「痛くてまだ治療を続けたいのに打ち切られた!」お問い合わせでも何度も聞いた言葉です。
少し古いのですが、治療費を打ち切られたことに対して精神的苦痛を受けたとして、保険会社の担当者に対して50万円の慰謝料を請求した、京都地裁平成7年7月28日判決の裁判例があります。
この判例について検討してみます。
結論としては
@仕事が忙しいなどとして2か月間の治療中断があったこと
A示談交渉のテーブルに着いたものの、金額提示を受けた翌日から通院を再開したこと
上記の理由で一括払いの中止に違法性は認められないとして原告の請求を棄却しています。
短絡的な訴えで当然の結果だと思いますが、判決文の中の裁判所の判断が参考になります。
要旨を以下に説明します。
・任意保険による治療費の負担は、損害額が確定している場合を除き、被害者の直接請求権の対象とならない。
・保険会社が任意一括を説明し、治療費の負担を申し出たとしても、治療費を直接の債務として引き受けるまでの合意がなされたとは考えられない。
・従って、任意一括による治療費負担が被害者にとって便利であり、保険制度における被害者救済の機能をはたしているとしても、それが継続される反射的利益について、いつの場合でも保護されるものではない。
・一括払い制度の趣旨の一つとして、被害者の治療を容易ならしめることがあるとしても、賠償すべき損害の範囲等に争いがある場合にまで、支払を継続すべき義務を負担するものではない。
・一括払いの中止により、被害者が裁判上の手続を含めた事後的な賠償請求に及ぶ方途についてまでも、これが閉ざされるものではない。
分かりやすくまとめると
(1)保険会社が治療費の支払いを約束しても、決して無期限の約束ではありません!
(2)保険会社が治療の必要性を認めないと判断した場合は、打ち切ることができます!
(3)治療費の不服があれば訴訟を提起することができるのだから、治療費打ち切りぐらいのことで慰謝料の請求などはやめてくださいね!
という感じになります。
被害者が治療費を立て替える必要がない任意一括対応による治療費の直接支払いは、保険会社のサービスとも言えます。
保険会社の担当者にも感情がありますから、治療費の直接支払いを受けている間は「いい被害者」を演じて、なるべく打ち切りなど治療期間でもめるようなことの無いようにしていきたいものです。
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