(質問)
以前結婚式を挙げましたが、婚姻届は出さずに夫婦生活をしていました。ところが最近、夫が交通事故で亡くなってしまいました。このように正式な夫婦でなくても加害者に慰謝料などを請求できますか?
(回答)
今回の相談者のように婚姻届を役所に出さなければ、法律的には正式な夫婦とは認められず、内縁関係の夫婦ということになります。しかし内縁関係の夫婦は「結婚に準ずる男女関係」とされていて、特に内縁の妻は損害賠償上は正式の妻に近い形で保護されています。
とはいえ正式な妻とは違って相続権はありませんし、損害賠償の項目も少し違ってきます。
ある人が交通事故で死亡した場合には「死亡した本人の損害」と「親族の固有の損害」が発生します。
「親族固有の損害」は、主に家族が死亡したことに対する悲しみや苦痛などで、これは親族分の慰謝料となります。
内縁の妻(夫)の場合も、おおむねこの「親族の慰謝料」は認められています。
もう一つの「死亡した本人の損害」は本人の慰謝料や逸失利益であり、本来本人がもらうべきところ、死亡しているのでもらうのはその相続人となります。
そうなると内縁の妻は相続人ではないので、正式な妻だった場合と違い厳しい状況となります。
このような場合、判例で、死亡した被害者から扶養を受けていた内縁の妻(夫)は、将来の扶養利益分を請求する権利がある、とされています。
現在は相続人(死亡した人の前妻との間の子や、子がない場合の親など)が受け取る「死亡した本人の損害としての逸失利益」の一部が内縁の妻(夫)の扶養利益喪失分として充てられるのが一般的な扱いとなっています。
これらの損害賠償を受けられるかどうか、内縁関係にあると認められるかどうかということになりますが、一般的には、二人に結婚の意思があり、同居していて男が生活費を出していれば認められる可能性は高いと思われます。愛人関係でも配偶者との結婚生活が破綻しているときは、内縁と認められることもあるようです。