交通事故で被害者が死亡した場合、もし生きていたら将来どれだけの収入(利益)を得られたか、ということが問題になりますが、この得られるはずだった利益のことを「逸失利益」といいます。
逸失利益の計算は、年間収入額又は年相当額(死亡時の年収)から本人の生活費として一定割合を控除した額に、就労可能年数に対応するライプニッツ係数を乗じて算出します。
【逸失利益】=(【年間収入額又は年相当額】−【生活費】)×【就労可能年数に対するライプニッツ係数】
生活費を差し引くのは、本人が死亡してしまったのでそれ以降の生活費はかからないでしょ、という考えに基づいています。
自賠責での生活費の控除は、被害者に被扶養者が存在するときは、年間収入額又は年相当額の35%を、被害者に被扶養者が存在しない時は50%を差し引くことになっています。
これは、配偶者、未成年の子、65歳以上の父母のいずれかを扶養している場合とされております。
未成年のきょうだい等を扶養している場合は、実情を調査したうえで、被扶養者が存在すると認定します。
また、婚姻の届け出はしていない事実婚の配偶者も、民法上の配偶者に準じて取り扱いがなされます。
具体的には以下のことを確認します。
・戸籍上、未成年の子、65歳以上の父母のいずれかが存在する
・戸籍上、未成年の子、65歳以上の父母のいずれも存在しないが、被害者に配偶者が存在する場合で、被害者が戸籍筆頭者または住民票上の世帯主となっている場合
には「被扶養者あり」と認定されます。
ただこれらの条件を満たしていても
・被害者に配偶者がなく学生の場合
・被害者を家事従事者として逸失利益の算定を行う場合
には、被扶養者なしと認定されます。
分かりにくいのですが、事実として被害者の収入で被扶養者の生計が維持されていることが「被扶養者あり」の前提条件となりますので、上記のケースに該当しなくても、納税関係資料や家族構成・職業等の確認できる具体的な資料により立証できれば「被扶養者あり」と認定されます。
また、被扶養者の認定の基準時ですが、これは原則として被害者の死亡時となります。事故当時64歳だった被害者の父母が、被害者死亡時に65歳に達していれば「被扶養者あり」となります。
この他に逸失利益の計算式を構成する「年間収入額又は年相当額」は年齢や職業などによって違うので、それぞれについて以下の別項目で詳しく説明します。