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休業損害は消極損害です。
交通事故で怪我をしてお仕事を休むことによって給料(収入)が減った場合には、それを「休業損害」として加害者に請求できます。
実際に収入が減った給料明細が無くても、会社員(勤め人)の方で有給休暇を使用して休んだ場合や、専業主婦として家事に従事している方も、休業損害の請求が可能です。
そして専業主婦でパートやアルバイトをしている方は、そのパートやアルバイトで得た給与の実績を見て、専業主婦で請求計算した場合と比較して、どちらか有利になる方で請求できることになっています。
主な必要書類は、
・会社員の場合は会社が記載した休業損害証明書と源泉徴収票
・自営業の場合は確定申告書の控え
・家事従事者の場合は家族分の記載がある住民票
などとなっております。
→ 休業損害について過去にいただいた相談と回答例はこちら
もらえないだろう、と思っていた専業主婦の休業損害が、意外と高額になったりして驚いたり、原則もらえないと言われている学生や失業者の場合も考え方や証明の仕方によって休業損害がもらえたりすることもあります。
休業損害が請求できるかどうか微妙な場合、準備する書類がよく分からない場合なども、すぐにはあきらめないでください。
算定方法は被害者の事故時の職業によって異なりますので、以下に説明します。
交通事故による怪我の治療のために欠勤したことによって現実に収入減となっている部分が休業損害となります。
対象となるのは本給・各種手当・を含み(賞与を除く)、事故時に受け取っていた現実の給与額で、本給の他、皆勤手当などの付加給も支給の対象となります。
収入額とするのは、いわゆる手取り額(税金や公的保険料を控除した残額)ではなく、税込額です。
このことは勤務先発行の休業損害証明書や、源泉徴収票等により立証します。休業損害証明書の用紙は保険会社に備えてありますので、言えばもらえます。
休業中に昇給・昇格遅延などによる減収があった場合には、これも休業損害に含まれます。有給休暇を使用した場合にも、現実の収入減が無くても休業損害として認められます。
→ 【関連】有給と代休では休業損害に違いがある!?
会社役員の場合は報酬のうち、いわゆる労働の対価分のみが休業損害の対象として認められます。
ーーーーーーもっと詳しくーーーーーー 自主退職と解雇では休業損害に違いは出てくる? |
自営業者(商工業、農林、サービス業)や、自由業者(弁護士、司法書士、行政書士、税理士、開業医、著述業、芸能人、プロスポーツ選手など)などの個人事業者の基礎収入は、前年度の確定申告所得額によって立証しますが、業績に変動がある場合は、数年間の実績を平均して計算することもあります。
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→ 赤字申告の個人事業主(自営業など)の休業損害はどうなる?
→ 事故後に修正申告をした場合の休業損害は?
→ 休業に関連する損害について(個人事業主が取引先から切られた場合など)
主婦(主夫)などの家事従事者は収入はありませんが、家事労働も財産的評価が可能ですから(もちろん)、受傷のため家事に従事することができなかった期間について、休業損害を請求することができます。
収入額は賃金センサスの女子労働者の全年齢または年齢別平均賃金の額を用います。
パートや事業による収入がある場合には、その収入額が賃金センサスの女子労働者の平均賃金の額を上回っている場合には、その収入額を基礎とします。
主婦(主夫)の家事労働が得られなかったとして、家族が家政婦などを雇った場合は、その費用も「主婦の休業損害に替えて」請求できます。
なお、家事をしていても以下の人は家事従事者に該当しません。
「一人で生活を営んでいる者」
「時々家事の手伝いをする程度の者」
また、常勤の給与所得者として働きながら家庭内の家事も行っている人は、家事従事者ではなく給与所得者として認定されます。
学生・生徒には収入がありませんので、原則として休業損害は認められません。しかしアルバイトなどによる収入がある場合には、その収入を基礎として休業損害を計算します。
収入のない学生・生徒であっても、交通事故による傷害の治療が長期にわたり、卒業や就職が遅れた場合には、就職すれば得られたであろう収入が損害として認められます。
失業中の人には休業することによる損害は発生しないので、一般的には休業損害を請求することはできません。しかし交通事故に遭わなければその傷害の治療期間中に働けていた可能性が高いような場合には、休業損害が認められることもあります。
家賃や地代の不動産収入、年金収入などで生計を立てている人は、交通事故に遭ったとしても減収することはないので、休業損害を請求することはできません。
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ーーーーーーもっと詳しくーーーーーー 失業保険の受給中に事故に遭ったが、休業損害は?失業保険はどうなる?
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主に給与所得者が、事故の怪我が原因で仕事を休むことになったために減った収入(休業損害)を証明、請求するための書類で、被害者の勤務先が作成するものです。
会社員(正社員)、パート、アルバイトの場合にこれを使います。
実際に減った収入を補てんするのが休業損害の目的ですから、休業損害証明書は、休業の状態と本来の勤務状況が分かることが重要であり、多少の書き方の違いが大きな問題となるわけではありません。
この部分には休んだ日と共に、勤務先の所定の休日を記入します。会社員(正社員)であれば休んだ日(つまり勤務予定日や勤務先休業日を含めた本人の休業日)が分かりやすいですが、勤務予定が不明確なアルバイトなどの場合は、判断が少し難しいかもしれません。
この部分の、本給と付加給の分け方に悩む方もいらっしゃいます。
実際に休業損害の補償をする場合は「本給+付加給」の合計額を給与と考えて計算しますので、分け方はあまり深く考えず、例えば基本給を本給、それ以外は付加給、というような感じで結構です。
また、控除額には社会保険料と所得税しか書く欄がありませんが、実際にはその他の控除もあると思いますので、差引支給額の欄には実際に本人に支給された「手取り」を書くのかどうか、という疑問もあります。
ですがこの差引支給額には、その左に書いた「本給と付加給の合計額」から「社会保険料、所得税」を差し引いた金額を書いてください。実際に本人に支給した「手取り」とは違います。
以下に、1.から4.までの記入例を示します。
事故受傷以来、連続して15日休み、職場復帰後、通院のために早退(または遅刻)を3回した場合
全て有給休暇を使ったので(早退、遅刻は有給0.5日)、有給休暇12.5日で、その間の給与は「全額支給した」となります。
有給休暇の消費は12.5日分ですが、事故から一度も出社せずに連続して休んでいた期間は、土日の勤務先休業日も休業損害の対象となります。
従ってこの場合は9月24日から10月8日までの15日間と、半日休業の1.5日を合わせた16.5日が休業損害の対象日数です。
事故の怪我による休業が影響して賞与が減額されてしまった場合は、この休業損害証明書には書かず、別途「賞与減額証明書」を提出します。
週に3日~4日程度の勤務日数、時給1,000円だった人が21日間休み、その後次の週に1時間ずつ3日遅刻して通院した場合
それまで通り週に3日か4日勤務していたと想定して記入します。
遅刻を書く決まりは記載されていませんが、通常は△を書き、その内訳を4.に記載します。
今回は休業した日と1時間遅刻3日分が混在していますので、「イ.全額支給しなかった」と「ウ.一部減給した」の両方に○を付けます。
計算根拠のところに遅刻減給のことと、欠勤分は支給しなかった旨を記載します。
基本は「保険会社が理解できる」書き方をすればいいわけですから、そのように考えて書いていけばいいと思います。
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