人身傷害保険(人身傷害補償保険)は、自分の過失分も支払ってくれる自分で加入する保険です。
例えば損害額が1000万円で、自分の過失が40%あった場合、加害者からは600万円しか支払われませんが、残りの400万円(自分の過失分)は、自分が加入する人身傷害保険が払ってくれるのです。
ところで税金のことですが、通常加害者から支払われる「損害賠償金」に対しては、所得税などの税金はかかりません。損害賠償金は、損害を補てんして元通りにしただけのことだからです。
ですが上記の人身傷害保険は、自分の過失分まで払ってくれるのですから、損害の補てん以上の金額を支払ってくれる、ということになります。
このばあいの人身傷害保険から支払われる「自分の過失分の保険金」に対しては、税金はかかるのでしょうか。
じつは所得税法では、損害保険金を受け取った場合、保険をかけていた人が突発的な事故による建物の焼失や、心身の障害・疾病を原因として受け取る保険金は原則として非課税とされています(所得税法第9条1項16号)。
結果として「人身傷害保険から受け取る保険金については、死亡事故を除いては非課税」だということになります。
ただし死亡事故の場合には、人身傷害保険から受け取った保険金について税金がかかり、状況によって税金の種類、つまり税額が変わるので要注意です。
以下に例を説明します。
※いずれも総損害額が1000万円、過失は自分40%(相手方60%)、保険契約者・車の保有者・運転者は自分(夫)とします。
自分の人身傷害保険から支払われた1000万円のうち、相手方が支払うべき損害賠償金に相当するのは60%の600万円ですから、400万円が損害賠償金ではなく純粋な「保険金」です。
ですが上で説明したとおり自分の身体の障害、疾病を原因として受け取る保険金は非課税ですから、ここでは税金はかかりません。
死亡事故で1000万円ということはないと思いますが、比較のために同じ金額とします。
この場合は、この1000万円を受け取るのは相続人です。相続人は、仮に配偶者(妻)と子二人だったとすると、法定相続分で分けると1000万円は「妻500万円」「子A250万円」「子B250万円」となります。
このうち、損害賠償金に当たるのは相手方の過失の60%で、残りの40%が保険金となり、課税の対象となります。
ですから課税対象額は「妻200万円」「子A100万円」「子B100万円」ということです。
この場合、保険料を払っていた夫が死亡して夫がもらうべき保険料を相続人がもらったので、税金は「相続税」となります。
死亡者 | 保険金受取人 | 取得金額 | 課税対象額 | 種類 |
自分(夫) | 妻 | 500万円 | 200万円 | 相続税 |
子A | 250万円 | 100万円 | ||
子B | 250万円 | 100万円 |
怪我をしたのが妻だった場合、少し複雑です。
運転していた自分(夫)に40%過失があるとしても、妻に過失はありませんから、本来は1000万円を相手から600万円、夫から400万円もらえばいいことですが、夫の過失分は「家族間の事故」として、任意保険の対人賠償は支払われません(自賠責は支払われます)。
この場合でも夫が加入している人身傷害保険からは1000万円支払われますが、どの部分が課税の対象になるかということです。
→【関連項目】家族間の事故は対人賠償が出ない?
総損害額1000万円の内訳によりますが、仮に傷害分と後遺障害分(例えば12級)の合計で、自賠責から344万円支払われたとすると、夫の過失分400万円のうちの344万円ということになりますから、残りの56万円が課税の対象です。
そしてその種類は、夫が保険料を払って妻が保険金をもらったので、贈与税ということになります。
もしこれで妻が怪我ではなく死亡したとしたら、相続と贈与や、加害者が相続人となる「混同」も関係してきますので、さらに複雑です。
ご自身の場合がどうなるのか、ご不明な方は税務署等にお聞きしてみるのもよろしいかと思います。
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