TEL.03-5393-5133
〒177-0042 東京都練馬区下石神井1-8-27-305
橋本行政書士事務所
こちらでは、自賠責保険のしくみや慰謝料の計算方法を説明します。
「え!自賠責保険って車の修理代は出ないの?」
と驚かれる方が、実際にいらっしゃいます。自賠責保険に入っているから、軽い接触事故ぐらいなら相手の修理代は出るだろう、と思っていたとのことです。
自賠責保険は「他人の怪我に対する賠償」のお金が出るだけで、車とか塀とかガードレールなど「もの」の損害に対しては支払われません。
「もの」の損害に対する賠償は、任意保険で補うしかないのです。
また、自賠責保険は他人を死傷させたことによる損害について補償するものですので、自分が怪我をしたことによる損害を自分の加入する自賠責保険により補償を受けることはできません。
自賠責から支払いがされないケース
|
※自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は、自動車損害賠償補償法(自賠法)に基づいて、自動車の運行により生命または身体が害された人身事故の被害者を救済する目的で、全ての自動車に対し、契約することを義務づけている強制保険です。
自賠責保険の加入の対象となる自動車は、通常の4輪自動車、オートバイ、原動機付自転車などが含まれますが、足踏み式自転車は含まれません。
→
〜コラム〜 |
自賠責保険の保険金は、国土交通大臣および内閣総理大臣が定める支払い基準に従って支払われます(自賠法16条の3)。
傷害(怪我)による損害は、支払い限度額120万円の範囲内で治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料が支払われます。
後遺障害による損害は、後遺障害の程度に応じた等級に従って75万円から4000万円を支払い限度として、逸失利益および慰謝料などが支払われます。
死亡による損害は、支払限度額3000万円の範囲内で葬儀費、逸失利益、被害者本人および遺族の慰謝料が支払われます。なお、死亡するまでの傷害による損害は、別途傷害による損害の支払いと同様に支払われることになります。
→自賠責保険の支払基準が改正されました(2020年4月)
自賠責保険では慰謝料は1日あたり4,300円として、対象となる日数分を合計して算出する、という決まりになっています。
問題は「対象となる日数とはなにか」ということです。
具体的には、以下の二つの数値を比較して、少ない方の数値を対象となる日数としています。
1.治療期間(事故から完治日または症状固定日まで)の全日数
2.実通院日数(入院日数+実際に通院した日数)の二倍
つまり、普通は治療期間の日数ですが、通院頻度が「2日に1回以下」の場合は実通院日数の二倍、ということです。 例えば、
交通事故に遭って20日間入院し、退院後の通院期間が90日間(その間の実通院日数は30日間)だった場合
1.の「治療期間」は 20+90=110日
2.の「入院、実通院日数の二倍」は (20+30)×2=100日
となりますので、少ない方の100日が対象となり
100×4,300円=430,000円 が自賠責基準での慰謝料額となります。
自賠責の慰謝料対象日数をさらに詳しく ↓↓
自賠責の慰謝料は、診断書の治療最終日が「治癒見込」「中止」「転医」または「継続」となっている場合、治療最終日に7日を加算して慰謝料を計算します。
つまり、最後の診断書に医師が「治癒」に○を付けるか、「中止」に○を付けるかだけの違いで、慰謝料は7日分変わってしまうのです。
治療期間の考え方 | ||
起 算 日 (治療開始日) |
@ | 事故後7日以内に治療開始した場合は、「事故日」を治療開始日とします。 |
A | 事故後8日以降に治療開始した場合は、「治療開始日前7日を治療期間に加算」します。つまり治療開始日の7日前が治療開始日となります |
|
治 療 の 中 断 (転医などで治療を中断した場合) |
@ | 治療の中断期間が14日以内の場合、その中断期間中の日数を治療期間に含めます。 |
A | 治療の中断期間が15日以上にわたる場合は、当初の治療期間と再治療期間に分離して当初の治療期間に7日を加算します。 |
|
B | 中断期間が15日以上にわたる場合でも、同一医療機関で同一傷病につき治療継続している時は、通算して全日数を総治療期間として対象日数にします。ただし、因果関係に疑義がある場合は除かれます。 |
|
最 終 日 |
@ | 診断書の治療最終日が「治癒見込」「中止」「転医」または「継続」となっている場合、治療最終日に7日を加算します。 |
A | 「治癒日」が治療最終日から7日以内の場合、「治癒日」を最終日とします。 |
|
B | 「治癒日」が治療最終日から8日以降の場合、治療最終日に7日を加算します。 |
@長管骨及び脊柱の骨折・変形等でギプスを装着しているとき |
長管骨とは、上肢なら「上腕骨・撓骨・尺骨」 |
A長管骨に接続する三大関節部分の骨折・変形等で長管骨を含めギプスを装着しているとき |
三大関節部分とは、上肢なら「肩甲骨・鎖骨・手根骨」 |
B体幹ギプスを装用しているとき |
体幹ギプスとは、脊椎の安静固定のために胴部に装着されるもの |
※慰謝料対象日数とされるギプス固定はギブスシーネ、ギブスシャーレ、副子(シャーネ) |
|
※ギプス固定しているときに入通院があった場合は重複して対象日とはしません。 |
自賠責保険金額は1事故あたりではなく死傷した者1人当たりの金額ですから、1つの事故で複数の被害者がいても、それぞれの被害者の支払い限度が減らされることはないのです。
また、加害者が複数いる事故の場合、保険金額を複数倍した額が限度額となります。例えばタクシーと他の車の両方の過失によって接触事故が起きてタクシーの乗客が怪我をした場合、乗客はそれぞれの車にかかっている自賠責保険に請求することができますから、支払限度額は2倍(傷害についての損害なら240万円)となります。
→ 当事務所のサポート
タクシー乗車中に事故に遭った場合のことは、知っておきましょう。
自分が乗客として乗車中に、そのタクシーが事故を起こして怪我をした場合、事故の状況によって、請求する相手や賠償金の「支払われ易さ」が違ってきます。
自分が遭った事故が、以下のどの状況に近いのかを考えてみてください。
自分が乗っていたタクシーが止まっているときに別の車が追突してきたなど、「別の車が全面的に悪い事故」の場合、被害者であるあなたが請求する相手は「ぶつかってきた別の車の運転手」となります。実際にはその別の車の対人賠償保険(任意保険、自賠責保険)から支払われます。
タクシーと別の車の事故で、どちらかが一方的に悪い(過失100%)という事故ではなく、双方に過失がある場合(10:90とか、20:80とか)は、その過失の割合に関わらず被害者(乗客)はどちらに対しても、治療費や慰謝料など損害額の全額について請求できるということになっています(いずれか一方の加害者(の任意保険会社)が損害の全額を賠償した場合には、後に加害者同士でお互いの過失割合に応じた清算が行われる)。
被害者であるあなたは、どちらの過失が何パーセントなのか、ということは気にせず、どちらかに全額請求すればいいということです。
ただ、自賠責に関しては両方の自賠責保険を使うことができ、「限度額が二倍(つまり240万円)」となります。賠償額が二倍、ではありません。
つまり、通常であれば「先に自賠責から限度額の120万円をもらい、その後120万円を超える部分について任意保険と交渉する」のが、共同不法行為の場合は「先に二つの自賠責から限度額の240万円をもらい、その後240万円を超える部分について任意保険と交渉する」ということになります。
自賠責の限度額が240万円になると、損害額がその範囲内ですむ場合も多く、任意保険との交渉をする必要が無い、または非常に簡単に済む、ということがあり、何かと便利です。
自分が運転していない事故で関係車両が2台以上ある場合、必ず「共同不法行為」のことを検討しましょう。
自賠責保険は被害者保護を第一の目的としています(自賠法第1条)から、任意保険の支払い基準や一般的な損害賠償と比べて、いくつか被害者に対する救済措置が取られています。
「重過失減額」とは、過失相殺せずに重過失がある場合に限って少しだけ減額する、という制度です。
通常の損害賠償は、被害者にも過失がある場合、その分は差し引いて(相殺して)加害者に請求することになります。例えば被害者の過失が30%(=加害者の過失が70%)なら、被害者は加害者に、自分の損害のうちの70%だけ請求できるのです。
ところが自賠責保険については、被害者の救済措置として「過失があっても相殺せずに全額支払いますよ。ただしあまりにも被害者の過失が多い場合(7割以上)に限って、少しだけ減額しますよ、とされており、これが重過失減額です。
例えば被害者に7割以上の過失があるときは重過失減額の対象として、保険金額を減額する扱いとなりますが、被害者の過失が7割以上であっても10割(加害者に過失がない)で無い限り、傷害による損害については2割しか減額されません。後遺障害または死亡にかかる損害についても、その過失割合に応じて2割ないし5割の減額しかされません。
減額適用上の被害者の過失割合 | 減額割合 | |
後遺障害または死亡に係るもの | 傷害に係るもの | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
ーーーーーーもっと詳しくーーーーーー 損害額150万円だが過失割合50%ある。この場合の支払額は? |
自賠責で被害者に7割以上の過失が認められる基本的な目安を以下に掲げてみます。これは個別事情や各種の修正要素を勘案すると大きく数値が変わることもありますので、参考にとどめておいてください。
被害者の過失 | 歩行者 | 車 | 単車 |
7割以上 | 赤信号横断 | 一時停止違反 | 赤信号直進で右折4輪と衝突 |
8割以上 | なし | 赤信号直進で黄信号車と衝突 | 交差点で左側車両を追い越して左折した際の左側車両との衝突 |
9割以上 | なし | 非優先道路から優先道路との交差点へ進入した際の事故 | 停車中の交差点を左側から追い抜き、あいていた交差点で右からの横断車両と衝突 |
自賠責保険は、任意保険の支払い基準や一般的な損害賠償と比べて、いくつか被害者に対する救済措置が取られています。
上で説明した「重過失減額」の制度もそうですが、似たような制度で「因果関係不明の減額」というものもあります。
これは「事故後の後遺障害や死亡に対して、少しでも事故と因果関係があれば素因減額しませんよ。どうしても因果関係を立証できない場合でも、50%だけ減額しますよ」という制度です。
素因減額とは、元から病気を患っていた人が事故に遭って、事故後に後遺障害が残ったり死亡したりした場合、その後遺障害や死亡の原因の何パーセントかは元の病気(既往症)が原因なのだから、損害額からその分差し引きますよ、というものです。
ところが自賠責保険は被害者救済を目的としておりますので、素因減額はしないことになっています。
「死亡、あるいは後遺障害の原因の何パーセントかは既往症が原因だと思うけど、全額支払いますよ」ということです。
ただ事故後の後遺障害や死亡が、事故が原因なのか元々の病気が原因なのか分からない、というように、事故との因果関係が立証できない場合、下手をすると裁判や示談交渉では「因果関係不明のため支払額ゼロ」などとなりかねません。
ですがそのように事故との因果関係が立証できずに不明な場合でも、50%だけ減額してあとは支払います、というのが「因果関係不明の減額」という制度です。
交通事故に限らず、通常の損害賠償では損害は立証しなければならないのですが、それを立証しきれなくても自賠責保険に関しては救済措置がある、ということです。
ですから、例えば医師などに「事故との因果関係は分からない」などと言われても、すぐにあきらめる必要はありません。
もしかしたら因果関係不明でも自賠責からは半分受け取れる可能性もありますし、やり方によっては因果関係が立証できるかもしれませんので、希望を持ちましょう。
ご不明な点や詳細についてのご質問は、当サイトの「無料お問い合わせ」(メールか電話)をご利用ください。
→
ーーーーもっと詳しくーーーー |
【関連項目】 |