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橋本行政書士事務所
損益相殺とは、簡単に言うと「二重取りを防ぐ制度」です。
「被害者が治療中に労災保険などから既に支給を受けている場合、完治後の示談交渉時に加害者に請求する金額は、既にもらっている分を差し引いて請求しますよ」ということです。
学術的に言うと「当該交通事故により損害を被った者が損害を被った原因と同一の原因によって利益を受けた場合に、その利益の額を損害額から控除すること」となります。
これは損害の公平な分担という不法行為の理念に基づいて一定の場合に認められています。
→ コラム「労災から支給されていても自賠責も全額支払い!?」
これらのものをもらっていれば、加害者から支払われる損害賠償金から差し引きますよ、という項目です。
〜コラム〜 <労災から支給されていても自賠責も全額支払い!?> 少し前のことになりますが、平成30年9月28日の読売新聞に「(労災からの給付を受けていても)自賠責から被害者に全額支払い」という記事が出ていました。 最高裁で9月27日に出た判決のようです。 このページでも説明しておりますが、被害者の請求先が相手の自賠責や、自分の労災保険や人身傷害保険などいくつかあっても、同じ項目について二重取りはできないのが原則です。 今回の最高裁判例は、その原則を覆すものなのか?と気になったので、その最高裁の判決を見てみました。 結論としては、原則(被害者の二重取りを防ぐ)を覆すという内容ではありませんでした。 この判例の内容を整理すると @被害者は、センターラインを越えてきた加害車両との車同士の接触事故で、右腱板断裂後に右肩関節機能障害を残し、労災から療養補償給付(治療費)、休業補償給付及び傷害補償給付を受けました(最高裁判例にはこの部分の金額の記載はありませんでした)。 →このことで、労災保険法12級の4第1項により、給付した金額の限度で相手方自賠責保険への直接請求権は、国に移転します。 A被害者の主張としては、上記労災から給付を受けた分以外に、傷害で約303万円、後遺障害で290万円の損害があると主張しています。 →労災は「慰謝料」の概念がありませんので、上記被害者の「労災以外の分」は、通院の慰謝料や休業損害の4割分、後遺障害の慰謝料などと考えられます。 B上記@の被害者から労災に移転した直接請求権と、Aの被害者に残っている直接請求権のどちらが優先されて相手方の自賠責から支払われるのか、ということが争われた裁判でした。 つまり「被害者が労災と自賠責から二重取りできるのかどうか」ではなく、自賠責保険の限度額は限られているので(今回は後遺障害等級12級なので傷害分120万円と後遺障害12級の224万円の合計344万円)、「労災(国)も被害者もどちらにも相手方自賠責に対する正当な請求権があるが、そのどちらが優先されるのか」というものでした。 相手方自賠責保険会社は「労災の請求権のある金額と、被害者の労災以外の損害額を案分して自賠責から双方に支払う」と主張していたようですが、結局は掲題のとおり「被害者を優先して全額(344万円)被害者に支払う」ということでした。これは1審判決をそのまま支持したものです。 考えてみれば、自動車損害賠償保障法(自賠法)や自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は被害者保護を図ることが目的で作られていますから、被害者への補償は、国の請求権と同等などではなく優先されるのは当然ともいえます。 とはいえ最高裁の判例が出た以上、今後はこの運用が一般的になると思われます。つまり「自賠責の限られた保険金を被害者と国とで取り合った場合は被害者が優先される」ということです。 |
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