被害者にとって、示談交渉の相手方はたいていは加害者の保険会社となり、示談書は保険会社がきちんとしたものを用意します(保険会社相手の場合は「免責証書」という題名になっていることが多いですが、同じものと考えて構いません)。
ですから金額さえ間違えていなければ保険会社が用意したものに署名捺印すればいいのですが、その場合でも自分自身できちんと内容を確認するために、以下の注意点は理解しておきましょう。
損害賠償金額は、示談内容として最も大切な項目です。これまでの苦労はこの部分を決めるためにあったのです。
最終的にはっきりと「金○○円」と一義的に決めましょう。
→ 示談金と慰謝料の違いは?
損害賠償金額がどれほど高額に決められたとしても、現実の支払がなければ意味がありません。
支払期日を、平成○年○月○日というように明確に決めましょう。
支払方法についても十分注意する必要があります。一番確実な支払方法は全額を一括で受け取ることです。加害者が加入する保険会社による支払の場合には、通常一括での支払となりますが、加害者本人から支払を受けるときでも一括が望ましいでしょう。
やむを得ず分割払いという方法を選択する場合には、分割金ができるだけ確実に支払われる方法をとらなければなりません。その方法としては頭金を大きくする、資力のある保証人を付ける、分割金の支払に怠りがあれば直ちに加害者の不動産や預貯金などの財産から強制執行手続きで取り立てができるように示談書自体を執行認諾文言付きの公正証書にするなどしておくと良いでしょう。
示談書の作成について、法定の形式はありません。しかし示談書の内容は、加害者が被害者に対して一定の金額の支払いを約束するものでありますし、後日争いが生じたときは重要な証拠となるものです。
したがって、示談書には以下のような内容をはっきり分かるように記載するようにします。
1 | 当事者の特定(名前と住所) |
2 | 事故の特定 |
3 | 関係車両の特定 |
4 | 被害状況 |
5 | 示談内容(期日、金額) |
6 | 精算条項 |
7 | 作成年月日 |
稀なケースですが交通事故の示談交渉の場に、保険会社の人でもなく、弁護士や相手方の親族でもないような素性のよく分からない人が来ることがあります。
そのような場合、まずはその代理人と名乗る人が本当に相手方の委任を受けているかどうかを確認しましょう。委任状を持っているか確認したり、委任状を持っていても相手方に連絡をして、その人に示談交渉を頼んでいるかどうかを確認するべきです。
代理人になるのは、普通は保険会社や弁護士、近親者などですが、弁護士以外の者が報酬を得る目的で他人の事件を処理することは弁護士法違反です(保険会社は特別に許されています)。
ところが交通事故では、いわゆる「示談屋」とか「事件屋」などと呼ばれる者が、高額な報酬を得る目的で代理人として出てくることがあります。このような場合は、不当な示談をしてしまうなど無用なトラブルに巻き込まれることになりかねませんので、示談屋ではないかと疑われる場合は、加害者本人にうったえるなどしてそのような者との示談交渉を拒否するべきでしょう。