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過失割合(過失相殺率)はどのように決められるのか

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橋本行政書士事務所

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過失割合はどのように決められるのか(判断基準)

こちらでは、過失相殺(過失割合)の考え方や算定表の見方などについて説明しています。
<このページの目次>

1.過失相殺の算定基準がある

過失相殺における過失割合の判断を迅速かつ定型的に行うことができるようにするために、裁判所や弁護士会は過去の裁判例などを参考にして、典型的な交通事故の形態について過失割合を判断するための算定基準表を作成し公表しています。裁判所や保険会社は、おおむねこの算定基準に沿った形で過失割合を判断しています。

 → 過失割合(過失相殺率)は誰が決めるのか


民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)
【東京地裁民事交通訴訟研究会編、別冊判例タイムズ第38号】
民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(2019年版)
【(公財)日弁連交通事故相談センター東京支部編】
交通事故損害額算定基準(26訂版)
【(公財)日弁連交通事故相談センター編】

2.算定基準表の見方と使い方

算定基準表による事故の形態は、次の5つに分かれています。

@歩行者と車
A4輪車同士
B単車と4輪車
C自転車と4輪車
D高速道路上の事故

これらの事故の類型ごとに事故当事者の過失相殺率(基本過失相殺率)が明記されています。また、基本過失相殺率を修正するための修正要素に該当する場合には、その修正要素ごとに5〜20%の加算または減算をすることになります。

なお、算定基準表に記載されている修正要素はあくまでも例示にすぎませんから、これ以外にも過失相殺に反映させるべき事由(例えば運転中の携帯電話など)がある場合には、修正要素として考慮する必要があります。

<使い方>

具体的な事故において過失相殺率を検討するためには、下の図のような流れで算定基準表を使っていきます。

1.事故類型の選択

  • 当該事故の形態を見て、算定基準表のどの類型に該当するのかを検討します。該当する類型がない場合には、どの類型に類似するかを検討します。

2.修正要素該当性の検討

  • 当該事故において、1.で検討した類型の修正要素に該当する事情があるか否かを検討します。

3.過失相殺率の計算

  • 最後に、該当または類似する類型に記載されている基本過失相殺率に修正要素ごとの割合を加減して、当該事故の過失相殺率を計算します。

双方の主張が違い、話がまとまらなければ最終的には裁判官の判断によることとなります。


3.過失割合の修正要素

一方に著しい過失があれば基本割合に20%加算するなど、割合を修正するための要素も、公表されてある程度定型的になっています。

過失割合の修正要素には、一方の過失相殺率を増加させる要素(加算要素)と、減少させる要素(減算要素)とがあります。詳しくは下の表をご覧ください。

3-1.歩行者と車の事故の場合


歩行者の過失相殺率の修正要素例
(修正事由に応じて5〜20%の加算・減算)
  修正事由 説明

夜間 夜間においては、車両から歩行者の発見が必ずしも容易ではないのに対し、歩行者からは車両のライトにより、車両を容易に発見できることから加算事由とされています。
横断禁止場所 道交法13条2項
幹線道路 幹線道路として、車両の通行が頻繁な国道や一部の県道のような道路が想定されています。
直前直後横断 道交法13条1項
佇立 特段の事情がないにも関わらず、立ち止まったり、後退したり、ふらつきながら歩いたりした場合には、加算事由となります。
後退
ふらふら歩き

幼児・児童・老人 幼児は6歳未満の者、児童は6歳以上13歳未満の者、老人はおおむね65歳以上の者
道交法71条2号該当者 道交法71条2号該当者とは、身障者用車椅子に乗っている者、目の見えない者その他身体に障害がある者が一定の杖を携えている場合や盲導犬を連れて通行している場合などをいいます。
集団横断(通行) 集団登校や横断者が多数いて車からの発見が容易であるために歩行者側の減算事由とされています。
車両の著しい過失 車両の著しい過失とは、脇見運転など前方不注視が著しい場合、酒酔い運転に至らない酒気帯び運転、速度違反のうち時速15キロ以上30キロ未満の速度違反、著しいハンドルまたはブレーキの操作ミスなどです。
車両の重過失 車両の重過失とは、居眠り運転、無免許運転、時速30キロ以上の速度違反、道交法上の酒酔い運転、ことさらの嫌がらせ運転など故意に準ずる加害行為などです。
歩車道の区別なし 歩車道の区別のない道路においては、道路としては幅員が狭く、より危険な道路であることを運転者において認識できることから、歩行者側の減算事由とされています。
 → 横断歩道と歩道橋の法律上の意味合いの違いは?(過失割合に影響するか)

3-2.四輪車同士の事故


四輪車同士の事故における修正要素例
(修正事由に応じて5〜20%の加算・減算)
修正事由 説明
著しい過失 著しい過失とは、脇見運転など前方不注視が著しい場合、酒酔い運転に至らない酒気帯び運転、速度違反のうち時速15キロ以上30キロ未満の速度違反、著しいハンドルまたはブレーキの操作ミスなどです。
重過失 車両の重過失とは、居眠り運転、無免許運転、時速30キロ以上の速度違反、道交法上の酒酔い運転、ことさらの嫌がらせ運転など故意に準ずる加害行為などです。
大型車 大型車は危険が大きくまた交差点を大きく閉鎖する形になることから、運転手の注意義務が高いとして修正要素(加算要素)とされています。
道交法50条違反の直進 交差点などへの進入が禁止される状況であるにもかかわらず、交差点へ進行した場合を意味します。
直近右折 交差点において直進車の至近距離で右折する場合をいいます。「直近」となる程度について、直進車が通常の速度で停止線を越えて交差点に入る付近まで来ている場合に右折を開始した場合には直近であると解されています。
早回り右折 道交法34条2項に定められている「交差点の中心の直近の内側を進行する右折の方法」によらない右折をいいます。
大回り右折 道交法34条2項において「右折しようとする場合にはあらかじめできる限り道路の中央によらなければならない」と定めているにもかかわらず、中央によらない右折をいいます。
既右折 右折しようとする車が、すでに対向直進車線に入っている場合で、対向直進車が少しスピードを落とせば事故が避けられたであろう場合をいいます。

3-3.自転車と四輪車の場合

自転車と四輪車との事故における自転車の過失相殺率の修正要素例
(修正事由に応じて5〜20%の加算・減算)
  修正事由 説明

高速度進入 「高速度」とは、おおむね時速20キロメートルを超過している速度をいいます。
夜間 夜間においては、車両から自転車の発見が必ずしも容易ではないのに対し、自転車からは車両のライトにより、車両を容易に発見できることから加算事由とされています。
自転車の著しい過失 酒酔い運転、脇見運転、二人乗り、制動装置不良、無灯火(但し事故態様から見て、無灯火が事故と関連がある場合に限られます)がある場合に該当します。
自転車の重過失 手ばなし運転などが該当します。

横断歩道進行 横断歩道を通過する場合には、四輪車などの運転者が横断歩道付近については、歩行者保護のため慎重な運転をするであろうとの信頼が生じることから、自転車側の減算要素とされています。
児童・老人 幼児は6歳未満の者、児童は6歳以上13歳未満の者、老人はおおむね65歳以上の者
四輪車の著しい過失 脇見運転など前方不注視が著しい場合、酒酔い運転に至らない酒気帯び運転、速度違反のうち時速15キロ以上30キロ未満の速度違反、著しいハンドルまたはブレーキの操作ミスなどです
四輪車の重過失 居眠り運転、無免許運転、時速30キロ以上の速度違反、道交法上の酒酔い運転、ことさらの嫌がらせ運転など故意に準ずる加害行為などです。

4.こんな場合どうなる?

こちらでは少し特殊な場合の過失割合の考え方を説明しています。

4-1.無免許運転の場合の過失割合

事故に巻き込まれると身体的な苦痛のほかに、ただでさえ今後のことが不安で仕方ないのに、よりによって事故の相手が無免許運転だった場合、どうなってしまうのでしょうか。
・相手の保険はおりるのか
・きちんと賠償してもらえるのか
・こちらにとって不利になったり有利になったりすることがあるのか

無免許運転は犯罪です。犯罪には刑事罰として罰金や懲役などが科せられます(道路交通法第117条の2の2)。

交通事故で他人に怪我をさせることも「自動車運転過失致傷」という犯罪ですが、無免許運転で怪我をさせると「危険運転過失致傷」とされる可能性が高まります。つまり非常に重い罰が科せられる、ということです。

これは無免許運転をした人が悪いので、重い罰を課せられても仕方ありません。こちらには関係ないことです。
問題は「相手が無免許だったことで、こちらに不利益が発生しないかどうか」です。

交通事故の被害者が加害者と関係するのは「被害者の損害を加害者(の保険)に賠償してもらう」という部分です。


加害者側の「対人賠償・対物賠償」は使える

相手の車が任意保険に入っていれば、無免許運転でも対人賠償や対物賠償など「他人に対する賠償」は保険から支払われます。自賠責保険も同様です。
つまり被害者にとっては、この部分は相手が無免許であってもそうでなくても変わらないということです。

相手が任意保険に入っていればとりあえず一安心ですが、そもそも無免許運転をするような人はモラルが低いということですから、任意保険に入っていない可能性も通常より高いと思います。

相手が任意保険に入っていなければ、自分でかけている任意保険の「人身傷害保険」を頼ることになります。

これは「本来加害者が払うべき賠償金を、自分の保険が払ってくれる(その分は後日自分の保険会社が加害者に請求します)」というものですから、大変頼りになります。

ただ、保険を掛けている車に乗車中の場合にだけ支払われるとか、自転車に乗っていたり歩いているときにほかの車にぶつけられたりしたときでも支払われるなど、条件がさまざまなので、是非ともご自身の保険の内容を確認しておいてください。
(自家用車が無ければ入れませんが)


過失割合は、無免許運転は「重過失」に該当して修正要素となる場合がある

出合がしらの事故など、どちら側にも過失があるような場合には、無免許運転は「重過失」として相手方に有利になるように過失の割合が修正されることがあります。

ただ、赤信号停止中に追突された車の運転手(被害者)が無免許だったような場合、無免許だったために事故が起きた(追突された)というわけではなく、つまり事故と無免許との因果関係はありませんから、このような場合に無免許運転の修正はなされません。

そうは言っても事故当事者間での過失割合に影響しないというだけであって、無免許は犯罪なので、それとは別に刑罰や行政罰は科される可能性があります。


4-2.緊急自動車が事故の当事車両となる場合

めったにないことですが、極まれに緊急自動車が交通事故の当時車両になることがあります。緊急自動車と一般車両が衝突する、ということです。
そのような場合の過失割合はどう考えるのでしょうか

緊急自動車とは

救急車まず「緊急自動車とは何か」ということですが、緊急自動車とは

「消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう」(道交法39条1項のかっこ書)

ということになっています。分かりやすくいうと、サイレンを鳴らして赤色の警告灯をつけている救急車かパトカーか消防車と考えればいいと思います。

ただパトカーや救急車であれば緊急自動車ではなく、サイレンと赤色灯の両方を使用している状態でなければ緊急自動車とはいえません。

緊急自動車に認められる特例

特例として主なものは、

・追い越しをする場合その他やむを得ない場合には、はみ出し禁止場所でも道路の右側にはみ出しても良い。

・法令の規定により停止しなければならない場合(代表的なのは赤信号の交差点)でも停止することを要しない。ただし他の交通に注意して徐行しなければならない。


つまり、緊急自動車は赤信号で停止することまで求められていないが、注意して徐行しなさいよ、ということです。

一般車両の義務

・緊急車両が近づいたときは、一般の車両は交差点を避けて道路の左側に寄って一時停止しなければならない。
とされています。

緊急自動車が赤信号、一般車両が青信号の、交差点での出合がしらの事故の場合

交差点での一方が青信号、もう一方が赤信号の事故の場合、一般車両同士なら当然赤信号側の車両に過失100%ということになるかと思いますが、当事車両が緊急自動車になると上記で説明したように

・赤信号での停止義務が免除されている。
・一般車両は交差点またはその付近で緊急自動車が接近してきたときは、交差点を避け、かつ道路の左側に寄って一時停止しなければならない義務がある。


ということになっています。そうすると緊急自動車赤信号、一般車両青信号のこのような場合に、停止すべきは一般車両の方ということになります。一般車両は青信号で交差点に進入していても、一時停止義務を怠ったことになってしまい、一時停止義務を負う立場が逆転してしまいます。

とはいえ緊急自動車も、赤信号で一時停止する必要はないものの、他の交通に注意して徐行しなければならないという義務はありますので、完全に免責というわけでもありません。

過失割合を見ると、別冊判例タイムズ38「過失相殺率の認定基準」では

「緊急自動車側が赤信号」「一般車両側が青信号」の、四輪車同士の交差点での出合がしらの事故

について、
20(緊急自動車)対80(一般車両)としています。

これは見通しの悪い交差点を想定しており、修正要素として「見通しがきく交差点」なら一般車両に+10%とか、緊急自動車が徐行していたとしたらさらに一般車両に+10%などとしています。
一般車両に有利な修正としては、一般車両が走行していた道路が幹線道路だった場合に、一般車両に−10%としています。

運転免許の教習所に通っていたころから、緊急自動車が来たら止まって道を譲りなさい、と習ってきたとおりですが、万が一緊急自動車との事故が起こった場合、多くは一般車両の過失になってしまう、ということを心しておきましょう。



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