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交通事故加害者の責任(民事責任・刑事責任・行政上の責任)とは

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橋本行政書士事務所

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交通事故加害者の3つのの責任とは

交通事故を起こしてしまった場合、民事・刑事・行政上の3つの責任が発生します。

【このページの目次】

1.民事責任(損害賠償する責任)

民事責任とは、加害者が交通事故により被害者に与えた損害を賠償しなくてはならないという責任、つまり当事者同士(加害者と被害者)の問題です。

人身事故の場合、この責任は民法や自動車損害賠償保障法に基づいて発生します。物損事故の場合、自動車損害賠償保障法は適用されませんので、民法に基づいて責任が発生することになります。

被害者に賠償しなくてはならない損害とは、治療費、通院交通費などの積極損害に加え、被害者が事故に遭わなければ得られたであろう収入を失った事による損害や、事故による精神的苦痛に対する慰謝料も含みます。

 → 【関連項目】
 被害者が損害賠償請求できる項目と範囲


【民事責任】
死亡事故・傷害事故による損害 自動車損害賠償保障法3条(運行供用者責任)
民法709条(不法行為責任)
物損事故による損害 民法709条(不法行為責任)


2.刑事責任(懲役、罰金など)

刑事責任とは、交通事故を起こした加害者が、犯罪を犯したとして懲役刑や禁固刑、罰金刑などに処されることです。

人身事故の場合、刑法上の犯罪として
自動車運転過失致死傷罪、飲酒運転など悪質・危険な運転で人を死傷させた場合には危険運転致死傷罪、死亡するかもしれないと思いながら被害者を引きずったまま逃走したなどの場合には殺人罪に問われることもあります。

同時に救護義務違反(つまりひき逃げ)や酒酔い運転、無免許運転といった道路交通法違反が伴う場合は、併合されて罪が重くなります。

死亡事故
傷害事故による刑事責任

自動車運転過失致死傷罪

刑法211条の2

5年以上の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金

危険運転致死傷罪

刑法208条の2

死亡の場合、1年以上の有期懲役(最高20年)

傷害の場合、15年以下の懲役

殺人罪

刑法199条

死刑または無期もしくは5年以上の懲役

緊急措置義務違反
人身事故(ひき逃げ)

道路交通法117条

10年以下の懲役または100万円以上の罰金

その他道路交通法違反の例

緊急措置義務違反
物損事故

道路交通法117条の5第1号

1年以下の懲役または10万円以下の罰金

過失建造物損壊罪

道路交通法116条

6か月以下の禁錮または10万円以下の罰金

酒酔い運転

道路交通法117条の2第1号

5年以下の懲役または100万円以下の罰金

酒気帯び運転

道路交通法117条の2の2第3号

3年以下の懲役または50万円以下の罰金

無免許運転

道路交通法117条の2の2第1号

3年以下の懲役または50万円以下の罰金



3.行政上の責任(免停など)

行政上の責任とは、事故を起こしたものが公安委員会より運転免許の取り消しや停止などの処分を受けることです。これは過去3年間の交通違反などに対して所定の点数を付け、違反点数が一定の基準に達すると処分する、点数制に基づいて行われています

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関連項目


コラム
<亀岡市の事故>

京都では、祇園での8人死亡事故に続いて、平成24年4月23日にも亀岡市で大きな事故がありました。

集団登校中の児童の列に車が突っ込んで、妊婦の女性と7歳の児童が死亡し、その他にも児童2名が意識不明の重体(平成24年4月24日現在)という、痛ましい事故です。

加害車両を運転していた加害者は、18歳で無免許、居眠り運転だったとのことです。 家族の怒りや無念さは、私には想像もできないほどです。

家族が加害者に厳罰を望むという気持ちはよく分かりますが、18歳の少年ということで、5年程度の懲役、または禁錮ということになるのではないかという予想もあります。
これでは家族は到底納得できないだろうと、誰でも思います。

これは加害者本人の「刑罰」の話ですが、これとは別に加害者は被害者に民事上の責任として、損害賠償をしなくてはなりません。 18歳の無免許運転、ということで「刑罰が軽い」ということ以外にも、「きちんと賠償金が支払われるのか」という心配も、家族には迫ってくることになるかもしれません。

被害者の家族としてはしばらくはお金のことを考える余裕はないかもしれませんが、ちょっと検討してみます。

まず、加害車両についてです。 児童を次々にはねた軽自動車は誰の所有物なのかとか、対人賠償保険(任意保険)に入っていたのかなどについて、今のところ報道はされていません。
もしこの車が加害者の家族が保有する車だったとして、この車に任意保険が掛けられていて、本人限定特約や年齢条件特約(26歳未満不担保など)が無ければ、とりあえずこの車にかけている対人賠償保険が使われ、被害者に賠償金が支払われます。

つまり「この車が任意保険に入っていれば賠償金が被害者に払われる」ということです。
無免許運転の場合は対人賠償は支払わない、ということはないのです。

次にこの車が自賠責保険(強制保険)のみで、任意保険に入っていない、いわゆる「無保険車」だった場合はどうでしょうか。

そうであった場合、とりあえず相手の車の自賠責保険に請求することも一つの方法ですが、重傷や死亡の場合は自賠責保険だけでは到底足りません。

このような場合は、被害者の方の家族が自家用車を持っていれば、その「自分の家族の自家用車の自動車保険」を調べます。

大抵の場合、任意保険に入っていれば「人身傷害保険」や「無保険車傷害保険(特約)」を付けているはずです。
ですから被害者は、そちらの自分の保険の人身傷害保険や無保険車傷害保険に請求します。

そうすると被害者は、加害者が本来被害者に対して賠償するべき「損害賠償金」を自分の保険から受け取ることになります。
自分の保険会社は、後日加害者側が加入している保険や、加害者本人に請求します(請求せずに損金として処理することもあるようです)。

つまり、被害者本人(または遺族)の代わりに、自分の保険会社が加害者に請求してくれる、というイメージです。

ところでこのように加害者が無保険だったうえに自分の家族が自家用車を持っていなかった場合、人身傷害保険などは当然ありません。

その場合にはとりあえず自賠責から限度額を回収した後に、自賠責を超える部分については加害者本人に請求していくしかなく、非常につらい状況になってしまいます。

コラム
<未成年者の親の責任>

未成年の無免許運転が起こした事故関連です。

18歳の無免許の少年が車を運転して歩行者を轢き殺すという人身事故を起こした場合、以前も説明しましたが、この車の保険が使えれば、賠償についてはとりあえず大丈夫です。

この加害車両が任意保険に入っていない、あるいは入っていても対人賠償が運転者限定(家族限定とか26歳未満不担保など)の特約が付いていると、被害者は自賠責保険からの補償しか受けられないことになります。

自賠責の補償のみでは足りませんから、自賠責を超える分は先日説明したように、被害者の家族が自家用車を持っていて自動車保険に入っていれば、自分(被害者)の保険の人身傷害保険や無保険車傷害保険から支払われますが、自家用車を持っていない場合は加害者本人に請求することになります。

でも18歳の少年に支払い能力が無いことは明らかです。

このような場合、「加害者は未成年なのだから親に請求すればよい」と単純に考えるわけにはいきません。
加害者は未成年とはいえ、「12〜13歳以上の者は責任弁識能力がある」として、「責任は本人にある、親は(民法714条の)監督義務者の責任は無い」ということになっているのです。

この状況で、被害者が加害者の親に請求する方法、というか理屈は、2とおりあります。

ひとつは、親そのものに責任があったとして、民法709条の不法行為責任を問うことです。
もう一つは、自賠法3条で言う「運行供用者責任」が親にあった、として責任を問うことです。

運行供用者責任は、車の持ち主や、その車の運行で利益を得るもの、といった人の責任ということですが、聞くところによると今回の亀岡市の事故の車は、同乗者の知り合いの車とのことですから、親に運行供用者責任を求めるのは難しそうです。

そうすると、「親本人に不法行為責任がある」として親に賠償請求することだろうと思います。
この場合の条件もあまり簡単ではなく、最高裁は

@監督義務者が相当の監督をすれば加害行為の発生が防止され得たこと
Aその監督を現実になし得たこと
B監督をせずに放任しておけば当該加害行為が発生するとの蓋然性が一般的にも強い場合であったこと

の要件が必要としています。今回の場合にこの3要件は該当するでしょうか。

「該当するのだ」と立証する、弁護士さんの手腕を期待しています。



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