過失割合(過失相殺率)を考える場合、事故の状況が算定基準のどの事故類型に該当するかを検討し、その後修正要素を考慮して割合を修正していきます。
ここではその「修正要素の用語の意味」を詳しく説明します。
→ 過失割合(過失相殺率)は誰が決めるのか(別ページ)
→ 無免許運転の場合の過失割合は?
修正事由 | 説明 | |
加 算 |
夜間 | 夜間とは、日没後から日の出時までの時間をいいます。また、夜間以外の時間だとしても、トンネル内や濃霧がかかっていて「視界が50m以下(高速道路では200m以下)」の場所も車両の点灯義務がありますので、夜間と同様に修正要素とします。 夜間は車両から歩行者の発見が容易でないのに対し、歩行者からは車両を容易に発見できるため、歩行者に割合が加算されます。 |
横断禁止場所 | 道路交通法第13条2項で「歩行者は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない」とされています。具体的には歩車道の区別があり、横断禁止の標識やガードレールやフェンス等が設置されている場所を想定しています。 | |
幹線道路 | 主に、歩車道の区別があって、車道の幅員がおおむね14m以上(片側2車線以上)で、車両が高速で走行し、通行量の多い国道や一部の都道府県道を想定しています。 | |
直前直後横断 | 道路交通法第13条1項で「歩行者は、車の直前・直後で道路を横断してはならない」とされています。 直前又は直後の範囲については「車両の速度との関連において、客観的に危険を生ずるおそれがあると認められる場合」と、やや具体性に欠けます。状況で判断するということです。 |
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佇立 | 特段の事情がないにも関わらず、立ち止まったり、後退したり、ふらつきながら歩いたりした場合には、加算事由となります。 | |
後退 | ||
ふらふら歩き | ||
減 算 |
児童・高齢者 | 「児童」とは、6歳以上13歳未満の者をいい、6歳未満は幼児といいます。 「高齢者」はおおむね65歳以上のものをいいます。 |
幼児・身体障害者等(歩行者) |
「幼児」は6歳未満の者をいいます。 身体障害者等とは、道交法第71条2号に規定されています。 @身体障害者用の車いすを通行させている者 Aつえを携え、又は盲導犬を連れている目が見えない者 Bつえを携えている耳が聞こえない者 C道路の通行に著しい支障がある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害又は平衡機能障害のあるものでつえを携えている者 |
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集団横断(通行) | 集団登下校など、歩行者が集団で道路を横断・通行することをいいます。車からの発見が容易であるために歩行者の過失割合の減算理由となります。 | |
歩車道の区別なし | 歩車道の区別のない道路においては、道路としては幅員が狭く、より危険な道路であることを運転者において認識できることから、歩行者側の減算事由とされています。 |
修正事由 | 説明 |
車両の著しい過失 | 車両の著しい過失とは、脇見運転など前方不注視が著しい場合、酒酔い運転に至らない酒気帯び運転、速度違反のうち時速15キロ以上30キロ未満の速度違反、著しいハンドルまたはブレーキの操作ミスなどです。 |
車両の重過失 | 車両の重過失とは、著しい過失よりもさらに重い、重大な過失のことです。 居眠り運転、無免許運転、時速30キロ以上の速度違反、道交法上の酒酔い運転、ことさらの嫌がらせ運転など故意に準ずる加害行為などです。 |
大型車 | 大型車とは大型自動車のことで、車両総重量が11,000KG以上のもの、最大積載量が6,500kg以上のもの又は乗車定員が30人以上のものをいいます。 大型車は危険が大きくまた交差点を大きく閉鎖する形になることから、運転手の注意義務が高いとして修正要素(加算要素)とされています。 |
道交法50条違反の直進 | 交差点に入ろうとする車両は、例えば渋滞などで交差点に入ると交差点内で停止してしまうような状況の時には、交差道路の車両等の通行の妨害になってしまうので、このような時には交差点に入ってはならないことになっています(道交法第50条)。 直進車への加算要素となります。 |
直近右折 | 交差点において直進車の至近距離で右折する場合をいいます。「直近」となる程度について、直進車が通常の速度で停止線を越えて交差点に入る付近まで来ている場合に右折を開始した場合には直近であると解されています。 |
早回り右折 | 道交法34条2項に定められている「交差点の中心の直近の内側を進行する右折の方法」によらない右折をいいます。 右折車が早回り右折をする場合には、対向直進車や右方車に対する関係で事故の危険性が増すので、右折車に加算要素としています。 |
大回り右折 | 道交法34条2項において「右折しようとする場合にはあらかじめできる限り道路の中央によらなければならない」と定めているにもかかわらず、中央によらない右折をいいます。 大回り右折は他方の車両から右折車が右折することの予見性が低くなって事故の危険性が増すので修正要素としています。 |
既右折 | 右折しようとする車が、すでに対向直進車線に入っている場合で、対向直進車が少しスピードを落とせば事故が避けられたであろう場合をいいます。右折しようとする車が、すでに対向直進車線に入っている場合で、対向直進車が少しスピードを落とせば事故が避けられたであろう場合です。 |
修正事由 | 説明 | |
加 算 |
夜間 | 夜間においては、車両から自転車の発見が必ずしも容易ではないのに対し、自転車からは車両のライトにより、車両を容易に発見できることから加算事由とされています。 |
自転車の著しい過失 | 酒気帯び運転、二人乗り、無灯火、並進、傘をさすなどしてされた片手運転、わき見運転等の著しい前方不注視、携帯電話等を通話のために使用したり、画像を注視したりしながらの運転、などが該当します。 | |
自転車の重過失 | 著しい過失よりもさらに重い、重大な過失のことです。 酒酔い運転、制動装置不良、手放し運転などです。 |
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減 算 |
横断歩道進行(自転車) | 横断歩道を通過する場合には、四輪車などの運転者が横断歩道付近については、歩行者保護のため慎重な運転をするであろうとの信頼が生じることから、自転車側の減算要素とされています。 |
児童・高齢者 | 児童等とは13歳未満の者のことをいい、6歳未満の「幼児」も含み意味合いです。 高齢者はおおむね65歳以上の者のことです。 |
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四輪車の著しい過失 | 四輪車の著しい過失とは、脇見運転など前方不注視が著しい場合、酒酔い運転に至らない酒気帯び運転、速度違反のうち時速15キロ以上30キロ未満の速度違反、著しいハンドルまたはブレーキの操作ミスなどです。 | |
四輪車の重過失 | 四輪車の重過失とは、著しい過失よりもさらに重い、重大な過失のことです。 居眠り運転、無免許運転、時速30キロ以上の速度違反、道交法上の酒酔い運転など故意に準ずる加害行為などです。 |
ーーーーーーもっと詳しくーーーーーー無免許運転の場合の過失割合事故に巻き込まれると身体的な苦痛のほかに、ただでさえ今後のことが不安で仕方ないのに、よりによって事故の相手が無免許運転だった場合、どうなってしまうのでしょうか。・相手の保険はおりるのか ・きちんと賠償してもらえるのか ・こちらにとって不利になったり有利になったりすることがあるのか 無免許運転は犯罪です。犯罪には刑事罰として罰金や懲役などが科せられます(道路交通法第117条の2の2)。 交通事故で他人に怪我をさせることも「自動車運転過失致傷」という犯罪ですが、無免許運転で怪我をさせると「危険運転過失致傷」とされる可能性が高まります。つまり非常に重い罰が科せられる、ということです。 これは無免許運転をした人が悪いので、重い罰を課せられても仕方ありません。こちらには関係ないことです。 問題は「相手が無免許だったことで、こちらに不利益が発生しないかどうか」です。 交通事故の被害者が加害者と関係するのは「被害者の損害を加害者(の保険)に賠償してもらう」という部分です。 加害者側の「対人賠償・対物賠償」は使える相手の車が任意保険に入っていれば、無免許運転でも対人賠償や対物賠償など「他人に対する賠償」は保険から支払われます。自賠責保険も同様です。つまり被害者にとっては、この部分は相手が無免許であってもそうでなくても変わらないということです。 相手が任意保険に入っていればとりあえず一安心ですが、そもそも無免許運転をするような人はモラルが低いということですから、任意保険に入っていない可能性も通常より高いと思います。 相手が任意保険に入っていなければ、自分でかけている任意保険の「人身傷害保険」を頼ることになります。 これは「本来加害者が払うべき賠償金を、自分の保険が払ってくれる(その分は後日自分の保険会社が加害者に請求します)」というものですから、大変頼りになります。 ただ、保険を掛けている車に乗車中の場合にだけ支払われるとか、自転車に乗っていたり歩いているときにほかの車にぶつけられたりしたときでも支払われるなど、条件がさまざまなので、是非ともご自身の保険の内容を確認しておいてください。 (自家用車が無ければ入れませんが) 過失割合は、無免許運転は「重過失」に該当して修正要素となる場合がある出合がしらの事故など、どちら側にも過失があるような場合には、無免許運転は「重過失」として相手方に有利になるように過失の割合が修正されることがあります。ただ、赤信号停止中に追突された車の運転手(被害者)が無免許だったような場合、無免許だったために事故が起きた(追突された)というわけではなく、つまり事故と無免許との因果関係はありませんから、このような場合に無免許運転の修正はなされません。 そうは言っても事故当事者間での過失割合に影響しないというだけであって、無免許は犯罪なので、それとは別に刑罰や行政罰は科される可能性があります。 |
関連項目 |