交通事故の損害賠償では、男女で差があるのでしょうか。
実は数年前までは、顔に傷跡が残った場合の後遺障害に男女の差がありました(今は差がありません)。
例えば顔に4cm(3cm以上5cm未満)の線状の傷跡が残った場合、2011年4月までは、同じ傷跡でも男なら「男子の外貌に醜状を残すもの」として14級が認定され、女なら「女子の外貌に醜状を残すもの」として12級が認定されていました。
自賠責の限度額では14級の75万円に対して12級の224万円と、同じ傷の大きさなのにかなりの差です。
これは不公平だということで2011年5月以降は男女の差が無くなったことは(男女とも12級です)、ご存知の方が多いと思います。
その他、慰謝料はもともと男女に差はありませんが、今でも男女で差がある項目があります。それは逸失利益です。
逸失利益は、死亡したり後遺症が残った場合に「本来死亡していなければ(後遺症が残らなければ)将来得られたはずの収入を、加害者に賠償してもらう」というものです。
これは、事故に遭う直前の被害者の実収入をもとに計算しますが、被害者が学生や家事従事者など実際に収入が無く、金額を証明することができない場合には賃金の統計を取った「賃金センサス」の「平均賃金」を使うことになっています。
これは現実の男女年齢別の平均賃金の統計なので、女性の方が低い金額になっております。まだ就職していない20歳の学生が死亡した場合、その逸失利益を計算するときは、一般的には男なら「男性の平均賃金」、女なら「女性の平均賃金」で計算されますので、逸失利益にはかなりの差がついてしまいます。
まだ仕事についていない、同じ20歳の命でも、男女で差がついてしまうということなのです。今一つ釈然としないのは、私だけではないはずです。
ただまれに、男でも女でも「(男女合計した)全労働者平均賃金」で逸失利益を算出する裁判例が出ています。ですが今後はその流れになるのかどうかは分かりません。