(質問)
半年前に交通事故に遭い、むち打ちで悩んでいた息子がうつ病になって自殺してしまいました。交通事故に遭わなければ自殺しなかったはずですが、その分の損害賠償はしてもらえますか?
(回答)
このような場合は事故がなかったら損害(死亡など)は発生していなかったと言えるので、事故と損害との間に事実上の因果関係は認められますが、加害者に賠償義務を認めるためには単に事実上の因果関係があるだけでは足りず、相当因果関係がなければならないとされています。
相当因果関係とは、一般の社会常識に照らして、その事故からその損害が発生するのが相当であるとされる関係を意味します。このような限定を加えている理由は、損害賠償すべき範囲が無限に広がってしまうと、加害者といえども酷な結果となってしまうからです。
ではこの場合は、死に対する損害賠償請求は認められるのでしょうか。社会常識に照らして考えると、事故によって後遺症を受けたからといって、自殺することが相当であるとはなかなかいえません。ですから死に対する損害賠償請求は原則として認められません。ただ、脳損傷を受けてそれを苦にして自殺したケースで、自殺に対する損害賠償を認めた裁判例もあります。
また、因果関係については、あるかないかの二者択一ではなく、割合として考えて死亡事故の何パーセントかの損害賠償を認める判例も最近では出てきています。後遺症の程度にもよるようです。