任意保険にではなく、自賠責保険に保険金(または賠償金)を請求する場合、あなたが加害者なのか被害者なのかによって請求方法や呼び名が変わります。
交通事故の、被害者とは誰のことで、加害者とは誰の事でしょうか。
一般的には過失割合の大きい方(より悪い方)を加害者、小さい方を被害者と呼びますが、自賠責保険では怪我をした方を被害者、怪我をさせた方を加害者、と呼びます。
双方の当事者が怪我をしていれば、お互いが加害者であり被害者でもあることになります。
自分はたいして悪くないのに加害者呼ばわりをされて不愉快になる人もいますが、自賠責保険の性質上、過失の大小ではなく、賠償する側=加害者、賠償される側=被害者となりますので、「加害者請求」「被害者請求」についてはそれをふまえてご理解ください。
被害者請求は被害者が直接加害者の自賠責に請求する方法です(自賠法16条1項)。
これは、被害者が加害者の加入している自賠責保険会社に対し、必要書類を添えて直接損害賠償金の支払いを請求します。
→ 自賠責保険への被害者請求の必要書類はこちら
被害者が請求する場合(被害者請求の場合)は「損害賠償請求」となります。
被害者請求は、以下のような人からされることになります。
・被害者本人
・被害者の家族
・親権者(被害者が未成年の場合)
・遺族(被害者が死亡した場合)
・委任された人(委任請求)
加害者が保険金を請求する場合は加害者請求となります。
この方法は、自賠責保険に加入している加害者が被害者に損害賠償金を支払った上で、その実際に支払った限度で自分の自賠責保険会社に対し、領収書その他必要書類を添えて加害者が保険金を請求する方法です。
加害者が請求する場合は「保険金請求」となります。
加害者請求をするのは、加害者本人からの他にも任意一括払いの対応をしている任意保険会社からもあります。
これも加害者請求の一種です。加害者が任意保険に入っている場合、通常は加害者側の任意保険会社が自賠責保険の分も一括して被害者に賠償金を支払い、後で加害者に変わって自賠責に請求をします。これを一括払い制度といいます。
この制度により、被害者は自賠責保険会社(または加害者)と任意保険会社に対する請求手続きが一本化されるという利点がありますが、任意保険会社との示談が進まない場合など、自賠責保険会社に対して被害者請求をした方が良い場合もあります。
多くの場合、怪我の治療中は任意保険会社が医療機関に直接治療費を支払う一括払い(一括対応)となっています。
一括払いは加害者請求の一種ですが、後遺障害の認定申請の時のみ、任意保険会社に手続きを頼む(これを事前認定と言います)のではなく、被害者請求として自賠責保険に直接申請する、ということもよく行われます。
「後遺障害の申請手続きを、これまで一括対応してもらっていた任意保険会社に対して行うのは事前認定」
「後遺障害の申請手続きを自賠責保険に対して行うのは被害者請求」
なぜこれまで治療費などを一括対応してもらってたのに、後遺障害の申請だけ被害者請求にするのでしょうか。
そもそも後遺障害の申請で、事前認定と被害者請求の違いはどのようなことでしょうか。
→ 事前認定と被害者請求の違い
(メリット・デメリット)
被害者請求のみに認められている制度です。
被害者に対する損害賠償は、本来は加害者の責任の有無や割合、賠償金額等が確定してからなされるものであるため、請求から支払いまでに相当日時がかかってしまいます。
しかしそれでは、被害者が治療費や葬儀費用などの当座の支払いに困窮する場合があるので、そのような被害者の当座の出費の充てるために仮渡し金を前払いしてもらう請求をすることができるとされているのです(自賠法17条)。
仮渡し金の金額は、死亡の場合290万円、傷害の場合はその傷害の程度に応じて5万円、20万円、40万円とされています。
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