自営業者(商工業、農林、サービス業)や、自由業者(弁護士、司法書士、行政書士、税理士、開業医、著述業、芸能人、プロスポーツ選手など)などの個人事業者の基礎収入は、前年度の確定申告所得額によって立証しますが、業績に変動がある場合は、数年間の実績を平均して計算することもあります。
休業損害額は
(事故前1年間の収入額−必要経費)÷365日×寄与率×休業日数
で求めます。
休業日数は、原則として実治療日数(入通院日数)です。ただし傷害の態様、業種等を勘案し、治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度に認めることがあるとされています。
長管骨骨折によるギプス固定期間は実治療期間として取り扱います。
自賠責保険での立証資料は「税務署の受付印がある確定申告書の控え」「報酬・料金・契約金及び賞金支払い調書」等とされています。
立証資料の提出がなされない場合でも、被害者の関係先に照会し、休業により当然収入に減少をきたすことが推定できる場合は、定額の日額6,100円を認定します。
被害者が自営業を開始してから1年未満で事故により受傷し、事故前年度の所得証明が提出できない場合は、開業してからの収支明細の提出をして、信憑性ありと判断できれば、立証資料に基づいて認定されます。
自営業の休業損害日額は確定申告書の「収入−必要経費」で計算されますが、具体的には、全面休業している場合、確定申告書の所得金額に租税公課、損害保険料、減価償却費、地代家賃、の固定費部分を加算したものを基礎に休業損害を認定します。
これらの固定費は休業していてもかかるため、損害とみなされるのです。
確定申告書の控えが提出できない場合は、以下の割合を必要経費率として考えます。
・年収200万円未満→経費率は考慮されません。
・年収200万円〜400万円未満→年収に対して20%の必要経費率
・年収400万円〜600万円未満→年収に対して30%の必要経費率
・年収600万円以上→年収に対して40%の必要経費率
ただし一部以下のとおりとする。
・年収200万円〜250万円は必要経費控除後の金額を200万円とする。
・年収400万円〜457万円は必要経費控除後の金額を320万円とする。
・年収600万円〜700万円は必要経費控除後の金額を420万円とする。
休業損害を考えるうえで特に分かりにくいのがこの寄与率です。
事業所得者の休業損害は「所得額−必要経費」の正味所得額に、家族専従者または使用人の人的構成から、被害者本人のその事業に対する寄与率を乗じて休業損害日額を認定する、とされています。
●完全休業または閉店している場合
被害者の寄与率は100%として認定されます。
●営業が継続されている場合
青色申告の事業者は本人の所得額が明示されていますので寄与率減額はなされません。
白色申告等に事業主については
・年間正味所得が200万円以下の場合、寄与率減額はなされません。
・年間正味所得が200万円以上の場合、60〜80%を基準として事業主本人の寄与率を認定する、とされています。
60〜80%は一応の目安であり、実情に応じて適宜認定する、とされています。
なお寄与率控除の結果、正味所得金額が200万円を下回る場合は200万円に引き上げて休業損害日額を認定します。
(報酬・料金・契約金及び賞金支払い調書−必要経費)÷365日=休業損害日額
で計算します。
報酬・料金・契約金及び賞金支払い調書は事故前年度のものを勤務先に発行してもらいます。
休業日数についてですが、生命保険外交員は自由業者の範囲に含まれるのですが、実態は給与所得者と同様の勤務内容であることから、休業損害証明書をもとに休業日数を認定します。
個人タクシーの大部分は協同組合に加盟しています。
組合は、個人タクシーが休業した場合に都道府県知事に出す届出や所得申告等を代行しています。
従って、これらの資料に基づき組合が発行する休業損害証明書は信憑性のあるものと判断され、休業日数は組合が作成した休業損害証明書に基づき、給与所得者と同様の認定がなされます。
確定申告書の写しが提出された場合は、それに基づいて算出します。
協同組合に非加入の場合は、確定申告書の写しなど、信憑性のある資料の提出を求め、事業所得者の方法で認定します。
組合に加入、非加入に関わらず、寄与度は100%の取り扱いです。