることがあり、これを関節の脱臼といいます。
肩関節
肩関節は最も脱臼しやすい関節で、人体に発症する脱臼の約半数が肩関節脱臼であるとも言われています。

関節にはごくわずかしか動かない「不動関節」と、大きく動く「可動関節」に大別されますが、可動関節の両骨端の形は、大抵はどちらかの骨端が凸方になっていて、それと接するもう一方の骨の骨端は凹型になっています。

凸型の方を「
関節頭」(かんせつとう)といい、凹型の方を「関節窩」(かんせつか)といいます。

肩関節の脱臼は前方脱臼と後方脱臼がありますが、肩甲骨関節窩は前開き(体の前に開いている)になっているので、ほとんどが前方脱臼です。


症状

  • 患者は肩関節の痛みのため、上肢を動かすことができず、もう一方の手で支えなければならない状態となります。

    見た目では、上腕骨の骨頭がずれてしまっているので、肩の外側がへこんでいたり、肩峰が突出するなど外見上の異常が確認できます。

確認の検査

  • 2方向からの単純X線撮影で確認しますが、体幹冠状面(真正面から見た垂直面。体が時計の12時の方向を向いていたとしたら、3時から9時を結ぶの面のこと)から内側に30度の角度を肩関節撮影の「正面」と呼び、その正面と直交する面との2方向での撮影となります。

    脱臼の整復後(骨の位置を元に戻した後)に腱板損傷などが疑われる場合には、MRI検査で確認をします。

治療と後遺障害

  • 脱臼を整復する方法は、

    ①患者の脱臼した方の脇の付け根に整復者の足をいれ強引に引っ張り整復を行うHippocrates法や、
    ②立体パズルのようにはめ込むKocher法
    などがありますが、いずれも骨折や神経血管損傷を起こす危険性があるといわれており、現在では
    ③ベッドの上に腹臥位となり、脱臼のある方の腕の先に5~8kgの重りをつけて牽引するStimson法や、
    ④整復者が体を固定したうえで脱臼のある側の腕を引っ張りながら拳上させていく拳上位整復法

    が安全かつ有効とされています。

    その後は3週間ぐらい固定して、おじぎ運動・振り子運動などの他動関節可動域訓練から初めて、その後徐々に自動運動を行っていきます。

    後遺障害は、その後習慣性脱臼となった場合に12級相当として12級が認定されます。


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腱板損傷

腱板損傷とは

腱板は、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋から成り、医学的には回旋筋腱板と呼ばれます。

腱板の機能は
①上腕骨頭を肩甲窩に引きつける
(「窩」とは関節を形成する二つの骨のうち、凹んでいる方のことです。凸の方は「頭」といいます)。
②上腕骨を回旋させる。
③三角筋と共同して外転力として働く

などで、腱板の損傷によりこれらの機能に影響が現れます。

交通事故では、転倒などで手をついてひねった時に棘上筋腱を損傷することが最も多くなっています。

腱板の損傷は「完全断裂」と「部分断裂」に分類されます。


症状

  • 自覚症状は、激しい痛み(肩関節痛)と関節可動域制限です。肩関節痛は「運動時痛」と、就寝中の朝方気温が下がるころや寝返りなどで生じる「夜間痛」です。

    完全断裂の場合は自分で腕を上げることはできません。

確認の検査

  • 単純X線やMRIなどの画像検査です。必要に応じて造影剤を使って関節造影検査で確認します。

    また、以下の徒手検査でも確認します。

    轢音検査
    肩関節の自動、他動運動時に生じる軋轢音を確認する検査。腱板断裂部が固くなってしまい、動かした時に挟まれて音を生じます。
    ドロップアームサイン
    椅子に座って、腕を真横に伸ばして直角よりも少し上まで、検者が手を添えて持ち上げたのち、手を放します。患者の腕が自然に下がってしまったり、弱い力で下がってしまった場合に陽性とします。
    スピードテスト
    座った状態で、肘を伸ばして腕を体の前に水平に(体とは垂直に)伸ばし、手のひらは上へ向けます。この状態で検者は患者の手首のあたりに下に向かって力を加え、患者がこれに抵抗する際の痛みなどの確認をする検査です。
    ヤーガソンテスト
    腕を下に下げた姿勢から肘を90度曲げた状態で、検者が患者の腕をつかんで腕を内旋、回内させるように力を加え、患者はこれに抵抗し、痛みなどの確認をします。
    棘上筋テスト
    腕を伸ばした状態で真横に90度外転(水平まで上げる)、腕は内旋(手のひら後方を向く感じ)、この状態から検者が腕を押し下げたときの痛みなどの確認をします。
    リフトオフテスト
    手の甲を背中(腰のあたり)に当てた状態で、手を体から放すことができるかどうかを見る検査です。

治療と後遺障害

  • 治療は保存療法手術療法があり、患者の年齢、環境、急性期か慢性期か、完全か部分断裂かなどを考慮して選択します。

    保存療法は、急性炎症が治まったらホットパックやストレッチングなどの理学療法を続け、残存した腱板の機能回復のための訓練を行います。

    手術療法は縫合を行う腱板修復術や、肩峰下除圧術などがあります。

    後遺障害として肩関節の機能障害(10級10号、12級6号など)とされるためには、可動域制限や徒手検査での所見(特にドロップアームサイン)に加えて、MRIや関節造影検査など画像で確認できることが必要です。

    腱板損傷があるとレントゲン写真で肩峰と上腕骨頭の裂陵が狭くなっているのが分かりますが、後遺障害についてはレントゲン検査だけでは立証が足りないとされてしまいます。

    MRIは、T1強調像で骨の状態や腱板の脂肪変性の状態を確認し、T2強調像で断裂の程度を確認します。


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上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)

上腕骨近位端骨折とは

上腕骨とは、肩関節から肘関節までの間の太い長管骨のことです(二の腕の部分)。長管骨とは、身体の骨のうち管状の形をしたものです。
上腕骨
上腕骨近位端骨折とは、この上腕骨の近位端、一番肩に近い部分の骨折のことで、
全骨折中の5%を占めるとされる、頻度の高い骨折です。

全体の3/4が60歳以上の高齢者で、転倒して手をついたときに多く発生しています。
若年者では、交通事故の他、スポーツ外傷などで発生します。

上腕骨近位端骨折では、80%が保存的治療(手術をしない治療)の適用となっていますが、転位(骨のズレ)が大きい場合は手術療法が選択されます。


症状

  • 受傷直後は激しい痛みがあり、骨折部が腫れあがります。転位が強い場合は患部に変形がみられることもあります。

確認の検査

  • 2方向からのX線撮影を行います。
    転位が大きくて骨折の型(2part、3part、4partや外科頚、大結節、小結節など)の判断が困難な場合には、3D-CTの撮影をします。

    X線の画像で骨折が明らかでない場合にはMRI検査が骨折の有無の判断には有効です。

治療と後遺障害

  • 転位(ズレ)が無ければ2~3週間の体幹固定で回復します。その後振り子運動を開始して、X線画像で仮骨が確認されたら自動運動に入っていきます。

    手術療法は、高齢で骨粗鬆が強い場合にはプレートによる固定では不安があるため、髄内釘固定が採用されます。
    髄内固定法(髄内釘固定)とは、骨の中心部に長いロッド(棒)を挿入し、骨の内部から固定する方法です。
    上腕骨近位端骨折での髄内固定法は、腱板を縦切りする必要があり抜釘も困難です。

    骨質の良い若年者では、関節内や腱板の処置をする必要のないプレート固定がよく採用されます。
    プレート固定法とは、骨の外側にプレートを当て、骨の外部から固定する方法です。

    後遺障害は、肩関節の機能障害となります。関節の可動域が健側と比べて1/2以下に制限されていれば10級10号、3/4以下に制限されていれば12級6号となります。

    ただ、可動域制限があれば無条件に認定されるわけではなく、関節部分の骨折後の癒合不良や関節周辺組織の変性による関節拘縮、神経の損傷など、器質的損傷が生じていることが必要です。


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上腕骨骨幹部骨折(じょうわんこつこつかんぶこっせつ)

上腕骨骨幹部骨折とは

管状の骨の中央あたりの骨折を骨幹部骨折といい、上腕骨骨幹部骨折は成人の全骨折の約7%を占めるといわれています。

交通事故で直接その部分に力が加わった場合(直達外力)や、転倒などで手や肘をついて力が加わる(介達外力)場合などに発生します。


症状

  • 骨折部位激しい痛みを感じ、腫れあがります。長管骨の骨折なので、腕が変形します。

    上腕骨の骨幹部はすぐ近くを橈骨神経が通っていますので、橈骨神経麻痺を起すこともあります。
    上腕骨の遠位1/3の骨折の場合で、10%以上の割合で橈骨神経麻痺が発生するといわれています。

    橈骨神経麻痺が起こると、手首や指が伸ばせなくなります(下垂手)。

確認の検査

  • 2方向からのX線検査で確認できます。

治療と後遺障害

  • 上腕骨は非荷重の長管骨なので骨幹部骨折では機能障害が残ることも少なく、多くは適切な保存療法で治癒します。

    特に螺旋骨折斜骨折では骨折部の接触面積も大きいので、保存療法で骨癒合を得やすく、後遺障害を残すことは稀です。

    一方、横骨折粉砕骨折では周辺の軟部組織を損傷し、骨折部の骨の接触面積も小さいので、手術療法が望ましいとされています。

    保存療法は
    シーネ固定法(副木で固定する)
    ハンギングキャスト法(肘から前腕をギプス固定し、手首に近い方に吊紐をつけて首からぶら下げ、ギプス等での重みで骨を整復していく)
    ファンクショナルブレース(筒状の固定具で骨折部を固定する)
    などがあります。

    手術療法は、骨の中心に髄内釘(ロッド)を注入する髄内固定法と、骨の外側にプレートを当てて固定するプレート固定法です。

    上腕骨の偽関節で8級8号、変形で12級8号ですが、粉砕骨折の場合は少し可能性があるものの、現実的には偽関節や変形は残ることはほとんどありません。注意を要するのは橈骨神経麻痺です。

     →橈骨神経麻痺の説明


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関節脱臼(ちゅうかんせつだっきゅう)および脱臼骨折

肘関節脱臼および脱臼骨折とは

腕を伸ばした状態で地面に手を付き、肘が上腕の後ろの方に抜けてしまった状態が肘関節脱臼です。
脱臼としては肩関節の次に多く発症し、そのほとんどが肘が後ろに抜ける「後方脱臼」です。


症状

  • 脱臼した状態では、肘関節は伸びているか少し曲がった状態になり、「ばね様固定」といって他人が曲げようとすると弾力を持ったような抵抗があります。
    見た目での変形や腫脹は明らかで、非常に強い痛みを伴います。

確認の検査

  • 肘関節のX線画像で、二方向撮影をして確認します。

    脱臼が明らかであっても、骨折や靭帯損傷を伴っている可能性もあるので、X線撮影を行うまでは整復操作は行いません。

治療と後遺障害

  • X線撮影後、骨折の有無を確認してからは速やかに整復します。

    骨折が無く、脱臼後1時間ぐらいの早期であれば局所麻酔で整復できますが、脱臼後1時間以上経過していたり、転位(ズレ)のない骨折が橈骨頭などにある場合は全身麻酔をして整復します。

    整復後は肘関節を90度に曲げた状態でギプスで2~3週間固定します。

    骨折が転位している(ズレている)場合や、神経血管損傷、解放脱臼などの場合は手術の適用となります。
    肘関節脱臼に靭帯損傷や橈骨頭骨折、尺骨鉤状突起骨折などが合併した場合は予後も不安定で、容易に再脱臼を起こします。
    このような場合は動揺関節や、可動域制限(3/4以下)で後遺障害等級は12級6号に該当します。


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前腕骨骨折(ぜんわんこつこっせつ)

前腕骨骨折とは

上肢の前腕は、尺骨と橈骨の二つの長管骨で構成されています。
二本の長管骨から成っているために、回内回外運動(手のひらをかえしたり伏せたり)ができるのです。

前腕に直接ものがぶつかるなど、直達外力による骨折は、尺骨、橈骨の両前腕がほぼ同高位で骨折します。
それに対して地面に手をつくなどの介達外力では、螺旋(らせん)状に骨折する場合があります。


症状

  • 骨折していますので激痛を伴い、前腕に変形や腫脹が見られます。
    回内、回外運動はできません。

確認の検査

  • 単純X線検査が最も有効です。正面像、側面像で診断できる場合が多いですが、転位方向を確認するためには斜位像も撮った方がいいとされています。

治療

  • 小児で整復できる場合は、整復後にギプスシーネ固定となります。
    成人の場合は手術を検討し、プレート固定が望ましいとされています。

    変形治癒すると、骨形成に異常が生じて、回内回外運動に可動域制限が残ることになりますので注意が必要です。


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Galeazzi(ガレアッチ)骨折

Galeazzi骨折とは

上肢の前腕は尺骨と橈骨の二本の長管骨で構成されていますが、橈骨の遠位側、つまり手首に近い方で骨折し、尺骨の方は骨折せずに橈尺関節(手首のあたり)で脱臼を伴ったものをGaleazzi(ガレアッチ)骨折といいます(橈骨の骨折と尺骨の脱臼)。

手首をつくなどの介達外力で起こることが多いです。


症状

  • 骨折部は激痛と腫脹があります。尺骨は脱臼しているので骨が飛び出したように手関節あたりで変形します。

確認の検査

  • 単純XP撮影が有効ですが、ガレアッチ骨折では正面像、側面像だけでは尺骨頭脱臼の把握ができない場合があります。
    脱臼の診断にはCTやMRIでの横断像が有用です。

治療

  • 保存療法で治療することは難しく、骨折部をプレートで固定した上で脱臼部を整復し、その後ギプスシーネで固定します。
    脱臼部分の整復が不可能な場合は手術で整復します。


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手関節部骨折(橈骨遠位端骨折・手根骨骨折・手根骨脱臼)

手関節(手首の関節)について

手関節は、前腕骨である橈骨、尺骨と、いくつかの手根骨から構成されています。

手根骨は石ころのような形の骨で、近位手根列(体に近い側)に手首の骨
舟状骨(しゅうじょうこつ)」
月状骨(げつじょうこつ)」
三角骨(さんかくこつ)」
があり、遠位手根列に
大菱形骨(だいりょうけいこつ)」
小菱形骨(しょうりょうけいこつ)」
有頭骨(ゆうとうこつ)」
有鉤骨(ゆうこうこつ)」
で形成されています。

関節としては、前腕骨である橈尺骨と近位手根列の間を橈骨手根関節、近位手根骨と遠位手根骨の間を手根中央関節といいます。


橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)

  • 手関節部(手首の関節)の骨折で最も多いのが橈骨遠位端骨折で、転倒して手をついたときに、橈骨の関節部分が骨折します。

    症状としては手関節痛や手関節の変形、膨隆が見られ、運動制限があります。
    橈骨の遠位(手首側)に圧痛点や轢音(れきおん)があります。

    正中神経麻痺を併発することが多いです。


舟状骨骨折

  • 橈骨ではなく、手根骨骨折の中で頻度が高いのが舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折です。
    これは手首を伸展(手の甲側にそらせる=背屈)しているときや親指側に傾けている(橈屈)状態で手をついた際に生じます。

    症状としては、親指の付け根あたりに圧痛を感じることが多いですが、ほとんど痛みを感じないということもあるようです。

    親指や人差し指を軸方向に圧迫(突き指する時の方向)したり、手首を強制的に伸展させて回したりすると痛みを感じます。


月状骨脱臼・月状骨周囲脱臼

  • 転倒して手のひらをついた際に、手関節が強制的に背屈され、月状骨を残してその周囲の舟状骨、三角骨、その他の遠位手根列の骨が入側に脱臼する状態が月状骨周囲脱臼で、それら周囲の骨が整復される際に月状骨が手のひら側に押し出されて脱臼する状態が月状骨脱臼です。

    症状としては、痛みとともに顕著な腫脹があり、腫れあがります。


確認の検査

  • X線撮影が最も有効です。
    橈骨遠位端骨折では正面像、側面像で確認できる場合が多いですが、関節内粉砕骨折の場合は骨片の確認のため両斜位像も追加します。

    舟状骨骨折では正面像と側面像だけでは骨折線の確認ができない場合があるので、回内位や尺屈位、指屈曲位などのX線撮影をしたり、断層X線やCTも骨折線の確認のために有効です。

    月状骨周囲脱臼や月状骨脱臼は、正面像では手根骨の重なりを見て、側面像では月状骨と有頭骨の位置関係を確認します。

    いずれの骨折や脱臼も、X線で判断ができない場合はMRIが有効です。


後遺障害

  • 舟状骨骨折後偽関節

  • 舟状骨骨折は激しい痛みではないため、当初は見逃されることが多く、偽関節を残した後に因果関係が否定されることがありますので、早めに専門医の診断を受ける必要があります。

    舟状骨骨折が安定型であればギプスによる保存療法が選択されますが、ギプス装着期間が8週間から12週間と長く、社会生活に制限をきたすこともあります。

    舟状骨内の血管は、舟状骨骨折が起こると血流が容易に遮断され血流が悪くなることと、舟状骨骨折は関節内骨折となるので癒合しにくく、偽関節を残すことも多くなります。

    舟状骨骨折が不安定型や偽関節を残す場合は手術治療が選択されます。
    偽関節を残した状態で痛みがあれば、14級9号が認定されます。

  • 手根不安定症とは

  • 手根不安定症とは、手根骨の脱臼、骨折などの外傷に伴った、二次的な症状です。

    手根骨間靭帯損傷や舟状骨骨折などが生じると、近位手根骨(舟状骨、月状骨、三角骨)は非常に不安定化します。

    特に月状骨の異常は特異的で、舟状・月状骨間かい離の場合は背屈(手のひらをそらす側)に変形し、月状・三角骨間かい離の場合は掌屈(手のひらが閉じる側)に変形します。


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上肢の神経麻痺(橈骨神経麻痺・尺骨神経麻痺・正中神経麻痺)

橈骨神経麻痺

  • 橈骨神経は、頚椎から出て鎖骨の下を通り、上腕骨の周りをらせん状に外側に回り、前腕の外側から手先の方へ向かって走っている神経です。

    橈骨神経は手の甲の、特に半分より親指側の皮膚感覚をつかさどる神経です。橈骨神経麻痺があると、手の甲の親指と人差し指の間が強くしびれます。

    手首を反らす筋肉が正常に動かないため、手関節の背屈ができなくなり、親指と人差し指でものをうまくつまめなくなります。

  • 原因

    橈骨神経麻痺の多くは橈骨神経が圧迫されることで起こりますが、事故による上腕骨骨折に伴う損傷などでも起こります。

  • 症状

  • 橈骨神経は母指(親指)から中指にかけての手の甲、前腕部の背側や上腕遠位(遠位=体に遠い方、上腕なら肘に近い方)の外側の感覚を司っていますので、橈骨神経麻痺の場合はこれらの部分に感覚障害が生じます。

    また、手首をそらす運動が正常にできなくなるため、手首がだらりと垂れ下がる「下垂手」となります。

  • 確認の検査

  • チネル徴候をみます。これは損傷部を打腱器でたたいて、その先に疼痛やしびれがあるかどうかを確認する検査です。

    必要に応じて、針筋電図検査などを行うこともあります。

  • 治療

  • 圧迫麻痺の場合は1か月~数か月で自然に回復します。必要に応じて装具を付けたり、ビタミンB12製剤を服用することもあります。

    神経の損傷、断裂などで回復しない場合は、手術も検討します。


尺骨神経麻痺

  • 尺骨神経は、腋の下から上腕、肘の内側をとおって、前腕部から手先まで走行している神経です。
    この神経は、小指と薬指の感覚と、手指の運動を司っています。

  • 原因

  • 圧迫障害が起こりやすいのは肘関節と手首で、交通事故による骨折や刃物などでの肘関節部の直接損傷や圧迫による間接的な損傷により、尺骨神経麻痺が発生します。

  • 症状

  • 尺骨神経が支配する小指、薬指がしびれる、あるいは完全には伸ばすことができなくなる、といった症状が現れます。

    小指、薬指のMP関節(指の三つの関節のうちの一番手のひら寄りの関節)が伸び、残りの二つの関節(PIP、DIP関節)が曲がったままの状態で固まります。
    これを「かぎ爪指(claw finger)変形」といいます。

  • 検査

  • 橈骨神経麻痺と同様に、チネル徴候をみます。これは損傷部を打腱器でたたいて、その先に疼痛やしびれがあるかどうかを確認する検査です。

    必要に応じて、針筋電図検査などを行うこともあります。


正中神経麻痺

  • 正中神経は腕神経叢から分岐したのち、肘の前面を通り、前腕の真ん中を通ってて首のあたりで手根管の中を通過して、指先まで達しています。

    この神経は母指(親指)、人差し指、中指、薬指の感覚を司っており、母指は橈骨神経と重なり合い、薬指は尺骨神経と重なり合っています。

  • 原因

  • 交通事故で、上腕骨上顆部(ひじのあたり)や橈骨、尺骨の骨幹部を骨折すると、正中神経が損傷して正中神経麻痺になることがあります。

    また、手首の骨折や脱臼で、正中神経麻痺の一種である手根管症候群が発生することがあります。

  • 症状

  • 正中神経が損傷すると、母指(親指)から薬指までの感覚障害が生じたり、母指球筋という親指の付け根の筋肉が萎縮して、猿手の症状が現れます。

  • 検査

  • 正中神経麻痺のうち、特に前骨幹神経麻痺の場合、ティアードロップサインを確認します。

    これは親指と人差し指とでOKサインの丸を作ってもらった場合、前骨幹神経麻痺があると親指のIP関節(指の先の方の関節)や人差し指のDIP関節(指の一番先の方の関節)が曲がらないため、丸ではなく涙のしずくのような形になるサインです。

    その他はチネル徴候(損傷部を打腱器でたたいて、上肢のその先の部分に疼痛やしびれがあるかどうかを確認する検査)、神経伝導速度検査なども有用です。

  • 治療

  • 症状が比較的軽い場合には安静にしてビタミンB12の服用や、必要に応じて副腎皮質ステロイドの注射を行います。

    保存療法で改善しない場合は神経を縫合する手術を行うこともあります。
    手根管症候群ではトンネル状の手根管の中を通っている正中神経が圧迫・損傷されていますので、手根管を切って開放する手術が行われます。


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関連項目

問合せフォーム


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