自分が交通事故の被害者になったときに、加害者が任意保険に入っていなかった場合、どうしたらいいでしょうか。
自動車保険の任意保険の加入率は、自動車共済と合わせると88パーセント程度です。約9割に車が任意保険(任意共済)に入っているわけですが、これは約1割の車は任意保険に入っていない、ということにもなります。
当事務所へは「事故の相手(または自分)が任意保険に入っていなかったので困っている」という相談がかなり来ております。そのような困った状況だから相談するのだと思いますが、感触としては3〜4割ぐらい、任意保険未加入の事故の相談です。
自分が被害者で、加害者が任意保険に入っていない場合、被害者としては、自分や同居の家族が自家用車を持っているのであれば、その車の任意保険の「人身傷害保険」に治療費などを請求することになります。
人身傷害保険は自分の保険ですが、加害者の任意保険のように直接病院へ治療費を払ってくれたり、慰謝料の計算をしてくれたりします。
(人身傷害保険が払った分は、その後人身傷害保険が相手方に請求します)
そうすれば当面は、本来相手方の任意保険会社が対応するような「治療費の直接支払い」や、その他の「加害者に損害賠償できる内容」について自分の人身傷害保険が対応してくれます。
事故から6か月経過して後遺障害等級が認定されたら、人身傷害保険からは任意保険基準の保険金が支払われます。人身傷害保険は自分が保険契約に基づいて入っている保険なので、支払いは契約内容(約款)のとおり、任意保険基準でということになるのです。
本来相手が任意保険に入っていたら、相手方とは裁判の基準での賠償額の話し合いができたはずです。それなのに相手が無保険だったばっかりに任意保険の基準でしか解決できないのでは納得できません。
自分の場合どうしたらいい?→
人身傷害保険を使って治療を続け、6か月経過後に後遺障害等級が認定されたら、無保険車傷害保険からの支払いに切り替えられます。
特に切り替える必要もないことが多いのですが、人身傷害保険からの支払い限度額は5千万円などとしていることが多いところ、無保険車傷害保険の限度額は2億円などとなっていることが多いので、賠償金額が非常に高額になる場合は無保険車傷害保険から支払われます。
どちらにしても、任意保険基準を超えて裁判基準で支払いをしてもらうには、加害者への「損害賠償請求訴訟」を起こさなければなりません。
多くの任意保険会社は、現在では「加害者に対する裁判上の和解や判決があれば、その金額を人身傷害保険(または無保険車傷害保険)から支払う」としています。
ただ、保険会社によっては「先に人身傷害保険への支払いをしている場合(その後訴訟を提起した場合)」に限って裁判の結果での支払いをする、というところもありますので、注意して約款をよく理解しておく必要があります。
自分で任意保険に入っているのに人身傷害保険がない情況は考えにくいので、自分に人身傷害保険がない場合というのは、自分や同居の家族が自家用車を持っていない場合だと思います。このように人身傷害保険がない場合には、相手方の自賠責保険が頼りになりますが、とりあえずは通勤途中や業務中の事故なら労災保険を、それ以外なら健康保険を使って治療費を支払うようにしましょう。
自賠責保険の上限額は120万円ですから、その枠を効率的に使うために労災保険や健康保険を使うのです。
なお当事務所では、通勤途中や業務中であれば、相手に任意保険があるかないかにかかわらず、治療に労災保険を使うことをお勧めしています。
→ 労災保険を使うメリット
→ 健康保険を使うメリット
その後は、被害者は自分の損害を計算して、自賠責を超える分については加害者本人に請求することになります。
被害者が大けがで賠償額が高額になると、加害者自身の支払い能力では無理かもしれません。
こうなると大変厳しい状況が予想されますが、このようなとんでもない人が運転する車が走っていることも事実ですから、自分自身で傷害保険に入っておくなどの対策をしなければなりません。
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