交通事故が発生した場合、加害者に対して損害賠償を請求する人は、直接怪我をした被害者(直接被害者)ですが、まれに直接被害者以外の人が、以下のような理由で被った損害を事故の加害者に請求することがあります。
1.直接被害者が勤務する企業が、間接的に損害を被った場合(企業損害)
2.直接被害者が死亡するなどして、その家族がショックで精神疾患などを発症した場合
以下に検証していきます。
企業が損害賠償を求めるパターンは、以下の二つがあります。
普通に考えるとどちらも事故が原因で生じた損害なので、当然認められるのではないかと思います。
ですが学説では、民法は損害賠償を請求できる主体(請求権者)は、(民法711条の近親者の慰謝料を除いて)直接の被害者に限られる、という考え方が支配的で、このことを原則として判断されています。
民法711条では、死亡した被害者の一定の親族は、被害者の損害賠償請求権を相続することとは別に、その親族固有の慰謝料が認められています。
それ(711条)以外の損害が、直接被害者ではない親族に認められるのか、という話です。
例えば子供(または夫)が交通事故で死亡した場合、その親(または配偶者)がショックでPTSD(心的外傷後ストレス障害)にり患し、後遺障害となったので、その後遺障害(PTSD)の後遺症慰謝料や逸失利益を請求した裁判では、多くは否定的(請求は認められない)です。
(※心療内科等の治療費のみは払う、という場合はあります)
民法711条で近親者の慰謝料が支払われるのだから、その範囲内でガマンしなさい、ということです。
これもやはり、本件交通事故で損害賠償請求権を持つのは直接被害者のみだから、という考えに基づくもののようです。
ただ重傷の被害者の付き添いで家族が仕事を休んだために家族の休業損害を請求する場合、これは直接被害者自身の損害である付き添い費として、「付添費」または「家族の休業損害」の名目で支払いが認められています。
大まかには上記のような感じですが、個々のケースで判断が難しい場合が多いので、よくわからない場合はお問い合わせください。
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